ホンダジェットHA-420が高評価で、納入数首位

当ブログは通常科学・技術関連の1テーマについて私見を含めてご紹介していますが、
今回は特に日本発の新技術による「夢が羽ばたく」嬉しい話をご紹介します。

最近
国産初の70~90人乗り小型旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)の開発遅れに関するニュース記事をよく見かけます。
MRJは日本の小型旅客機の悲願として2008年3月に事業化が決定され、量産初号機の納入を当初2013年後半としスタートし、受注も解約オプションも含め400機以上ありました。
しかし当初の設計変更から当初の機体そのものの設計変更から、機材の配置替え等の変更等の対応でこれまで5度の納入延期となり、型式認証が取得出来ず、受注件数も増やせず苦しい状況になっています。
現在量産初号機納入予定は7年遅れの2020年半ばになっています。
今は早期の型式証明の取得に向け試験機の台数を増やすなどの対応がとられていますが、この間に競合会社(エンブラエルやボンバルディア)と大手との提携の動きが出て、競合環境が変わってきています。

一方、
ホンダがジェット機の研究を初めてから30年を掛け遂に開発した超小型ビジネスジェット機HA-420は、既存のジェット機に無い各種新技術の採用により、走行特性や燃費の良さ等の人気で、昨年2017年の超小型ジェット部門での納入機数ではセスナ社のM21を抜き世界一になる等非常に好調な状態です。

その主な特徴を列挙すると、
・米GEとの共同開発の新エンジンHF-120の採用。
・機体材料として炭素繊維(ノーメックスも)複合材を採用による軽量化と強度アップ(他社はアルミ合金)
・機体廻りの空気の流れの層流(NLF)化と特に翼の形状を改良したSHM-1翼の開発
・エンジン(2基)の主翼上面配置により広い室内(操縦席、客室、荷物室、化粧室)空間の確保と室内騒音の低減
・他社を上回る巡航速度、航続距離、飛行高度の達成
等々。

更にその技術革新性に対し今年2108年5月2日には米国航空宇宙学会(AIAA)より航空業界のノーベル賞と言われる「AIAAファンデーションアワード・フォー・エクセレンス」を受賞した。

販売対象顧客は富裕層、企業経営者からジェットタクシー会社、小型航空会社等へも広がっており、
販売地域もこれまでの米国中心から欧州、中南米他、中国等世界的に広がっている。

課題は、生産台数の増大(現在の月4,5台生産台数を7,8台に上げ100機/年)と思われるが、その他の懸念されるニュースは現在のところ見当たらない。

ホンダジェットに関連する各種メディアから抜粋した情報の概略を表にしてみましたが、
更に詳しくは、写真・動画、特集記事を集めた最後の参考サイトの一覧から適宜ご確認下さい。

機種名 ホンダジェットHA-420
航空事業会社 ホンダエアクラフトカンパニー(「HACI」(Honda Aircraft Company)
社長:藤野道格氏(東大航空工学科)
工 場 米ノースカロライナ州グリーンズボロ(本社工場)
機体区分 超小型機、ビジネスジェッット
価 格 約5億4千万円
機体の特徴 <体の大きさ>
長さ:12.99m 、翼幅:12.12m、高さ:4.54m
<搭乗人員>7人(含パイロット)(標準乗客5又は4人)
優れた点 ・燃費性能の良さ
・高い就航高度
・長い航続距離
革新技術の採用とその結果 自然層流翼型でありながら、十分な厚み(強度と燃料確保)があり、操縦特性に優れたSHM-1を開発。
エンジンを主翼上面に配置により広い客室と荷物室の確保とエンジンから伝わる騒音と振動の減少に成功。
更にエンジン位置の最適化により空気抵抗を低減し
高速飛行と低燃費を実現(他社より13~17%低い)
最新装置の採用による快適な操縦性の確保
飛行性能 最大巡航速度:420kt(時速778km)(他社339-404kt)航続距離:2185km(4名搭乗時) (1kt(ノット)=1852m/分)
最大巡航高度:13100m(43000ft)(他社35000-41000ft)
搭載エンジン HF120(推力950kg)(ホンダ開発のHF118を基に米GEと共同開発した改良型)、2基、
大きさ:直径54cm,長さ112cm
機体製造会社が自社でエンジン開発は世界では唯一(通常は専門の会社から調達する)
コックピット 広い空間と快適な操縦装置環境、次世代ディスプレイ(Garmin3000)設置
使用材質 一体成型複合材製胴体
胴体:炭素繊維(東邦レーヨン製)を使用。
機首と尾部:炭素繊維/ノ-メックスハニカム複合材
(競合他社はアルミ合金使用)
競合他社(機種) ・米国セスナ社のサイテーション(CJ1、CJ1+、M2)
・ブラジル、エンブラエル社(Phenom100/100E)
認証取得 2015年FAA(米連邦航空局)の認証取得済み
生産台数 現在4機/月今後6~7機
納入実績 2017年は43機(セスナ社のM2の39機を抜いて首位)
受注残 現在までに100機超
対象顧客 富裕層、ジェットタクシー会社、企業経営者
2017年納入実績(%) ホンダジェット(32),米セスナサイテーションM2(29)、シラスSF50(16)エンブラエルフェノム100(13)、米セスナムスタング(5)その他(5)
ホンダのジェット機事業のあゆみ ・1962年 本田宗一郎氏が軽飛行機の開発を宣言
・1986年 機体やエンジンの研究開始
・1997年「ホンダジェット計画」が正式スタート
・2001年 米国に研究拠点を設立
・2006年 航空機市場への参入を表明
・2006年「ホンダエアクラフト社」設立(藤野社長)
・2007年 米国で生産工場の建設を開始
・2012年 量産1号機の生産を開始
・2014年 量産1号機が初飛行
・2015年 米当局(FAA)から型式証明取得。1号機引き渡し
・2016年 欧州EASAから型式証明取得、欧州、中南米での受注開始 ・2018年5月 米国航空宇宙学会(AIAA)より、最も名誉ある「プレミアワード」の最高位と位置付けられる「AIAAファンデーションアワード・フォー・エクセレンス」を受賞

下記参考サイトには、比較的最近の記事や動画を集めて、ほぼ時系列に並べてみました。
題名から内容を類推して適当に選んでご覧下さい。
尚特にお薦めは◎で示しておきます。

<参考サイト>
ホンダ、航空エンジンで「シェア3割」の野望(記事)2014/10/21
日本初公開、独創的かつ革新的な「HondaJet」の特徴と歴史を解説
(細部写真も多数掲載)(記事)2015/4/24
HondaJet〜機内&コックピットをご案内(藤野道格社長の案内)(動画)2015/06/10 に公開

次の3連載サイトは特にお薦め。技術内容を解り易く解説。
ホンダジェットHA-420の現状(その1)—はじめに(記事)2016/06/12
ホンダジェットHA-420の現状(その2)—採用した革新的技術(記事)2016/06/12
ホンダジェットHA-420の現状(その3)—GE Honda HF120エンジン(記事)/06/12

空飛ぶクルマ「ホンダジェット」世界一の裏側(快挙を支えた「技術屋の王国」の秘密)(記事)2017年09月01日
小型ジェット機市場で世界一のシェア ホンダジェットの成功の秘密(記事)’17年11月7日
ホンダジェットに世界第1級の評価!その秘密をテストパイロットが明かす未来志向の先進の操作性(動画+説明文字)2018/02/24 に公開
【必見】ホンダジェットの秘密が満載!デモンストレーション飛行に操縦席や客室などがたっぷり見られます(英語動画)2018/03/30 に公開
ホンダジェット製造会社が全米航空宇宙学会の賞を受賞(記事)2018/4/6
ホンダジェットを操縦してみた!コクピット詳細と管制塔とのやり取り((乗った気分)英語、動画)2018/04/20 に公開

今後
ホンダジェットに関しては 今後新情報が出れば追加していく予定です。

一方
MRJに関しては、ホンダジェットよりはるかに多くの情報が発信されていますが、
こちらに付いてもまた適当な時期に纏めてご紹介します。
嬉しいニュースを待ちましょう。

ハーバー・ボッシュ法に代わる新アンモニア合成法

アンモニアはハーバー・ボッシュ法により現在世界で年間約1.7億トンが生産されその8割が肥料用(つまり食料増産)に向けられ、その他食品や医薬品原料として使用されている。

バーバー・ボッシュ法は、100年前にドイツで開発され、空気中の窒素と別途調達された水素を鉄系触媒下、高温(400~600℃)・高圧(100~200気圧)で作る方法であるが、現在まで製法は殆ど変わっていない。

このハーバー・ボッシュ法は大量生産には向いているが、大量のエネルギーを必要とし、また製造設備も莫大な費用が掛かるのが問題であった。

そこで世界中の化学者が新しい方法を探索するなかで、次の2つの技術の組み合わせで小規模生産型の新たな技術が注目されている。

1.新触媒
HB法では鉄系触媒を使用しているが高収率のため上記したように高温高圧の条件が必要であった。
これに対し、東工大の細野教授らは、セメント成分でもあるエレクトライドという酸化カルシウム、アルミナなどの化合物をベースにルテニウムの粒子をつけた触媒により、50気圧以下、300~350℃でアンモニアが合成できる触媒を開発した。(前回ブログご参照)

2.アンモニア分離ゼオライト膜
三菱ケミカルはアンモニアの合成反応で、反応静止物であるアンモニアだけを効率よく通し、未反応物質である水素や窒素をとおさない膜(ゼオライト膜)を開発した。
ただ、ゼオライト膜は本質的に高温・高圧に弱く、現状のハーバー・ボッシュ法には適用出来ない。
そこで東工大の触媒に着目し両者を組み合わせ小型で高い反応収率が得られる技術を開発した。
この技術によると、現状のハーバー・ボッシュ法の収率20~30%を大幅に上回る70%以上の収率が得られた。

この技術を使えば、現在の一箇所での集中大量生産方式から、ドラム缶程度の大きさでも年間数千トンのアンモニが生産出来るという。分散型生産になれば、大型設備や運搬が不要になる可能性を秘めている。

小型設備で容易にアンモニアが生産出来るようになれば、輸送コストが掛からない消費地(肥料として農業地区、工業原料として工場)での生産スタイルになることが考えられる。


アンモニア合成を促進する触媒については、細野教授が当初開発したエレクトライド(Ru・C12A7))以後も各種新触媒が開発されている。
例としては、バリウムを少量加えたカルシウムアミド(Ba-Ca(NH2)2)にルテニウムのナノ粒子を固定化した触媒、
東工大フロンティア材料研究所の原亨和教授と元素戦略センターの北野政明准教授の研究グループらによる新たなエレクトライドRu/Ca2N、

また科学技術振興機構(JST)、東京工業大学と高エネルギー加速器研究機構(KEK)らは、貴金属ではないランタンとコバルト、シリコンの金属間化合物(LaCoSi)を開発等がある。

更には東京大学、九州大学、科学技術振興機構(JST)によるニトロゲナーゼと呼ばれる酵素をモデルとした常温・常圧という温和な条件で窒素ガスをアンモニアへと変換する触媒の開発も進んでいる。

現在すでに上記の様にハーバー・ボッシュ法に取って代わる能力ある触媒の開発競争状態となってはいるが、今後更に新しい触媒も開発されると予想される。

最終的には、総合的に1つの触媒による方式となるか、各触媒に適した生産方式で棲み分けになるのか興味深いところではある。

私的には、マメ科植物の根に共生して窒素を固定する根粒菌のバイオミメティクスによる触媒を用いる生産方式を期待している。(昔のレンゲ畑はこの根粒菌が目的だったのです)

 

<参考サイト>
低温で高効率にアンモニアを合成できる触媒を開発、現行の工業用触媒に比べて3倍以上
ゼオライト膜
東工大など、貴金属を使わない金属間化合物アンモニア合成触媒を開発(LaCoSi)
世界最高の活性を示すアンモニア合成触媒の開発に成功(ニトロゲナーゼ模倣)
(~モリブデン錯体を触媒とした常温・常圧での窒素固定反応~)
アンモニア合成を通して人類を支えた研究者たち