常温核融合は本物か?

太陽の中で起こっている核融合反応を地上で再現できれば人類は永久にエネルギーに困らない。しかしこのためには一億度以上のプラズマ状態の反応の場が必要とされフランスや日本などはITER(国際熱核融合実験炉)の建設をフランスで進めている。

一方常温で核融合を起こそうという研究も進められている。これは1989年に米ユタ大学で二人の研究者がその兆候を見つけて発表したものだが、各国での追試が結局再現出来ず中止された。しかし一部の研究者たちが研究を続け徐々にこの現象の再現性が高まってきた。2010年頃から米国やイタリア、イスラエルなどにエネルギー利用を目的としたベンチャーが生まれている。

常温核融合を目指して日本でも研究は続けられ、現在では日本は凝縮系核反応、米国では低エネルギー核反応と呼ばれている。

この反応は常温から数百度で元素が融合し、各種が変換する。この反応の応用には発生した熱をエネルギー源にする方向と核変換によって放射性元素の無害化や希少金属の生成を目指す方向がある。

日本での取り組みは東北大の岩村教授グループと神戸大の荒田名誉教授グループが夫々ベンチャー企業など共同で実験を進めている。

89年のユタ大学での実験はパラジウムの電極を重水素の溶液中で電解するものだったが、現在はいずれのグループもパラジウムを主体とした金属に重水素ガスを圧入する方式で、熱の発生と、ヘリウムの生成の再現性が高まっている。

一方依然としてこの凝縮系核反応を偽物とみる研究者がいる。それは核融合を引き起こす為の陽子(+)間に働く反発力(クーロン斥力)を低温度状態でいかに乗り越えているのか、粒子や放射線を出さない核反応が可能なのかという疑問に応えられる理論構築が出来ていないからだ。

この疑問に対しては、金属内では電子や陽子が密集しており、ここに高圧の重水素が接触して浸透し、複数の元素が同時に反応することにより何らかの原理によりクーロン斥力が軽減され反応が進むのではと推定されている。