水素の常温、大量輸送方法

これまでの石油から水素をエネルギー源とする水素社会が到来しようしている。

その水素の製造方法には、①天然ガス採取時に副生する水素を分離膜等で分離補集する。②天然ガスを分解して取り出す。③水を分解して取り出す。等いろいろあるが、①の方法が現在最も現実的な技術とし行われている。

その水素の貯蔵や輸送方法はこれまで水素吸蔵合金に吸収させたり、水素ガスを高圧に圧縮して耐圧性のタンクに入れる方法や水素を摂氏マイナス253度迄冷却して液体にする方法が使用されてきた。しかしこれらの方法で大量の水素を貯蔵したり運搬するには新規な大掛かりなインフラを整備する必要がある。

因みに少量の場合の例となる、トヨタの燃料電池車「ミライ」は70MPa(700kg/cm2)の高圧に圧縮された水素が炭素繊維製のタンクにいれて使われている。

これに対し、従来からも提唱されてきたにもかかわらずにあまり大きく取り上げられなかった方法がいま脚光を浴びている。

それは水素をトルエンに吸収(反応)させてメチルシクロヘキサン(MCH)と言う化合物にすると言うもの。こうすると水素の輸送や保存が常温・常圧で出来るのである。

トルエンはベンゼンにメチル基が1個ついただけの炭化水素分子で、不飽和結合(2重結合)を3個分子内に持つので水素を6個付加することが出来る。この反応で水素ガスの体積を500分の1の液体に変えることが出来る。MCHは修正ペンなど日曜品にも使われているもので日常条件で安全に取り扱える。

ただMCHから水素を取り出す技術がこれまで確立されていなかった。触媒を使う方法はあったが、耐久性が1,2日で工業用としては使えなかった。

千代田化工はプラチナを1ナノメートルよりも細かくすることで耐久性が1年ある触媒を開発し、水素を常温で貯蔵・輸送してから効率的(回収率95%以上)に取り出す手法「SPERA水素システム」を開発し日本経済新聞社の地球環境技術賞の最優秀を受賞した。

想定される水素サプライチェーンは以下の通り

まず資源国で天然ガスを産出する際に水素だけを分離する。→現地のプラントでトルエンと反応させてMCHとする。→タンカーで日本に運びプラントで水素を取り出す。→MCHは再びトルエンとなる→資源国に運ばれてMCHとするため再利用される。このサイクルと繰り返す。

 

 

投稿者: taiga

化学系会社で研究所、工場、本社で各種素材・製品開発、技術営業に従事後 水処理も経験 先端科学、最新技術が好きな中高年男性。既婚 趣味:テニス、将棋、カラオケ、トレッキング、公園散策、

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