水と窒素からアンモニアを造る

アンモニアに関してはこれまで本ブログで何回か取り上げたが、合成法に関してもハーバーボッシュ法(高温・高圧下の反応で莫大なエネルギーと巨大装置が必要)に代わる方法として、東工大の細野秀雄教授らの「エレクトライド触媒」を用いる方法について取り上げた。
東工大のこの方法は、現在味の素などと協力して2021年をめどに実用化を目指し研究されている。ここから

一方今回新たに更に画期的と思われる方法が開発されたのでご紹介したい。

常温・常圧で合成するのは上記方法と同じだが、水素原料がなんと水なのである。
触媒と還元剤の存在下、水を窒素と混ぜるだけでアンモニアができるのだそうだ

要旨
東大の西林仁昭教授らは、常温・常圧の条件下でアンモニアを合成する手法の研究に取り組んでいるが、今回新たな手法を開発した。還元剤としてこれまでの高価な薬剤から有機化学でよく使われるヨウ化サマリウム(SmIを使い触媒としてモリブデン化合物を用い
従来の200倍の大幅に効率の高い方法を開発した。

                      

 

今後は一度使用の還元剤のヨウ化サマリウムの再利用方法を開発すると共に、
日産化学と協力して大型プラントでの応用を目指す

 

最後に
アンモニアは肥料や火薬や医薬品の原料になるだけでなく、自身が燃料となることや、水素の供給源として運搬や貯蔵に便利なことから、水素社会の一翼を担う裏方として、またはアンモニアが主役となるアンモニア社会となる可能性を秘めているといわれている。

 

<参考サイト>
◎モリブデン触媒に関して
・世界最高の活性を示すアンモニア合成触媒の開発
東京大学 西林研究室

◎ヨウ化サマリウム(SmI2)について
強い一電子還元剤であり、例えば水を速やかに還元して水素に変える。
ウィキペディア

 

 

 

 

 

 

 

 

将来は再生エネ水素によるアンモニア発電が主流になるか?

アンモニア(NH3)が非常に注目されています。

アンモニアは現在ハーバーボッシュ法によって大量に生産されその大部分は肥料として利用されていますが、その他食品、医薬品などの原料として重要な位置づけにあります。

しかし今アンモニアの次の特長が大いに注目されています。
1.水素のキャリヤー(運搬体)として優れている
2.燃やすことができ、燃やしても炭酸ガスを出さない
3.火力発電に使用できる

1の水素のキャリヤーとして注目されているのは、
①アンモニア(NH3)がその分子の中に窒素の3倍の水素原子を持つ
②アンモニアが液化しやすく、取り扱いやすい
③アンモニアが肥料製造用等の通常のインフラでの取扱(サプライチェーン)が確立されている等のためです。

純粋な水素のままだと、高圧ガスとして丈夫なガスタンクに収納するか、液化の為多大なエネルギーをかけて零下153度にしなくてはならずその運搬にも特別な容器が必要。

アンモニア以外のキャリアーを使う有望な方法については、
現在千代田加工建設が主体となって行っている、スペラ水素(トルエンに水素を付加しヘメチルシクロヘキサンMCHとする)があるがこれについては以前のブログご参照。

アンモニアの原料となる水素の製造方法はいろいろあるが、化石燃料からだと炭酸ガスが発生する

炭酸ガスを出さない製造方法としては水の電気分解があり、その電気として、太陽光、風力などの再生可能エネルギーや余剰エネルギーが期待されている。

アンモニア発電の現状を概括
非常にわかり易く書かれた添付サイトの記事を読めば一目瞭然ではあるが敢えてまとめると、
1.日揮産総研は昨年10月、再生可能エネルギーによる水素を用いたアンモニア合成とそのアンモニアによる発電世界で初めて成功したと発表した。

2.全体の流れは、
①再生可能エネルギー(太陽光)による電気で水を分解し水素を生成
②この水素と窒素を新開発の触媒を使って反応させアンモニアを合成
③そのアンモニアだけを燃料としてガスタービンで発電

3.検証結果
①開発した新触媒が従来よりも低温・低圧下(50~80気圧)でもアンモニアを製造できること。
②再生可能エネルギーの出力(水素供給量)の変動に対しても機能が劣化せず、アンモニア製造量の変動に対応できることが検証できたこと。
(当初の実証試験では、高圧水素ボンベの水素を使用、その後敷地内の太陽光発電による水素使用)
新触媒はルテニウム酸化物で、従来の炭素系担体を用いたルテニウム触媒に比べて安定性に優れている
太陽光で作った水素と新触媒で合成したアンモニアを燃料としたガスタービンで47kwを発電した。

今後
日揮は2020年代半ばを目処にアンモニア発電技術の実用化を目指す。

最後に
地球温暖化の最大の原因とされる二酸化炭素の削減が叫ばれているが、その対策として
1.全く発生しない新規なプロセスを開発する
(上述のアンモニア火力発電、アンモニア燃料電池、電解水素による各種物品製造等)
2.発生量を減らすプロセスに改善・変更する
3.発生した炭酸ガスを原料とする工業の創生
4.発生した炭酸ガスの地中封入CSS
私は3が最も効果があると思っている。これについては後日現状を紹介したい。

<参照サイト>
アンモニア合成試験装置完成(日揮)

低温・低圧でアンモニアを合成する触媒の開発(産総研)

再生エネルギー由来の水素を用いたアンモニア合成と発電に世界で初めて成功(日揮)

 

 

 

 

2018年ノーベル賞まとめ

2018年のノーベル賞まとめ
NHKノーベル賞の解説サイト「まるわかりノーベル賞2018」を出しています。
まずはここを覗いてみてください。(低学年用、文系用?)
医学・生理学賞
物理学賞
化学賞

このサイトで不十分な人は以下へどうぞ。

 .医学生理学賞
◯本庶佑・京都大特別教授(76)
本庶博士は免疫細胞の働きを抑えるブレーキとなるPD-1を発見。
このブレーキを取り除くことでがん細胞を攻撃する新しいタイプの「がん免疫療法」を実現し、がん治療薬「オプジーボの開発」に道を開いた。

◯ジェームズ・アリソン(James P. Allison)博士(70)
テキサス大学MDアンダーソンがんセンター(米国)
同じころ、免疫のブレーキにかかわる別の分子「CTLA―4」の研究を進め、
この作用を利用したがん治療薬「ヤーボイ」の開発に道を開いた。

これまでのがん治療法には①手術による切除、②放射線照射、③抗がん剤による化学療法の3つの方法があったが、これまでとは全くアプローチの異なる④免疫療法という、第4の方法が加わった。
これが両氏の発見によるもので、これにより、がん治療の選択肢が広がり、既存の治療法で効果がなかった患者を救う道も開けた。
参照サイト:朝日新聞

2.物理学賞
物理学賞は、光を使って物体を操作する技術を開発し、ウイルスのような小さな物をつまむ「光ピンセット」やレーザーによる視力開発手術につながった米国、フランス、カナダの3氏に。

授賞理由は「レーザー物理学」の分野で、これまでになかった手法を1980年代に切り開き、産業や医学分野への応用を広げたことが評価された。

アーサー・アシュキン博士(96歳)(米国)(史上最高齢の受賞者)
アシュキン氏はレーザーを微小な物に当てると、物を捕らえる力が発生することに気付き、

1987年この仕組みを利用して「光ピンセット」を開発し、生きた細菌を傷つけることなくつかむことに成功した。「光ピンセット」は、いまでは生命科学の研究に広く使われている。

ジェラール・ムル博士(74)(フランス)、ドナ・ストリックランド博士(59)(カナダ)
両氏は1980年代、パルスの幅をいったん広げるなどしてから強度を高める「チャープ・パルス増幅法(CPA)」と呼ばれる独創的な増幅法を開発。それまでできなかった超高強度の超短パルスレーザーをつくることに成功した。この成果によってレーザーを使った目の近視矯正手術(レーシック手術)などが可能になった。


ストリックランド氏は、物理学賞では1903年のマリー・キュリー(放射線の研究)、63年のマリア・ゲッパートメイヤー(原子核の殻構造の発見)以来、55年ぶり3人目の女性の受賞者
参照サイト:朝日新聞 

3.化学賞

化学賞は、生物の進化の仕組みをまねてタンパク質を作るなどして医薬品やバイオ燃料の製造技術を開発した米英の3氏に。
◯フランシス・アーノルド(62)氏、(米国)
自然界で起きている進化を、加速度的に再現する手法を開発。たんぱく質の一種である酵素の機能を、目的に応じて高めることに成功した。作られた酵素は、バイオ燃料や医薬品などの生産に活用されている。
◯ジョージ・スミス(77)氏(米国)
大腸菌などに感染するウイルスの仲間「ファージ」に遺伝子を組み込んで、それぞれ異なるたんぱく質を作る「ファージディスプレー」という手法を開発。自然淘汰(とうた)のように、その中から狙った特徴を持つたんぱく質だけを絞り込めるようにした
◯グレゴリー・ウィンター(67)氏(英国)
生物の進化をまねて、役に立つ酵素や抗体といったたんぱく質を効率よく作る道を開いた。
同氏はこの手法で治療用の抗体を作り、リウマチなど自己免疫によって生じる病気や、がんの画期的な薬につなげた。
参照サイト:朝日新聞

今年の注目は、今回受賞した技術がどこまで応用され、また発展するか、
そして2019年、どんな科学的な新発見と新技術の開発が行われるか期待したい。

今回の事前予想では医学・生理学賞が当たりましたが、またこの中から2019年のノーベル賞受賞者が出るかもしれません。いや是非出てほしいものです。

 

エコプロ2018のセルロースナノファイバー(CNF)関連展示

環境に配慮した製品やサービスを集めた国内最大級の展示会「エコプロ」。
今年も「エコプロ2018」と題して東京ビックサイトで12月6から8日まで開催されました。

この展示会は環境問題を取り上げているので小学生の課外授業となっているようで、小学生が沢山来ていました。この会場に平日参加できる小学生は恵まれていますね。

私は毎年参加していますが、今年は昨年より面白いところが少なかったような気がしました。
ガイド本の内容も例年にあった新リサイクル技術関連の記事がなく個人的には残念でした。

その中で、今年も展示会の目玉の一つであるCNF(セルロースナノファイバー)の展示について簡単に写真でご紹介します。(CNFに関した詳細は最後の参考サイトをご参照ください)(ご参考:昨年のエコプロ2017のCNF関連

CNFは資源小国の日本で資源が豊富にある貴重な新素材のためか、文科省、経済産業省、環境省の3つの省が取り組んでおり、経産省の元でNEDOが中心となり京都大学を始めとした大学等や企業が進めており、新素材としての期待の大きさが伺えました。

昨年同様、化粧品や文具などへの応用はそのまま進展しているようですが、今年は更にCNFをミッドソールに用いたランニングシューズが目に付きました。

しかしなんと行っても最大のテーマはCNV(セルロースナノビイークル)つまりCNFを自動車部品の一部として採用し、車の軽量化を図ることでしょう。

会場にはその様子がよくわかるように実物大の車の骨格模型が展示され、どの部品がCNFで作られ使われているかがわかる様になっていました。

その横では京都大学の矢野教授らによりスライドを使ったわかりやすい説明がなされていました。

以下スマホで撮った写真を列挙します。(ピントが合ってないところはご容赦(汗))

<参考サイト>
各省や大学、企業の関連サイトを以下リストします。

◯経産省
部素材産業-CNF(セルロースナノファイバー)実用化への取組み

セルロースナノファイバー(CNF)等の次世代素材活用推進事業

◯環境省
世界初!NCVプロジェクトが始動 ~ナノ・セルロース・ビークル・プロジェクト~
 環境省における バイオ関連の取組について

◯文部科学省
ナノテクノロジープラットフォーム事業
酵素処理を用い,食用にもなる素材を杉や竹の生育地で製造可能~

◯王子製紙
世界初!三形態のCNF

◯スギノマシン
ウォータージェット法で作製したバイオマスナノファイバー

 

世界初、CNF複合材料が最新ランニングシューズに採用
京都プロセスを使ったCNF応用製品が世界規模で発売開始

CNFに関しては、原料、製造方法、応用(民生用途、工業用途)など、今後共関連ニュースが継続的に出てくるのは必然ですので、特に注目される記事が出たときには
都度本ブログでご紹介すル予定です。

 

 

水素社会での水素の輸送と貯蔵の主力はMCH法になるか

水素は燃えても水しか出さない究極のクリーンエネルギーのため
今後水素エネルギーが主体のいわゆる水素社会となることが予想されているが、
そのためには大量の水素の製造、輸送、貯蔵方法の確立が必要である。

現在水素の製造については
①天然ガスの副生、②化石燃料の分解、③水の電気分解
等各種検討されている。

③の水の電気分解については、近年特に再生エネルギー特に風力発電所の余った電力の利用が検討されている。
現状では、水を電気分解した後の粗い水素ガスは不純物(酸素等)を含んでいるため、やや複雑な精製工程が必要となっている。(千代田化工建設で2019年2月を目処に技術検証中

次に大量の水素ガスの運搬・貯蔵方法に付いては、
①水素を極低温(-253度)に冷却して液化し液体水素とする(川崎重工)、
②水素と窒素を触媒下反応させてアンモニアとする(日揮、IHI)、
③水素をトルエンと反応させてメチルシクロヘキサン(MCH)とする(千代田加工建設)
等の方法が検討されている。

以下本ブログの趣旨である③の方法に付いて記す。(①と②については後日取り上げる)

水素をトルエンと反応させMCHとする方法は体積が500分の1となり、かつ常温・常圧で液体であり、一般的な石油輸送設備で行えるため現在最も有力な方法と考えられている。

ただし、これを運んだ後使用時には逆反応で水素を取り出す必要があり、この反応には触媒が必要で、従来2、3日の耐久性しかなかったものを、千代田加工が8000時間の耐久性ある触媒を開発し、この方法が最有力候補として浮上している。

<方法の概要>は以下の通り。
まず全体のフローは以下の図の通り。(千代田加工のHPより)

1)まず各種方法で製造された水素は、トルエンと反応させMCHメチルシクロヘキサン)とする。
つまりトルエンの2重結合の部分に水素を付加し飽和炭化水素のMCHにする。
すると水素の体積は500分の1となりこの液体の取扱も非常に容易になる。
MCHは日本の消防法では、危険物第4類・第1石油類に該当する
(MCHはトルエンに比べ毒性が低く、有機溶剤中毒予防規則の対象外)

2)従って運搬・貯蔵は常圧・常温で既にある一般的な石油輸送設備・石油タンクで行える。
3)本法の技術の核がMCHから気体の水素の取り出しを行う触媒技術
千代田加工は触媒性能が従来2~3日だったのを2年程度継続しても利用効率が落ちない触媒の開発に成功し本法の実用化の目処が立つようになった。
そこで千代田加工はこのMCHを「スペラ水素」と名付けて事業化を目指している。

<参考サイト>
SPERA水素システムについて
動画スペラ水素

上述した様に水素の運搬・貯蔵は他社でも検討している。

1)川崎重工
水素を摂氏マイナス253度に冷やして液体水素とする方法を採用し、
専用の設備や運搬船を開発している。
◯「水素社会の未来を切り開く」:
-253度の液体水素を6000kmも運搬、水素社会を支える専用船が実現

2)日揮
水素と窒素を触媒反応させて作ったアンモニアを水素の運搬手段として活用する手法の実証実験を進めている。

<参考資料>
経済産業省 第9回水素・燃料電池戦略協議会向け資料

 

<付記>
なぜ水素を付加するキャリヤーがトルエンなのか。
トルエンのメチル基がないベンゼンやまたベンゼンが2個のナフタレンの方がよさそうだが?
確かにMCHの水素の貯蔵密度は理論上47.0kg-H2/m3であり、ベンゼン←→シクロヘキサン(56.0kg-H2/m3)やナフタレン←→デカリン(カヒドロナフタレン)(65.4kg-H2/m3)に比べやや劣るものの、
液体の状態を維持できる温度範囲が広い利点を持つため
ウィキベディア)より

今年2018年のノーベル賞は誰に

いよいよ今年もノーベル賞の日がやってきました。(以下当ブログは自然科学部門だけに言及します)
先ず10月1日には医学生理学賞、2日には物理学賞、3日は化学賞が発表されます。

受賞者の予想は各メディアからいろいろ出ていますので詳細は最後の参考サイトをご参照いただくとして、ここでは私見も交え選出してみます。

1.医学生理学賞
医学・生理学賞では、2012年に山中伸弥氏、そして15年に大村智氏、16年に大隅良典氏と2年連続日本人が受賞している実績があり、今年も受賞に期待が高まっています。
今年は、免疫と遺伝子関連が注目されているという。

免疫関連なら
◯体内の異物に抵抗する免疫ブレーキ役のたんぱく質「PD―1」を発見した京都大学の
 本庶佑(たすく)特別教授。
PD―1の働きを抑えれば、免疫細胞によるがん細胞への攻撃が再活性化することを
発見。これを応用した抗がん剤「オプジーボ」の開発につながった。
◯免疫が過剰に働くのを抑える「制御性T細胞」を発見した大阪大学の坂口志文(しもん)
特任教授「世紀の発見」といわれている。(T細胞は免疫の司令塔と言われもの)

遺伝子関連なら
◯ゲノム(全遺伝情報)に関する独自のデータベース「KEGG」の整備を進めてきた京都大の金久実特任教授(70)(米の科学情報サービス会社の予想)
金久氏はバイオインフォマティクス(生物情報科学)研究の先駆者的な存在で、生体システムの機能の解明に役立ち、医療や創薬など幅広い応用が期待されている。

ゲノム編集技術
ゲノム編集技術の一種「クリスパー・キャス9」は使いやすさや効率の良さから医療の治療法の開発や農水産物の品種改良等、幅広い分野で近年劇的に普及している。
開発者は米国と仏の博士だが、受賞すればこの研究の元になった「クリスパー」という遺伝子配列を発見したのが日本の石野良純九大教授の為、共同受賞となる可能性もある。

製薬関連なら
◯コレステロールの血中濃度を下げる物質「スタチン」を発見し、世界中で推計4000万人
が使っているという動脈硬化の治療薬の開発へとつなげた東京農工大学の遠藤章特別栄誉教授も有力だ。

2.物理学賞
対象分野は「素粒子」「宇宙論」「物性」「量子力学」等で、昨年は「重力波の観測」で米の3氏が受賞しましたが、今年は日本人の受賞が大いに期待されています。
その根拠は?!、以下参考サイトからの
引用です。
「ノーベル物理学賞の受賞分野には法則性があるといわれていて、物性(物質の示す物理的性質)の分野と宇宙・素粒子分野が交互に受賞する傾向があります。近年を振り返ると、2013年は素粒子(ヒッグス粒子)、14年は物性(青色LED)、15年は素粒子(ニュートリノ振動)、16年は物性(トポロジカル相転移)、17年は宇宙(重力波)ときていることから、今年は物性分野からの選出が有力とされています。」

物性分野なら日本人候補者は多数います。

◯理化学研究所の十倉好紀創発物性研究センター長。
磁石の力で電気的な性質を変えたり、電圧を掛けて磁気的な性質を変える出来る「マルチフェロイック物質」を開発。この物質は電気と磁気の性質を併せ持つため、メモリーデバイスへの応用と電子機器の省エネに期待されている。
◯ネオジム磁石を発明した佐川眞人氏
 1982年に史上最強の磁石「ネオジム磁石」を発明。ネオジム磁石は30年以上「最強」の座に君臨し続けていて、「ネオジム磁石がなければ世界中の産業が成り立たたくなる」と言われる。
世界の産業や社会への貢献度は多大です。その開発秘話は日経産業新聞の仕事人秘録のコラムに同氏が掲載されました
その要約ブログここから

◯東工大の細野秀雄教授
IGZO半導体、ハーバーボッシュ法以来のアンモニア合成の新触媒、鉄系超電導物質、透明半導体等幾つもの新物質の発明をされています。毎年候補に上がりますが果たして。

◯香取秀俊 東京大学教授
アインシュタインの一般相対性理論の効果を、約15mの標高差で昨年観測した「光格子時計」の発明。160億年で1秒しかずれないそうだ。因みに現在のセシウム原子時計は3000万年に1秒とのこと。
私的には時計よりもアインシュタインの理論の検証が出来るというのが興味ありますね。

尚蛇足かもしれませんが、
いつも頭の片隅で思っていたことを、つい最近出版された本で見つけたのでここで紹介します。
それは青色LEDの開発ではノーベル賞を受賞したのに、赤色、青色LEDの両開発をも行い更に光通信に多大の貢献のあったとされる元東北大学教授の西澤潤一氏がノーベル賞と無縁のことです。
このことについて日本在住の外国人弁護士(+タレント?)のケント・ギルバート氏が書いた「日本人だけが知らない本当は世界で一番人気の国・日本」(SB新刊)の、第一章の中で記述しています。以下項目だけを列挙します。
世界に誇るの「超ノーベル賞級」の功績の中で
10個のノーベル賞に値する天才、赤色、青色のLEDという偉大なる発明、
「光通信の父にして「ミスター半導体」(一部省略)

本書は現代日本人が知らない産業、社会面をたくさん詳述していますので、是非ご覧になることをお薦めします。

おっと、随分脱線しましたが、本論に戻ります。

3.化学賞
  他の2賞に比べ対象分野は広い。昨年は装置(生体分子を計測するクライオ電子顕微鏡)が選ばれたため、今年は有機化学や材料分野が有望と考えられている。

◯リチウムイオン電池の開発
毎年候補に上がっているので今年は可能性が高い。
ニッケル水素電池や鉛蓄電池というバッテリーが世の中にあったけれど、現在では広く普及し青色LED以上に世界に貢献していると思う。
リチウムイオン電池に関しては、吉野彰 旭化成名誉フェローの名前だけが特によく知られているが、受賞となればとグッドイナフ教授と同教授のもとで正極材を開発した水島公一東芝リサーチコンサルティング シニアフェローの共同受賞となると思う。

◯中部大山本尚教授の不斉合成
山本教授は、有機化合物を合成する際に必要な触媒を研究し、
「キラルルイス酸触媒」と呼ばれる応用範囲の広い触媒を開発した。
必要な有機化合物だけを取り出す「不斉合成」で炭素同士や炭素と窒素の結合を実現するなど、医薬品開発や精密化学工業の発展に大きく貢献した。

◯自己組織化の研究、東大藤田誠教授
金属イオンと有機分子の2種類のパーツを溶液中で混ぜると自発的に組み合わさり、
内部が空洞の立体構造を作る。この技術を使えば調べたい化合物の溶液を含ませると穴に収まる様に整列するため、手間がかかる結晶化をせずに化合物の構造を解析できる。

その他、日本人としては推したい光触媒やCNT等もあるが・・・。

昨年の発表から1年を掛けて選考された結果が明日から発表される。
日本は2000年以降は米国についで2位となっているが、欧州勢との距離は受賞により更に開くか受賞無しで縮まるか?他のアジアの諸国の受賞者はでるか。
いよいよ来週一週間で決着する。

<参考サイト>
1.ノーベル賞、日本人の有力候補と業績まるっと紹介

.ノーベル賞2018特集 日本人の有力候補を総まとめ

スパコン「京」前後とポスト「京」に関する情報

最近の量子コンピューターの話題にやや影を潜めていた感のあったスーパーコンピューター(以下スパコン)ですが、先日理化学研究所がポスト「京」の運用開始を21年からと発表し、またスパコンのニュースがふえて来そうです。

スパコンの計算速度については、1993年から年2回世界の上位500台のランキングTOP500が発表されてきました。
当初はずっと米国クレイ社製が占めていましたが、日本が2002年に「地球シミュレーター」で、また2011年には「」でトップを占めました。

しかし近年は中国の躍進が著しく10年と13から17年まで4年連続して中国がトップを占めました。
世界のスパコンの順位の変遷とスパコンによる大型製品開発の例は以下の図がわかりやすいですね。

理研のサイトより

ただし今年2018年6月25日の発表では、再び米国のIBMの「Summitがトップに返り咲きそれと3位を、また中国は2位と4位を占め、日本は産総研のAI専用スパコン「ABCI」(富士通)が5位になったものの、「京」は16位になっていました。

TOP500にランクインしたスパコン台数については、
中国は速度争いではトップを逃したものの206台とダントツで、米国の124台、3位の日本の36台を大きく上回っています

一方、
単純な計算速度を競うTOP500に対し、消費電力あたりの計算速度を測る「グリーン500」では日本が1位から3位を独占し、更に10位以内に6件が入っており、
速度では負けても小規模パスパコンの省エネの技術面では優位性を保っている状況ではあります。
(因みに1位は、理化学研究所の情報基盤センターに設置されている「Shoubu(菖蒲)system B」。2位は大学共同利用機関法人の高エネルギー加速器研究機構(KEK)に設置されている「Suiren(睡蓮)2」、3位はPEZY Computing社内に設置されている「Sakura(桜)」

最先端のスーパーコンピュータは、科学技術の振興、産業競争力の強化、国民生活の安全・ 安心の確保等に不可欠な「国家基幹技術」であり、上図で見たように各国がその開発競争にしのぎを削っています。
日本としても、諸外国に対して競争力のあるシステムの開発を進める必要があり、ポスト「京」開発のために文科省は「フラッグシップ2020」(世界トップレベルの性能 を有し、幅広い分野をカバーするシステム)としてポスト「京」開発のプロジェクトを立ち上げました。

以下ポスト「京」についての開発計画をご紹介しますが、
その前に
1.まずはスパコンのおさらいです
①「スパコンって何がすごいの
(非常にわかりやすい解説ですが2011年の資料ですので、ランキングは無視してくださいね。)
②これは会社の宣伝サイトではありますが、最新情報も入れた一般受けする項目で非常に分かり易くかかれています。
日本の誇るスーパーコンピュータ「京」!スペックやできることを紹介

2.最初に日本のスパコンが世界トップになったのは、
 2002年の「地球シミュレーターでした。

3.次のトップは
2012年9月末に本格稼働したスーパーコンピュータ「京」です。
当初は10ペタフロップスという1秒間に1京回(1兆の1万倍)の計算が可能な驚くべき性能でした。
①この「京」の全体については
理研計算科学研究センターのサイをご参照
②また開発、製造、据え付けの様子や、新たに開発したネットワークの構造ついては動画サイト「スーパーコンピュータ「京」の開発」から
(しかし2018.6現在はのTOP500では16位となりました)

更に
4.スパコンによる成果については以下のサイトで伺えます
①2011、12年のゴードンベル賞受賞
理研サイトより
HPCIコンソーシアムサイトより

5.スパコンの評価には
①速さを競うTOP500
②省エネ性(エネルギー消費効率の良さ)を競うGreen500
③グラフ処理 における速度を評価するGraph500
等があります。参考サイト

 

それではいよいよ本論のポスト「京」の開発計画に入ります。
計画の概要を最初にざっと要約しておきます。
<事業の目的>
◯我が国が直面する課題に対応するため、2021年の運用開始を目標に、世界最高水準の汎用性のあるスーパーコンピュータの実現を目指す。
<事業の概要>
〇最大で「京」の100倍のアプリケーション 実効性能を目指す。
〇 低消費電力型:30~40MW(因みに「京」は12.7MW)
◯開発費:約1,300億円(内国費1100億円)
<開発の主体>
理化学研究所(理研)と富士通
<目指すシステムの特徴>
下記項目において世界最高水準レベルを備え、総合力で卓抜するレベルの製品
①消費電力性能 ②計算能力 ③ユーザーの利便・使い勝手の良さ ④画期的な成果の創出
<ポスト「京」の開発スケジュール>
2014年:基本設計開始、2015年:詳細設計開始、2018年:製造開始し
2021年:運用開始(の予定ですが・・・)

<重点課題>
以下の5つのジャンル
①健康長寿社会の実現、
②防災・環境問題、
③エネルギー問題、
④産業競争力の強化、
⑤基礎科学の発展
の内、9つの重点課題から構成されています。

理研のサイトより

<期待される成果例>
(文科省)「ポスト「京」」の開発プロジェクト について14頁~18頁に、京以前京での現在ポスト「京」の将来像を画像入で分かりやすく説明されているのが分かり易いかもしれません。
 概要は以上です。

ですが
実際各ポスト「京」プロジェクトの詳細なサイト(文書)を読んで理解するのは大変です。
従って
1.先ず動画理研の全体把握

2.次いで本文のポスト「京」プロジェクト」で追認

3.そして文部科学省の
フラッグシップ2020プロジェクト(ポスト「京」の開発)について」でより理解。

4.その後の開発の進捗状況及び
コスト及び性能の評価に係る報告

5.ポスト「京」への移行に伴う京の運行停止に関する内容及び
最新での最新(H30.1)情報ポスト「京」の開発計画等について
の順で追っていけば全貌がわかるのではと思いますが・・・

最後に
ポスト「京」2021年に稼働予定ですので、それ迄TOP500では中国(天河3号等)と米国スパコンのトップ争いが続くと予想されます。
その間日本のどんな高性能スパコンが出現するのかまた小規模でも省エネ性に優れたスパコンが「Green500」での上位を占め続けるか注目してゆきたいとおもます。
次(11月)のスパコンランキングの発表(年末)がたのしみです。

 

 

 

 

夢の全個体電池(NHKサイエンスZERO)

先日NHK-Eテレ「サイエンスZERO」で全固体電池開発の番組があったので概要を紹介したい。

冒頭EV自動車レースの場面が展開される。
この部分は、現状のバッテリーをEV自動車レースに使うとバッテリーが大きい、充電時間が長い、高速走行では持続時間が短くなる(即ち航続距離が短縮)等の現在のリチウムイオン電池での問題を視聴者にわかりやすくアピールしたもの。
これら現状のリチウムイオン電池の問題は、電解質に可燃性液体を使っているためであるが、これらの問題の解決には、当面の主流として電解質を固体にした全固体電池と考えられ現在世界中で開発競争が繰り広げられてている。(過去ブロブもご参照ください

東工大の菅野了次教授は、30年も前からこの固体電解質でのリチウムイオン電池を研究していた。
しかし研究開始から10年たった1991年、液体の電解質を使ったリチウムイオン電池が実用化され現在主流の二次電池としてIT機器等各所に使われている。(より短時間での充電、長時間の使用等の要望はあるが)
その開発者の一人吉野彰氏は毎年ノーベル賞候補に上がるが、今年日本版ノーベル賞ともいえる日本国際賞を受賞した。

そんな中、菅野教授は固体電解質にこだわり続け、最近実用一歩手前(9合目)まで来たという。

その背景には3つのブレイクスルーがあった。

ブレイクスルー1:
2011年、液体電解質を上回る性能の固体電解質の発見。組成はLi10GeP2S12
 その結晶構造は、GeとPとSががっちりとした結晶構造を取っており、一部のLiイオンがまるで液体の様に動いていた。
ただし性能(エネルギー密度、出力密度)はリチウムイオン電池を上回ったが、高価なGeを使っているのが問題。

ブレイクスルー2:
2016年、Geを使わずに更に高性能な電解質を開発。その組成はLi9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3

Geの代わりにSiを使いほんのわずかの塩素を加えたところ、それまでの性能を上回る固体電解質が得られた。

この電解質を大強度陽子加速器施設「J-PARC」の粉末中性子解析装置を使ってリチウムイオンの分布状態を調べるとGeが有るときよりもより3次元的に広がっている。

また熱的な安定性に関しても、通常の(液体電解質の)リチウムイオン電池は60度での使用とされているが、今回の組成の固体電解質は150度くらいでも十分使える。(そもそも粉末を500度に焼いて作る)
また耐久性である充放電回数も100度での結果では1000回でも全く劣化しない。

ブレイクスルー3:
性能を低下させる界面の問題を解決。
電流が流れやすい電解質は出来たが、作った電池は思ったより電流が流れなかった。
この原因は酸化物(正極のコバルト酸リチウム)の方が硫化物(開発した固体電解質)よりリチウムイオンを引きつける力が強い為、正極に接触している電解質の界面部分のリチウムイオンが正極に引き抜かれリチウムイオンの無い空間が出来、不均一な固体電解質となっているためであった。
そこでNIMSの高田氏は両者間にチタン酸リチウムの薄膜(数ナノメートルのLiTi5O12)を導入することで、通常の3倍(600w/kg)の出力が得られた。

ただし現在その膜の働きの原理はまだわかっていないという。

現在この原理の解明中であり、解明されれば更に高性能な全個体電池の開発につながると考えられている。

尚、
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は2018年6月15日付で、全固体リチウムイオン電池を早期実用化するための研究開発プロジェクトの第2期をスタートさせた。
その声明文は以下の通り。
「本プロジェクトでは、自動車・蓄電池・材料メーカー23社および大学・公的研究機関15法人が連携・協調し、全固体リチウムイオン電池のボトルネック課題を解決する要素技術を確立しつつ、プロトタイプセルを用いて新材料の特性や量産プロセス・EV搭載への適合性を評価する技術を開発します。また、日本主導による国際規格化を念頭に置いた安全性・耐久性の試験評価法を開発します。さらに、研究開発と並行して、電動車両が大量普及する将来の社会システムのシナリオ・デザインを検討します。」

<参考サイト>
次世代電池を牽引する、全固体電池開発
Nature Energy 2016年4月)
トヨタと東京工業大が開発する全固体電池の登場はエンジンを場外に送るか    (Motor Fan 2017/08/11)
全固体電池の菅野教授が語る、EVはこう進化する。 次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか。
(日経ビジネス 2018年1月17日)

 

最後に
トヨタ自動車は全個体電池を搭載したEVを2022年に発売すると発表している。
番組では、全固体電池の開発が登山に例えるならほぼ9合目に来たと菅野教授は述べておられるが、番組で公開出来ない部分もあるはずなので、トヨタ及び他の会社での車載用電池としての性能、製造プロセス等相当進んでいると思われる。
今後外国勢(特にドイツ、中国)の情報も含め、車載電池の先端状況に注目してゆきたい。

 

 

 

 

量産車に採用される炭素繊維(CFRP)はどちらが勝つ?

炭素繊維強化樹脂(CFRP)はその強度と軽さから、これまでスポーツ用品から一般産業部品、風車のブレード、そして飛行機(ボーイング787等)に用いられてきた。

一方自動車に於いては、その軽さと強度は環境対策、燃費性能向上に於いて魅力的な素材ではあるものの、材料が高価なこと、大型部品の加工が難しい、加工時間が長い等で生産性が低いという問題から、一部の高級車・部品を除き、量産車には採用されるまでには至らなかった。

しかし近年この高価格と生産性の低さを改善するCFRP及び加工法が開発され、量産車に採用される状況になってきた。

炭素繊維強化樹脂CFRPにはこれまで熱硬化性樹脂を使うCFRPに対し、炭素繊維は同じだが熱可塑性(熱くなると柔らかくなる)樹脂を使う熱可塑性CFRP(一般にはCFRTPと略記される場合が多い)が開発された。

熱可塑性樹脂は帝人が開発したが、GMはこの熱可塑性CFRPを使い世界で初めて量産車のピックアップトラックに採用した。
熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂に比べ材料コストが安く成型時間も短いが、これまで大型部品の量産が難しいという課題があった。
それが複雑形状の大型部品を短時間(1分)の成型時間で量産出来るようになったことで量産車に採用された。
帝人とGMが6年3ヶ月の歳月を掛けてこぎつけた技術だ。

一方トヨタ自動車は採用する炭素繊維を、東レではなく三菱ケミカルのCFRPに決めた。
その理由は三菱ケミカルがSMC(シートモールディングコンパウンド)工法をもっていたからだった。(尚東レは2014年トヨタの燃料電池車ミライの水素貯蔵タンクや円筒シャフト等の部品を提供してはいるが大型成型品ではなかった)

SMC工法とは、2~3cmに切断した炭素繊維をエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂に分散させたシート(SMC)を使い、同シートを加熱しながらプレス成型して製品をつくる方法。
特徴は複雑な形状の部品が成型出来ること、量産対応が可能なこと。

ただしカット繊維を使っているため、強度的には低くなるため、SMC工法による部品自身で強度が足りない場合は、カットしてない長繊維でのプリプレグや、長繊維で作った織物を片面に充てがい樹脂成型して強度を補強する方法が取られている。

熱硬化性CFRPは部品や高級車ボディーへの一部採用で先行してきたが、
GM・帝人で車体に採用が決まった熱可塑性CFRPが追い上げてくる可能性が高い。

車の軽量化の手段として、これまでの材料である高張力鋼(ハイテン)板やアルミ合金が使われてきたが、軽量化を目的としたその使用量の低減には自ずと限界がある。
一方高張力鋼の引張り強さは、炭素繊維の長繊維の併用で十分補強でき、アルミ合金部品には素材単価はかなわないとしても、多くの部品からなるものであれば、CFRPの一体成型によるコストダウンが可能になる。

軽量化素材の比較

上記の理由で今後CFRPの大衆車への使用が増大して行くと思われるが、
GM/帝人の熱可塑性CFRP対トヨタ/三菱ケミカルの熱硬化性CFRPの行方が注目される。
更に、飛行機向けでは圧倒的地位を築いている東レが出遅れていた量産車へのCFRPの取り組み・巻き返しが注目される。

 


これまで車用部品、大型パネルの部材として熱可塑性CFRPが先行開発採用されてきたが、今後は可塑性CFRPが主流になっていくのではないかと一部で考えられている。

確かに加工性(生産性)、性能(強度等)、材料コスト(樹脂)、リサイクル性等が熱硬化性CFRPより優れていればそうなるのは必然だが、しかし私にはどうしても気になる点がある。
それは.異常高温環境下での形態安定性保持・強度不足の懸念についてだ。
熱硬化性CFRPは問題ないが、熱可塑性CFRPは成形品でも高温になると樹脂が柔らかくなる。このため常温で強度が維持されていても、火災等何らかの異常高温環境になった場合に強度が不足し問題になることはないのか。

<参考サイト>
2017年07月18日
炭素繊維とアルミ、量販車への採用を後押しする成形・加工の進化
三菱ケミカルは17年に入り、シート・モールド・コンパウンド(SMC)と呼ぶ生産性を向上したCFRPがトヨタの「プリウスPHV」の骨格部材に採用された。

2018年05月29日
プリウスにも採用、炭素繊維が鉄素材の牙城を崩し始めた理由

2018/6/14
世界初、量産車に採用 アルミを超える新炭素繊 

石とプラスチックから出来た紙、ライメックス(LIMEX)

最近ライメックスという「石から作られる紙」が注目されている。

その特徴は
1.
従来の紙の製造時に必要とされる原料の木材と水が不要である
(因みに紙1トン作るのに木材20本、水100トンが必要だが、代替紙1トンのためには
 石灰0.6~0.8トン、樹脂(PP)0.2~0.4トンとされる。)
2.原料の石(石灰石)は日本で100%自給出来る資源であり、世界的にも埋蔵量は
非常に多く枯渇の心配はほぼない。(結果値段も安い)
3.薄い紙としてだけでなく、厚物、板物としてプラスチックの代替としても使える。
4.紙に比べ耐水性や強度が高いので、浴室等水回りや屋外での使用もできる
5.製造時、廃材や汚水の発生が少なく、特に世界的に逼迫してきている水を大量に
使わなくて良いエコロジー素材である。
とされている。

この素材の誕生とその後の華々しい展開
・2011年に山崎敦義氏によって設立されたベンチャー企業TBMが開発。
(元は台湾のストーンペーパーだが、日本の高度な印刷品質要求に合うものとして新規に開発)
ネーミングは、石灰石(LIMESTONE)のLEMEと未知の可能性を秘めたXを合わせてLIMEXとした)
・その後のブレイン人材と優秀実行部隊の獲得による戦力アップ
・2013年経済産業省のイノベーション拠点立地推進事業に採択
数々の受賞(受賞歴下記)による知名度アップ
・大企業との連携
2016年11月、凸版印刷株式会社と共同開発の基本合意
2017年3月、日揮株式会社、サウジアラビア国家産業クラスター開発計画庁(NICDP)とサウジアラビアでのLIMEXの開発及び製造活動に向けて基本合意
2017年8月NEDOより平成29年度「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」に採択

・2018年 従来の石灰石の代わりに植物から作った生分解性プラスチックである
 ポリ乳酸とを組み合わせたバイオプラスチック新素材の開発。
・生産量の拡大計画
2020年に白石市の工場の年産能力を6千トンから5倍の約3万トンに高める予定。

<所感>
・原料が石灰とPPから考えると、なぜもっと昔に世に出なかったのかとは思う。
しかし基本的に特許が取れるということは誰もやっていなかったのだろうか。
昔から大理石(石灰石)とアクリル樹脂MMAとの混合製品はあった。
(粉体混合ではなく、また厚板としての利用だが)
・LIMEXの発想・製品の元が台湾の「ストーンペーパー」だった(社長談他)のなら、
素材・技術がシンプルそうなので「日本発」というのは一寸気が引ける。
(「KAIZEN」が妥当?)。
・原料が自給出来る日本にとっても有用だが、水も木も少ない中東にとっては
ポスト石油としての期待もさぞ大きいだろうとおもわれる。今後のプラント建設に期待。
また開発途上国にとってもまずは採用しやすい自国の産業となりやすいだろう。
・現在の紙の一部はLIMEXに置き換わるだろうが、木からの紙も良い点は多いので、
値段を基準に棲み分けて行くのでは。
・木(パルプ)を原料とする現行の紙のリサイクルはよく分かるが、このLIMEXのリサイクル      はちょっと難しいと考えられる。
なぜなら樹脂がPPの製品だけでも単品で集めるの(分別することが)難しいのに、
今後多種の樹脂が使われてくることは必然。
環境性(エコロジー)を謳い、生分解性樹脂を多用されるならそもそもリサイクルそのものがなくなる。
・「アップサイクル」が出来る製品でもあった。
アップサイクルとは、リサイクルの上位概念で元の性能以上のもの(材質・製品等)に
生まれ変わらせるという意味。
今後いろいろな分野でこの言葉が好んで使われるようになりそうだ。

LIMEXが今後、素材としての発展と用途してどんな分野にどれだけ浸透(侵食)してゆくか、注目してゆきたい。

 

<参考サイト>
LIMEXとは
動画:地球を救え!石灰石からつくる革命的新素材「LIMEX
LIMEX(ライメックス)が秘める地球環境問題解決への可能性
数々の受賞
◯テレビ番組カンブリア宮殿出演

◯参考
ストーンペーパー

<参考情報>
最近のプラスチック製ストローの環境汚染の問題に絡み、2018年10月4日の日経産業新聞にわかり易いライメックスの記事がでている。
注目は、TBMが伊藤忠他と組んで20年度までに米国に工場を設けるとしていること。