今年2018年のノーベル賞は誰に

いよいよ今年もノーベル賞の日がやってきました。(以下当ブログは自然科学部門だけに言及します)
先ず10月1日には医学生理学賞、2日には物理学賞、3日は化学賞が発表されます。

受賞者の予想は各メディアからいろいろ出ていますので詳細は最後の参考サイトをご参照いただくとして、ここでは私見も交え選出してみます。

1.医学生理学賞
医学・生理学賞では、2012年に山中伸弥氏、そして15年に大村智氏、16年に大隅良典氏と2年連続日本人が受賞している実績があり、今年も受賞に期待が高まっています。
今年は、免疫と遺伝子関連が注目されているという。

免疫関連なら
◯体内の異物に抵抗する免疫ブレーキ役のたんぱく質「PD―1」を発見した京都大学の
 本庶佑(たすく)特別教授。
PD―1の働きを抑えれば、免疫細胞によるがん細胞への攻撃が再活性化することを
発見。これを応用した抗がん剤「オプジーボ」の開発につながった。
◯免疫が過剰に働くのを抑える「制御性T細胞」を発見した大阪大学の坂口志文(しもん)
特任教授「世紀の発見」といわれている。(T細胞は免疫の司令塔と言われもの)

遺伝子関連なら
◯ゲノム(全遺伝情報)に関する独自のデータベース「KEGG」の整備を進めてきた京都大の金久実特任教授(70)(米の科学情報サービス会社の予想)
金久氏はバイオインフォマティクス(生物情報科学)研究の先駆者的な存在で、生体システムの機能の解明に役立ち、医療や創薬など幅広い応用が期待されている。

ゲノム編集技術
ゲノム編集技術の一種「クリスパー・キャス9」は使いやすさや効率の良さから医療の治療法の開発や農水産物の品種改良等、幅広い分野で近年劇的に普及している。
開発者は米国と仏の博士だが、受賞すればこの研究の元になった「クリスパー」という遺伝子配列を発見したのが日本の石野良純九大教授の為、共同受賞となる可能性もある。

製薬関連なら
◯コレステロールの血中濃度を下げる物質「スタチン」を発見し、世界中で推計4000万人
が使っているという動脈硬化の治療薬の開発へとつなげた東京農工大学の遠藤章特別栄誉教授も有力だ。

2.物理学賞
対象分野は「素粒子」「宇宙論」「物性」「量子力学」等で、昨年は「重力波の観測」で米の3氏が受賞しましたが、今年は日本人の受賞が大いに期待されています。
その根拠は?!、以下参考サイトからの
引用です。
「ノーベル物理学賞の受賞分野には法則性があるといわれていて、物性(物質の示す物理的性質)の分野と宇宙・素粒子分野が交互に受賞する傾向があります。近年を振り返ると、2013年は素粒子(ヒッグス粒子)、14年は物性(青色LED)、15年は素粒子(ニュートリノ振動)、16年は物性(トポロジカル相転移)、17年は宇宙(重力波)ときていることから、今年は物性分野からの選出が有力とされています。」

物性分野なら日本人候補者は多数います。

◯理化学研究所の十倉好紀創発物性研究センター長。
磁石の力で電気的な性質を変えたり、電圧を掛けて磁気的な性質を変える出来る「マルチフェロイック物質」を開発。この物質は電気と磁気の性質を併せ持つため、メモリーデバイスへの応用と電子機器の省エネに期待されている。
◯ネオジム磁石を発明した佐川眞人氏
 1982年に史上最強の磁石「ネオジム磁石」を発明。ネオジム磁石は30年以上「最強」の座に君臨し続けていて、「ネオジム磁石がなければ世界中の産業が成り立たたくなる」と言われる。
世界の産業や社会への貢献度は多大です。その開発秘話は日経産業新聞の仕事人秘録のコラムに同氏が掲載されました
その要約ブログここから

◯東工大の細野秀雄教授
IGZO半導体、ハーバーボッシュ法以来のアンモニア合成の新触媒、鉄系超電導物質、透明半導体等幾つもの新物質の発明をされています。毎年候補に上がりますが果たして。

◯香取秀俊 東京大学教授
アインシュタインの一般相対性理論の効果を、約15mの標高差で昨年観測した「光格子時計」の発明。160億年で1秒しかずれないそうだ。因みに現在のセシウム原子時計は3000万年に1秒とのこと。
私的には時計よりもアインシュタインの理論の検証が出来るというのが興味ありますね。

尚蛇足かもしれませんが、
いつも頭の片隅で思っていたことを、つい最近出版された本で見つけたのでここで紹介します。
それは青色LEDの開発ではノーベル賞を受賞したのに、赤色、青色LEDの両開発をも行い更に光通信に多大の貢献のあったとされる元東北大学教授の西澤潤一氏がノーベル賞と無縁のことです。
このことについて日本在住の外国人弁護士(+タレント?)のケント・ギルバート氏が書いた「日本人だけが知らない本当は世界で一番人気の国・日本」(SB新刊)の、第一章の中で記述しています。以下項目だけを列挙します。
世界に誇るの「超ノーベル賞級」の功績の中で
10個のノーベル賞に値する天才、赤色、青色のLEDという偉大なる発明、
「光通信の父にして「ミスター半導体」(一部省略)

本書は現代日本人が知らない産業、社会面をたくさん詳述していますので、是非ご覧になることをお薦めします。

おっと、随分脱線しましたが、本論に戻ります。

3.化学賞
  他の2賞に比べ対象分野は広い。昨年は装置(生体分子を計測するクライオ電子顕微鏡)が選ばれたため、今年は有機化学や材料分野が有望と考えられている。

◯リチウムイオン電池の開発
毎年候補に上がっているので今年は可能性が高い。
ニッケル水素電池や鉛蓄電池というバッテリーが世の中にあったけれど、現在では広く普及し青色LED以上に世界に貢献していると思う。
リチウムイオン電池に関しては、吉野彰 旭化成名誉フェローの名前だけが特によく知られているが、受賞となればとグッドイナフ教授と同教授のもとで正極材を開発した水島公一東芝リサーチコンサルティング シニアフェローの共同受賞となると思う。

◯中部大山本尚教授の不斉合成
山本教授は、有機化合物を合成する際に必要な触媒を研究し、
「キラルルイス酸触媒」と呼ばれる応用範囲の広い触媒を開発した。
必要な有機化合物だけを取り出す「不斉合成」で炭素同士や炭素と窒素の結合を実現するなど、医薬品開発や精密化学工業の発展に大きく貢献した。

◯自己組織化の研究、東大藤田誠教授
金属イオンと有機分子の2種類のパーツを溶液中で混ぜると自発的に組み合わさり、
内部が空洞の立体構造を作る。この技術を使えば調べたい化合物の溶液を含ませると穴に収まる様に整列するため、手間がかかる結晶化をせずに化合物の構造を解析できる。

その他、日本人としては推したい光触媒やCNT等もあるが・・・。

昨年の発表から1年を掛けて選考された結果が明日から発表される。
日本は2000年以降は米国についで2位となっているが、欧州勢との距離は受賞により更に開くか受賞無しで縮まるか?他のアジアの諸国の受賞者はでるか。
いよいよ来週一週間で決着する。

<参考サイト>
1.ノーベル賞、日本人の有力候補と業績まるっと紹介

.ノーベル賞2018特集 日本人の有力候補を総まとめ

スパコン「京」前後とポスト「京」に関する情報

最近の量子コンピューターの話題にやや影を潜めていた感のあったスーパーコンピューター(以下スパコン)ですが、先日理化学研究所がポスト「京」の運用開始を21年からと発表し、またスパコンのニュースがふえて来そうです。

スパコンの計算速度については、1993年から年2回世界の上位500台のランキングTOP500が発表されてきました。
当初はずっと米国クレイ社製が占めていましたが、日本が2002年に「地球シミュレーター」で、また2011年には「」でトップを占めました。

しかし近年は中国の躍進が著しく10年と13から17年まで4年連続して中国がトップを占めました。
世界のスパコンの順位の変遷とスパコンによる大型製品開発の例は以下の図がわかりやすいですね。

理研のサイトより

ただし今年2018年6月25日の発表では、再び米国のIBMの「Summitがトップに返り咲きそれと3位を、また中国は2位と4位を占め、日本は産総研のAI専用スパコン「ABCI」(富士通)が5位になったものの、「京」は16位になっていました。

TOP500にランクインしたスパコン台数については、
中国は速度争いではトップを逃したものの206台とダントツで、米国の124台、3位の日本の36台を大きく上回っています

一方、
単純な計算速度を競うTOP500に対し、消費電力あたりの計算速度を測る「グリーン500」では日本が1位から3位を独占し、更に10位以内に6件が入っており、
速度では負けても小規模パスパコンの省エネの技術面では優位性を保っている状況ではあります。
(因みに1位は、理化学研究所の情報基盤センターに設置されている「Shoubu(菖蒲)system B」。2位は大学共同利用機関法人の高エネルギー加速器研究機構(KEK)に設置されている「Suiren(睡蓮)2」、3位はPEZY Computing社内に設置されている「Sakura(桜)」

最先端のスーパーコンピュータは、科学技術の振興、産業競争力の強化、国民生活の安全・ 安心の確保等に不可欠な「国家基幹技術」であり、上図で見たように各国がその開発競争にしのぎを削っています。
日本としても、諸外国に対して競争力のあるシステムの開発を進める必要があり、ポスト「京」開発のために文科省は「フラッグシップ2020」(世界トップレベルの性能 を有し、幅広い分野をカバーするシステム)としてポスト「京」開発のプロジェクトを立ち上げました。

以下ポスト「京」についての開発計画をご紹介しますが、
その前に
1.まずはスパコンのおさらいです
①「スパコンって何がすごいの
(非常にわかりやすい解説ですが2011年の資料ですので、ランキングは無視してくださいね。)
②これは会社の宣伝サイトではありますが、最新情報も入れた一般受けする項目で非常に分かり易くかかれています。
日本の誇るスーパーコンピュータ「京」!スペックやできることを紹介

2.最初に日本のスパコンが世界トップになったのは、
 2002年の「地球シミュレーターでした。

3.次のトップは
2012年9月末に本格稼働したスーパーコンピュータ「京」です。
当初は10ペタフロップスという1秒間に1京回(1兆の1万倍)の計算が可能な驚くべき性能でした。
①この「京」の全体については
理研計算科学研究センターのサイをご参照
②また開発、製造、据え付けの様子や、新たに開発したネットワークの構造ついては動画サイト「スーパーコンピュータ「京」の開発」から
(しかし2018.6現在はのTOP500では16位となりました)

更に
4.スパコンによる成果については以下のサイトで伺えます
①2011、12年のゴードンベル賞受賞
理研サイトより
HPCIコンソーシアムサイトより

5.スパコンの評価には
①速さを競うTOP500
②省エネ性(エネルギー消費効率の良さ)を競うGreen500
③グラフ処理 における速度を評価するGraph500
等があります。参考サイト

 

それではいよいよ本論のポスト「京」の開発計画に入ります。
計画の概要を最初にざっと要約しておきます。
<事業の目的>
◯我が国が直面する課題に対応するため、2021年の運用開始を目標に、世界最高水準の汎用性のあるスーパーコンピュータの実現を目指す。
<事業の概要>
〇最大で「京」の100倍のアプリケーション 実効性能を目指す。
〇 低消費電力型:30~40MW(因みに「京」は12.7MW)
◯開発費:約1,300億円(内国費1100億円)
<開発の主体>
理化学研究所(理研)と富士通
<目指すシステムの特徴>
下記項目において世界最高水準レベルを備え、総合力で卓抜するレベルの製品
①消費電力性能 ②計算能力 ③ユーザーの利便・使い勝手の良さ ④画期的な成果の創出
<ポスト「京」の開発スケジュール>
2014年:基本設計開始、2015年:詳細設計開始、2018年:製造開始し
2021年:運用開始(の予定ですが・・・)

<重点課題>
以下の5つのジャンル
①健康長寿社会の実現、
②防災・環境問題、
③エネルギー問題、
④産業競争力の強化、
⑤基礎科学の発展
の内、9つの重点課題から構成されています。

理研のサイトより

<期待される成果例>
(文科省)「ポスト「京」」の開発プロジェクト について14頁~18頁に、京以前京での現在ポスト「京」の将来像を画像入で分かりやすく説明されているのが分かり易いかもしれません。
 概要は以上です。

ですが
実際各ポスト「京」プロジェクトの詳細なサイト(文書)を読んで理解するのは大変です。
従って
1.先ず動画理研の全体把握

2.次いで本文のポスト「京」プロジェクト」で追認

3.そして文部科学省の
フラッグシップ2020プロジェクト(ポスト「京」の開発)について」でより理解。

4.その後の開発の進捗状況及び
コスト及び性能の評価に係る報告

5.ポスト「京」への移行に伴う京の運行停止に関する内容及び
最新での最新(H30.1)情報ポスト「京」の開発計画等について
の順で追っていけば全貌がわかるのではと思いますが・・・

最後に
ポスト「京」2021年に稼働予定ですので、それ迄TOP500では中国(天河3号等)と米国スパコンのトップ争いが続くと予想されます。
その間日本のどんな高性能スパコンが出現するのかまた小規模でも省エネ性に優れたスパコンが「Green500」での上位を占め続けるか注目してゆきたいとおもます。
次(11月)のスパコンランキングの発表(年末)がたのしみです。