中古EV電池を大型蓄電池にする

地球温暖化防止のためには、化石燃料の使用を控え自然エネルギーによる発電すなわち再生可能エネルギーを増大させる必要がある。

しかしながら、再生可能エネルギーは気象条件(日照、風力等)により発電量が変動するため、ベースロード電源とはなりえず、送電網の安全には平準化が必要であり、一時的に溜めておく装置が必要となる。(電力の供給バランスが崩れると大規模停電の危険がある)

そのため、各種の貯蔵技術(参考サイト①)が提案されているが、この中の一つの方式である蓄電池についても各種の方式・技術が提案されている。

前回のブログでは省スペース、低コストの観点から2種のバイポーラ型蓄電池が現在注目されていることをご紹介した。

しかし、このバイポーラ型の樹脂電池、鉛蓄電池は新旧技術の違いはあるが、いずれもこれから新たに作るステージにあり、製品→実稼働してみないとどれくらい“本当の力”があるのか不透明な部分は多々あると思われるし、大型蓄電池として使う場合は特にシビアとなり、この後の進展には大いに注目される。

最近
この蓄電池候補の中に、EV車の使用済みバッテリーを大型蓄電池とする事業が立ち上がってきている。使用済みEV用バッテリーの利用は、廃棄物処理や貴重資源であるコバルトリチウムなどの省資源、入手対策としても重要である。またこれまで使い慣れているものであり、技術的にもコスト的にも前述の蓄電池には脅威の競争相手であろう。

EV車の車載電池は一般に10年前後で交換の必要があるとされるが、日産が最初にEV車リーフを販売開始してから10年がたち、本格的に中古電池が排出される様になってきた。
また今後他社のEVからも次第に増加して出てくる状況にあり、中古EV電池の再利用は重要な課題となってきた。

以下
現在中古EV電池を中~大型蓄電池として再利用する事業者を以下ご紹介。
(なお以下の記事は8/5の日経産業新聞より一部抜粋した)

A.フォーアールエナジー(日産、住友商事系)
・中古電池は残存容量により、A、B、Cの3等級に分けられ、A級は交換用部品として再利用、
Bが再生エネ向け蓄電池となり、C級は非常用電源に生まれ変わる。
・再生エネ電池は約20フィートのコンテナEV数十台分の中古車載電池を備えた
大型蓄電池となる。
・住商は現在鹿児島県薩摩川内市の甑島において、自治体と連携しで実験中。

B.東電電力HD
・東電パワーグリッドが中国企業などから中古の車載電池を購入し、電池システム開発の
ネクスト・ソリューションズと組んで、電圧などが異なる複数の車載電池を制御する。
EV20~30台分の電池を組み合わせてコンテナ型の蓄電池1基とする方式。
・7月から川崎市で蓄電池を制御する実証実験開始。秋には試験外販も始める。
・現在法人向け蓄電池は1kw/hr15万円から20万円前後で販売されているが、
車載電池を再利用することで現行より3~5割安く販売できる可能性があるとのこと。

C.伊藤忠(中国のパンドパワーと資本・業務提携)
・コンテナに20台前後の車載電池を並べて蓄電池を組み立て、一般家庭の100世帯が1日で使う電力を賄う計画

 

最後に
EV電池の再利用は単にコスト、性能だけに留まらず、資源戦略、廃棄物処理としても重要な課題であり、今後増大する集荷物の検査、分解、分別、破棄、部品更新及び製品組み立て、完成品検査のロボット化とIOTの使用による超合理的な再生管理システムを構築してゆくことが必要と考えられる。

 

<参考サイト>
環境技術解説 電力貯蔵技術

電気自動車用リチウムイオン電池のリサイクルに関するクイック・ガイド

電気自動車(EV)普及の鍵を握るバッテリー生産とリサイクルの課題

電動車両バッテリーの再利用 ~電動車両普及に向けた もうひとつのカギ~

日産「リーフ」の充電池を再製品化するフォーアールエナジー 浪江事業所が開所