地球温暖化対策に期待される人工光合成

昨年(16年)11月地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」が発効した。

温暖化の代表的な原因とされる二酸化炭素だが、これを有効活用しながら減らす技術として注目されているのが植物の光合成を模倣してエネルギーや物質を生み出す「人工光合成」だ。

 

人工光合成は

①太陽光を使うこと②水を原料にすること③光エネルギーを化学エネルギーに変えて炭水化物のみならず水素やアンモニアなど生成するという3要素を同時に備えることが条件とされている。

 

現在世界中で研究開発がなされており、日本でも幾つかのグループで開発が進められている。

その代表的なものをご紹介。

1.NEDO(産業技術総合開発聞機構)が開発を委託する「人工合成化学プロセス技術研究組合」

・光触媒と太陽光で水を分解し水素と酸素を発生させ、この水素と炭酸ガスを原料にしてプラスチックや各種プラスチックの原料となるオレフィンを合成する。

この光触媒の原点は1972年に「ホンダ・フジシマ効果」として発表されたもので、二酸化チタンに紫外線が当たると水が酸素と水素に分解された現象。

その後、2000年代に入り可視光吸収型光触媒が発見され、多くの研究開発が進むようになった。

昨年時点でのエネルギー効率は3%に達した。因みに植物の光合成の効率は1%。

2.豊田中央研究所

・半導体を使った人工光合成。半導体基板の片面に貴金属のイリジウムを使った触媒を、他方も片面にルテニウムの触媒を貼り付けた素子を使用。

これを水に入れて炭酸ガスを吹き込みながら太陽光を当てると高効率で化学原料のギ酸(HCOOH)が出来る。

エネルギー変換効率は11年の1.04%から15年には4.6%まで高まった。

・半導体を使う方法はパナソニックや東芝も人工合成の開発に取り組んでいる。

3.大阪市立大学・マツダ

・酢酸に酵素を加え太陽光を当てるとエタノールが生成する人工光合成に成功。

エタノールは燃焼時炭酸ガスの発生の少ない燃料となる。

変換効率は0.1%とまだ低く、エタノールの分離の課題もある。

 

パリ協定は気温上昇を産業革命前から2度未満に抑えるという方針を掲げ各国に大幅な排出削減を求めている。

日本政府も昨年4月には二酸化炭素の抜本的な削減に向けた「エネルギー・環境イノベーション戦略」でこの人工光合成を有望な対策技術に位置付けた。

 

<付記>

 

 

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