超伝導とはある種の金属・合金・酸化物を零下269℃以下の極超低温に冷やすと電気抵抗がゼロになる現象。(超電導とも書く)
超伝導状態のコイルに一度電流を流すと半永久的に流れ続けるので超伝導コイルを使えば強力な磁石が作れ、以下の応用が考えられている。
・リニアモーターカーへの応用(2027年に開業)
・医療機器への応用(MRIの小型化、新装置・新医療)
・線材として送電線に使用(現在5%の送電ロス低減)
・電力貯蔵の他、発電機、変圧器等
・微小磁気センサー、超高速演算素子等
以上の様に非常に夢のある技術で、産業界は勿論、人間の生活も大きく変える可能性を秘めた技術だ。
1987年までは冷却剤は高価な希少資源である液体ヘリウム(零下269℃、絶対温度4K)(Kはケルビン)まで冷やす実験しかできなかったが、1987年の銅酸化物系の超伝導物質が発見されてから安価な液体窒素(零下196℃、77K)が使えるようになり、研究も、新素材開発も大きく進んだ。
とりあえず今回は超伝導の発見と開発の歴史について復習しておこう。
<超伝導の歴史の大きな流れ>
超電導現象の研究は1911年オランダで水銀の電気抵抗がなくなることの発見から始まった。そして各種新材料の発見、1962年日本でのリニア新幹線計画、そして2008年磁気素材である鉄系合金の発見、2012年、送電実験の開始、2016年超伝導理論に対しノーベル物理学賞が送られた。
<超電導研究史概要>(新聞、インターネットサイト、その他より調査引用)
1911年、オランダの物理学者オンネスが水銀の電気抵抗が4.2K(-268.8度)以下で
消失することを発見
1933年、超電導材料に特有の磁力線を排除するマイスナー効果発見
1953年、実用的な合金系のニオブ・ズズ合金発見(約20°K)(抵抗消失温度、以下同じ)
1957年、超電導現象を説明するBCS理論発表
1962年、微弱な磁場検出に使えるジョセフソン効果発見
1970後半、MRI(核磁気共鳴画像装置)(液体ヘリウム使用)の開発、病院への設置
1986年、米IBM・チューリッヒ研で最初の銅酸化物系高温超電導材料発見(約30K)
1987年、米ヒューストン大等イットリウム系超電導材発見(零下196度、77K)
1988年、金属材料技術研究所(当時)ビスマス系超電導材発見
2005年、IHI等船舶用モーター試作、
JR東海、ビスマス系で超電導用リニア用磁石開発(時速500km以上での
走行試験成功)
2006年、住友電工、米プロジェクトでビスマス系送電実験成功
2008年、東工大、細野教授鉄系の新超電導材発表(零下218度、55度k)
2011年、超電導現象発見100周年。国内外でセレモニー開催。
2012年、東京電力と住友電気工業、前川製作所は、高温超電導ケーブルを
実際の系統電力に接続して送電する実証試験を実施
2016年、米国のサウレス名誉教授とコスタリッツ教授は1970年代にトポロジーの概念を
使い、物質の超電導が低温で起こり、高温では消滅することを理論的に説明
たことでノーベル物理学賞受賞
尚2027年開業予定のリニア新幹線については別途単独記載予定。
<付記>
1.高温超伝導と常温超伝導について
通常の概念では「高温」は「常温」より高い。
しかしこと超電導の世界では、常温はそのまま日常の生活温度と考えればいいが、
高温超伝導はマイナス230℃(43K)以上で電気抵抗がゼロになる材料を指すと
言われているがなぜか明確ではない。
したがって簡単に考えれば液体窒素「マイナス169℃(77°K)以上で超伝導現象が
生じる物質を指すと覚えておけばいいのでは無いかと思う。
今のところ銅酸化物系化合物がトップランナーだ。
一方常温超伝導は全科学者の夢ではあるがまだ実現していない。
世界の研究者が必死で探している状態だ。
常温超伝導が実現すれば、送電線への応用が最初だろうが、自動車への応用が大き用途だろう。
この様に夢のある超電導についてこれからニュースの都度取り上げて行きたい。