IoT時代に見直される磁気テープ

IoT時代に尚必要となる磁気テープの容量向上技術の記事をご紹介

その背景
これまで記録材料の主役の座は、磁気テープからハードディスクに換わり、更に半導体記録装置(SSD)に換わろうとしている。

そのおもな理由はアクセス時間の短縮化だが、容量も著しく増加してきている。
しかし最近、IOTの普及などで企業や研究機関が大量のデータを保管するニーズが高まっている。

IOTやクラウドサービスの活用等に伴い2020年の世界のデータ量は13年比10倍の44ゼタ(ゼタは1兆の10億倍:10の21乗)バイトに増えると見られている。
この内約半分のデータはアクセス頻度が1年に1回以下というものの、保管義務がある「コールドデータ」とされ、大量の記録媒体の需要は高まっている。

そこで通常の業務などで利用頻度が高いデータはソリッドステートドライブ(SSDを使い長期間の保存は大容量データを比較的安価に保管できる磁気テープを用いると言った使い分けがなされている。

そこで磁気テープの更なる容量アップの必要が出てきたわけである。

1. 富士フィルム
 記録容量を従来の約66倍に高められる磁気テープ向け材料を開発(した。)
ストロンチウムフェライト磁性体」と呼ばれるもので、粒子の体積が現行の半分以下と小さいにもかかわらず高い磁気特性を備えている。
粒子を作り上げる過程で 原料の内容や配合の仕方などを見直した。
新しい磁性体を使うと一巻あたりの記録容量を最大400テラ バイトに高められる可能性があるという。10年以内の実用化を目指す。

上記記事は日経の小記事をそのまま採用したが、開発したのではなくどうも将来の話らしい。
技術は、全てバリウムフェライト(BaFe)を使った技術で、
サイト文をそのまま引用すると、
「現在主流となるLTO規格は第7世代となり、非圧縮時で1カートリッジあたり6.0TB(圧縮時で15.0TB)もの容量が格納できます。将来的には第10世代で1巻12.0TBを目指しており、磁気テープは中長期的、または半永久的なデータ保管にも最適であると言えます。磁気テープは今なお進化し続けているのです。」
ということらしい。

詳しくは下記サイトをご参照下さい。
1)ハードディスク(HDD)との比較
2)テープストレッジの全体像
3)富士フイルム「磁気テープ」高容量化への技術革新

 

2.ソニー
IBMチューリッヒ研究所と共同で従来の20倍の容量のデータを記録出来る磁気テープストレッジ技術を開発した。
ソニーが磁気テープと磁気ヘッドの摩擦を抑える潤滑剤を開発し、IBMチューリッヒ研究所の信号処理アルゴリズムなどを組み合わせて高い記録密度を実現した。

記録密度を高めるにはテープとヘッドの距離を狭くすることが必要だが狭くすると摩擦が生じる。この潤滑剤は摩擦を抑えて耐久性も高く磁気ヘッドがテープ表面を滑らかに走行出来る様にする。

従来はテープ1巻当たり15テラバイトだったが、新技術を使うと約330テラバイトを記録出来る。単行本に換算すると、1500万冊から約3億3000万冊に増えるという。

磁気テープは比較的コストが低いので、アクセス頻度が低い大量データの保存の必要性の高まりと共に、今後ますます需要が増えて行くと予想される。

磁気テープの記録向上方式は最初はソニー方式になりそうではあるが、将来的には、両者又は他の新技術を含めた相乗技術で最終的な磁気テープ仕様が決まりそうではある。
今後の推移を注目してゆきたい。

 

 

 

5Gは通信速度100倍で暮らしの革命が起きる

次世代通信規格5Gとは現在主流の方式(4G)の通信速度100倍、容量1000倍とされる通信技術で、これからの暮らしや働き方を大きく変える可能性を秘めており、国際競争も激しくなっている。
<これまでの流れ>

総務省参照サイトの画像より

第一世代(1G)では自動車電話サービスが始まり、肩掛けのショルダーホンが登場。
第二世代(2G)通話だけでなく、電子メールやインターネットも出来る様になった。
ただし、日のんの規格やサービスが海外には広がらなかったのでいわゆる「ガラパゴス携帯(ガラケー)」と呼ばれた。
第三世代(3G
2000年代の3Gではデータ通信が高速化。NTTドコモのサービス「iモード」が人気を集めた。更に音楽やゲームの配信も始まった。
現在は
・LTE(Long Term Evolution)(3Gの後継方式)と・第4世代(4G)の共存
(LTEは第3世代(3G)の移動通信システムをさらに高速化した規格。第4世代(4G)への橋渡しという意味で「3.9G」(第3.9世代)とも呼ばれている。一般的には、LTEも「4G」という表現を使っている場合が多い。)
そして
・第五世代(5G)へ
2020年を目途に世界で一斉に商用化が始まり、高速化・大容量化が更に進み、
動画配信など様々なサービスが生まれようとしている。

<5Gの必要性、必然性>
あらゆるものがネットに繋がるIoT時代の通信手段として現在より更に高速・大容量の通信技術が必要となり、通信速度100倍・容量1000倍の高速大容量通信の5Gは第4次産業革命の基礎インフラとみられている。

<5G規格の制定に関して>
狙い:いち早く5Gのインフラを整え新しいサービスを確率できれば世界競争を有利に導ける。しかし世界の通信規格の標準化は欧州や日本勢が主導する形から様代わりした。

5G規格は2015年9月から国際的な標準化団体「3GPP」が中心となり、策定を進めてきた。今年2017年3月には米ATT,米クアルコムやKDDI等の大手通信関連の40社以上が規格の早期決定で合意した。

ただ業界大手が神経を尖らせているのが、米通信最大手のベライゾン・コミュニケーションズの動き。16年から家庭向け5Gの実験に着手。18年はじめから商用サービスを始める計画だ。5G規格の最終的な決定を前に独自仕様の技術を採用した基地局設備を導入し他社に先行している。

<各国の国際競争状態>
・4Gまでの世界では技術でもサービスでも欧米勢がリードしてきた。
・ここに桁違いの利用者を抱える中国の台頭で主導権争いが混沌としてきた。
・韓国は18年2月の平昌冬季五輪で独自仕様の5Gを始め全国展開に踏み切る考えで
19年には全国で5Gを商用化すると宣言
・ソフトバンクは19年度中の商用サービス開始の方針を表明しており、NTTドコモやKDDIに先行する可能性もある。

<技術内容>
・通信速度:最大毎秒20ギガビットで現行の4Gの100倍以上。
データのやり取り時間は1000分の1秒以下と遅れは殆どない。
2時間程度の映画でも1秒程度でスマホで受信出来る驚異的な通信速度が最大の特徴


<必要なハード、ソフトと市場規模>

・高周波の電波を安定に取り扱う次世代の通信機器が大量に必要になる。
・英調査会社HISマークイットは主要国の5Gの件研究開発と設備投資の合計が25年から35年で年2000億ドル(約22兆円)の規模になると推計する。
5Gで生み出されるサービスの規模が35年には世界全体で12.3兆ドル(約1400兆円)に達すると試算。

<5Gのネットワークになると>
・防犯
・大勢人が集まる場所での不審人物の特定
ドローンのカメラが新国立競技場へ向かう群衆を空中から捉え、半径150メートルにいる数千人の映像をAIが解析し、攻撃性や緊張度、ストレス等50以上の指標で異常値を示す人物を特定できる。
自動運転の安全向上
4Gでは
高速走行する車がブレーキを踏んでも後続車のブレーキが作動するまで1メートル以上進んでしまう。5Gならわずか数センチだ。
・携帯電話では
20年前は音声だけだった携帯電話は3Gになり、音楽配信や「写メール」等画像のやり取りが出来る様になったが4Gではスマホの普及と相まってドラマを見たり、買い物をするなど、生活の基板となった。5Gではあらゆる産業を繋ぎ、立体映像が手のひらで踊る時代がくる。
・東京5輪では
KDDIの実証実験では、サッカーの試合を4つの8Kカメラで撮影し3次元映像に合成してテレビやスマホ等のディスプレーに送る。ポイントはコントローラーで視聴者が見たい視点を自由に選べること。ピッチでプレーする選手の視点に設定すれば試合に「参加」することが出来る

<通信実験スタート>
<国内では>
・総務省の5G総合実証試験(平成29年度)リストhttp://www.soumu.go.jp/main_content/000485322.pdf
(総務省が25億円で6団体に委託)

この他各社新聞記事等から集めた情報は以下の通り
・総務省通信大手が全国で実証実験を始めた。各社は2020年からサービスを始める計画
・今年度(2017)は高画質な動画を素早く送ったり、自動車を無線操縦する実験がおこなわれる。
・NTTドコモは5月世界初の8K中継に成功
・東武鉄道と5月22日東京スカイツリーと伝送実験を開始。周辺施設に5G技術を体験出来る展示コーナーを開いた。展望台から取った8K画像が地上で見れる。
・九州大学のキャンパスでDeNAと5Gを使った自動運転バスの運行管理実験も進行中。
・KDDIは移動中のバス内に8K映像を送る実証実験を公開した。
また建設機械の遠隔操作の実験を始める。
・ソフトバンクも沖縄件南城市で5Gによるバスの自動運転を進めている。
・ソフトバンクは送信と受信のズレ(遅延)の少なさを生かす実験を秋に始める

<市場の大きさ>
米コンサルティング大手のアーサー・D/ritoru 等は5Gが生み出す市場が26年には1.2兆ドル(約130兆円)になると推計する。今後の新しいサービスや端末を同開発し、市場を取るかで世界の企業競争の構図はまた大きく変わる。

<懸念される問題点>
・5Gで使う電波は周波数が高く、直進性が高いので遠くまで届きにくい
安定して使うには多くの基地局が必要になるため設備投資がかさむ恐れ。
・多額の設備投資が必要となるため、PHSの例もあり、戦略を謝れば致命的な打撃を受ける。

日本の5G戦略での5つの課題>
1.実用化の時期
国際電気通信連合(ITU日本20年の実用化を目指している。しかし時間的制約がない海外の通信会社やメーカーは、実験を先行することで、規格作りやアプリケーション作りなどで主導件を握ろうとしている。日本はそうした海外の動きを睨みながら実験を進めて行く必要がある。
2.利用する周波数
ITUでは24ギガヘルツから86ギガヘルツを利用することが合意された
。この周波数帯は日本メーカーにとっては必ずしも得意な領域とは言えず、今回の実証実験でも欧米勢が推す28ギガヘルツ帯が使われた。日本としては総務省を中心にGの周波数ロードマップを早急に詰める必要がある。
3.5Gアプリケーション技術開発の強化
5G技術でリードしているのはスエーデンのエリクソンやフィンランドのノキア、中国のファーウエイ(華為技術)といった世界の3大通信機器メーカーで、日本の実証実験でもこうした海外メーカーが技術を担っている。
基地局整備等の通信インフラでは海外勢の協力を仰ぐにしても、様々な装置をつなぐアプリケーション技術の開発では、NEC等日本企業のの積極的な参入を促し、日本のりードを保つ必要がある。
4.通信と放送の融合
総務省は超高精細のKI/8K放送の実用化時期Gと同じ20年としているが、CS(通信衛星)放送やBS(放送衛星)を軸に普及を図ろうとしている。しかし今回のドコモやKDDIの実験の様に8K映像の配信手段としては放送よりも5Gの方が様々なニーズに対応でき、有料化もし易い。
20年の実用化を睨み、改めて放送の融合のあり方を考えるべきであろう。
5.5G時代のデータ活用のルール作りやセキュリティ対策
5月末にビックデータ時代を睨んだ改正個人情報保護法が施工されスマホなどから得られる大量のデータを利用し易くなったIoTヘルスケアなどアプリケーション分野ごとにデータの所有権や利用可能な範囲、目的など様々なルールを定めてお必要があるだろう。

<5G通信用アンテナ技術>
・5Gは基地局から幅広く電波を飛ばす今の方式と違い、端末に向けて電波を絞って送り出す方式で基地局と端末を専用道路で結ぶイメージだ。
・NTTやKDDIが5月から相次で5Gの実証実験を公開している。
5Gの実現に必須なのが板状のアンテナ「Massive MIMO」(マッシブ・マイモ)だ。
外観は従来の棒状ではなく、スピーカーの様な箱型だ。
表面は通信用の電波を発信する金属片で作られたアンテナ素子が多数配置してある。
従来の棒状アンテナではせいぜい数個に対し8列x8列(64個)や16列x16列(256個)のものもある。
(5G用アンテナに関しては別途出稿予定。)

<5Gインフラ商機>
5Gが普及するためには大量のデータを伝送するインフラが必要だ。
5G関連のインフラには光ファイバー、通信設備、ソフトウェアー、データーセンター等がある。
まず光ファイバーでは、世界3位の古河電工:デンマークや米国の工場でガラス母材の製造装置を導入し製造能力を増強する。その他フジクラ、住友電気工業、や中国のファーウエイ(華為技術)などが成長している。
通信設備では、富士通やNEC、等、データーセンターは米グーグルや米アマゾンドットネットなどのIT大手が増強している。

最後に
5Gは日本が再び主役に立てる重要な戦略分野である。
5Gの技術開発やアプリケーションに開発に日本企業はもっと関与し政府や通信会社もそれを応援する必要がある。今回新たに始まった5Gの実証実はその成否を占う試金石と言えよう。
(日経産業新聞7/17、他参照した)

<参照サイト>
・第5世代移動通信システム 最新情報 東京オリンピック 世界に先駆けて実現へ

・2020年代に向けたワイヤレス関連の戦略 総務省

・ITSの概要
ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)とは、
人と道路と自動車の間で情報の受発信を行い、道路交通が抱える事故や渋滞、環境対策など、様々な課題を解決するためのシステム

総務省におけるITSの取組(平成29年3月15日)

“5Gは通信速度100倍で暮らしの革命が起きる” の続きを読む

EVは部材メーカーの主役交代を迫る

世界で初めての内燃機関による自動車がドイツで誕生したのは19世紀末。
その後、内燃機関車は100年以上に亘って順調に生産を拡大してきた。

しかしここに来て根本を揺るがすニュースが流れた。
フランスに次いで英国が2040年にガソリンなど化石燃料で走るエンジン車の販売を禁じる方針を発表したのだ。
また米国、中国、欧州も排ガス規制を強め、自動車メーカーはの開発と生産を加速する要に迫られており、当面は電気自動車(EV)に移行しして行くであろう。(最終的にはFCV?)

現在EV車を販売している会社は、日本では日産、三菱、米国ではテスラ、欧州ではVW他多数ある。(国、車種、内容等はここからご参照)
この様な状況の中、先日EVで出遅れているトヨタとマツダが新EVを開発する目的で提携した。
この様な状況によりEVに必須の電池関連部材やモーターなどで高い技術を持つ部品メーカーには大きなチャンスが到来したことになり、新たな主役になろうとしている。

国内にはEV向けの中核部品や素材で高いシェアを有する企業が多く存在する。

最も主要な部品であるリチウムイオン電池は、既に普及している民生用は日本が開発、製品化しながら現在韓国企業に席巻されてしまった。
しかし安全性・高機能・大容量が求められている車載用は日本がまだ優位にありこれからだ。

現に米国のテスラ車には、パナソニックが米国に工場を建設(ギガファクトリー、ネバダ州)し、テスラ車全量に納入しいる。先日テスラ社がモデル3を発売したことは大きなニュースとなった。

ガソリン車に必要な部品点数は約3万個だが、EVはエンジン関連などガソリン車の約4割の部品が不要になると言われている。

ガソリンエンジン部材とメーカー等は次の通り、
1.エンジン系
・ピストンリング・・・リケン、TPR、日本特殊陶業
・燃料噴射装置・・・ケーヒン、ミクニ
2.駆動系その他
・駆動系・・・エクセティ、エフ・シー・シー、アイシン・エイ・ダブリュウー
・マフラー等・・・住友理工、フタバ産業

一方、電気自動車EVのおもな部品は、
リチウムイオン電池、モーター、充電インフラ、インバーターに大別される。
それぞれの部品の部材とメーカーは次の通り。
1.リチウムイオン電池
セパレーター・・・旭化成、東レ、
正極材・・・・住友鉱山、戸田工業
負極材・・・日立化成、JFEケミカル
電解液・・・三菱ケミカル、宇部興産、三井化学
2.モーター
・駆動用モーター・・・明電舎、日本電産、安川電機、日立オートモーティブシステムズ
レアアース磁石・・・信越化学、日立金属
電磁鋼板・・・・・・・新日鉄住金、JFEスチール
3.インバーター
・明電舎、カルソニックカンセイ
4.充電インフラ
・日本ユニシス、豊田自動織機
5.その他
パワー半導体・・・富士電機

その成長性の期待から上記会社の株価も近年大きく上昇しているところが多く、今後も継続的な伸び及び新規な企業の台等も予想される。

いずれにせよ、環境規制、排ガス規制の強化で、EV車市場は今後急速に普及していくと予想されている。

一方高度な技術が必要であった内燃機関関連部品が不要となり、今後の産業構造が大きく変化して行くことになる。

(日経7.28参照)