ネオジムを超える磁石の開発

現在最強の永久磁石はネオジム磁石だ。

(ネオジム磁石は現在大同特殊鋼顧問の佐川真人氏が日立金属時代に開発した世界最強の永久磁石だ。同氏はノーベル賞候補と言われている))

しかし電気自動車(EV)の性能向上、燃費向上のためにネオジム磁石を超える高性能な永久磁石が求められている。
そこで産官学でこの目的を達成するために鋭意研究がなされている。

自動車用駆動モーターとして使う場合、使用温度が150~180℃と高いので磁石の特性が低下する。
この対策としてこれまではディスプロシウム等の重希土類元素を添加して高温特性を維持していた。
しかし主に中国からの資源入手問題問題が発生しこれを避けるため重希土類元素を一切使わない次世代磁石の技術開発が進められている。

Ⅰ。ネオジム磁石の改良  

1.国内3社(日立金属、信越化学工業、TDK)の焼結法の改良によるアプローチ。
磁石合金を粉末にした後に結晶の向きをそろえて高温で焼固める方法。
磁石を構成する材料の結晶を細かくするほど保持力は上がり耐熱性が上がる。
現在は直径3~5ミクロンまで微細化されているが、更に細かくすると磁石が酸化しやすいという問題がある。 ネオジム磁石の高性能化HAL工法

2.ダイドー電子の「熱間加工法」(米GMのライセンス)に依る方法。
合金を粉末にせず溶かした磁性材料を急冷して微細な結晶をもつ磁石材料の塊を作る。
次にこの塊を高温で加圧して扁平にすると微細な結晶が自然に磁石に適した向きにそろう。
結晶の大きさは0.2ミクロンと焼結法の10分の1迄小さくすることができ耐熱性が高まった。

本磁石はホンダの新型車フリードに採用された。

 

Ⅱ。次世代磁石の開発状況

2012年国内9企業、2団体が集まり「高効率モーター用磁性材料技術研究組合(MagHEM)」が設立され開発が進んでいる。

その進捗状況
1.静岡大小林教授らの重希土類不使用の新磁石の開発。
サマリウム、鉄、チタン、コバルトを主成分とし安定剤としてジルコニウムを加えた。
200℃の高温域でもネオジム磁石の2から3割増しの磁力の強さが期待される、

2.産総研のサマリウム、鉄、窒素を含む新磁石の開発を進めている。

3.TDKはナノレベルで材料をコントロールする「ナノコンポジット磁石」の開発に取り組む。 レアアース代替技術に望むTDK
  

4.日立金属は17年4月に新設の研究所で新磁石の研究を進める

<備考>

欧米には大手の磁石メーカーは無い。しかし中国は国を上げてEVの普及を目指しており、既に欧州の自動車メーカーが駆動用モーターに採用したとの情報もある。
重希土類を使わない(使えない)日本は上回る技術力で対抗するしかない。

今後共ネオジム磁石を超える次世代磁石開発のニュースは要ウオッチだ。

 

次の機会で、昨年12月日軽産業新聞に連載された現大同特殊鋼顧問の佐川真人氏のネオジム磁石開発の秘話「ネオジム磁石 執念一路」をご紹介します。乞うご期待。