ナノチューブを使う4倍容量の蓄電器の開発

ナノカーボンの定義は学術的には『ナノメータのレベルで精緻に微視的構造や組織・形態が制御,設計され,それによって従来には ない高度な性能が付与され,あるいは革新的な機能を発現 する炭素体』と難しいが、要は炭素原子だけの結合でナノレベルの物質である。

炭素原子60個の球形の「フラーレン」、蜂の巣形状のシート「グラフェン」、グラフェンが筒状になったとも言える「カーボンナノチューブ(CNT)」がよく一般に知られている。
発見の歴史はフラーレンカーボンナノチューブ(CNT)、グラフェンの順なのだが、フラーレン(1996年)とグラフェン(2010年)はノーベル賞を既に受賞しているのに、日本人の発見になるCNTは何故かまだ受賞していない。

したがって日本人として、CNT関連ニュースは非常に気になるところであり、今後CNTを主体にナノカーボンについて紹介してゆきたい。

今回は先日(2/9)の日経産業新聞(今後NSと略記)に蓄電器(キャバシシタ)への応用記事をご紹介。

キャパシタとは「正極と負極で挟む電解質の中をイオンが往来し両極の表面で生徒ふの電気が引き合った電気2重層で電気を貯める蓄電池の一種」。
電極の表面積が広い程容量が増える。今回は表面積を広くするためにCNTを用いたということだ。しかしその製造方法が私にはなかなか興味深かった。

ナノチューブは固まりやすい欠点があるので、これをほぐすのに、これまで紹介してきた新素材セルロースナノファイバー(CNF)を使うことを考えたそうだ。有機溶媒のなかでCNTとCNFを混ぜると、CNFがCNTに巻き付くことがわかったそうだ。

具体的な数値と巻付きのイメージは、直径10nm(ナノメートル)長さ10μm(マイクロメートル)(すなわち直径対長さ比L/D1000倍)、(イメージ的には太さ1mm、長さ1mの糸)のCNTに、直径3nm、長さ5μmのCNF(イメージ的には太さ0.3mm、長さ50cmの紐)が巻き付くイメージ。

有機溶剤の詳細は不明だが、この溶剤にポリアクリロニトリル(PAN)を加えるとCNFの水酸基(-OH)と、PANがもつ水素が引き有いナノチューブが均質に分散する。これを窒素を含む高温ガス中で熱処理すると多孔質の炭素構造体の中にCNTが分散した状態の電極材が出来た。電気2重層が安定するには窒素を9%残すことが必要だそうだ。

表面積が広い炭素材としては活性炭が有り、中でもヤシガラ活性炭は最もグラム当たりの表面積が広いことが知られているが今回開発した電極剤は同体積でその4倍だったという。

従来キャパシタは充放電時間は通常の蓄電池に比べ圧倒的に速いものの、蓄電能力は劣るので用途により使い分けられてきた。しかし今回開発品は容量もリチウムイオン電池の10数%まで近づいてきており、5年以内に50%超に引き上げる計画だそうだ。

リチウムイオン電池と併用することで、キャパシターで急速充電し、その電気で稼働しながら「自動車なら走り出してから)電池を充電するという使い方が出来る。

尚本研究は、京都大学坂田教授、ナノチューブの製造販売を手がけるナノサミット、米MIT、らによるもの。

ナノカーボン

活性炭

*)キャパシタ キャパシタとは、
1879年にドイツの学者ヘルムホルツ(Helmholtz)によって発見された「電気二重層」現象の原理が応用された蓄電池のことである。 電気を電気のまま(エネルギーの化学反応なしに)充放電することが可能で、原理的には半永久的に使用することができる、理想的な蓄電装置と言われている。