次世代電池としてのカリウムイオン電池

現在2次電池としてリチウムイオン電池が全盛ではあるが、課題もいろいろあり、
リチウムイオン電池を超える電池が要望されている。
その一つにナトリウムイオン電池があり、次世代の電池として期待され研究開発がなされている。
更に同じアルカリ金属のカリウムイオン電池もあるが、これまで正極に適した材料(化合物)が少なく開発は進んでいなかった。

今度、東京理科大学の駒場慎一教授はプルシアンブルーを使った正極を開発し、
既に開発していた黒鉛の負極やカリウムイオンを溶解する純度の高い電解液を組み合わせてカリウムイオン電池を実現した。

今回開発されたカリウムイオン電池の性能
●負極の素材は黒鉛、正極の素材:鉄系のプルシアンブルー
●正極の容量:1g当たり141mAh,負極は250mAh
●電圧:4ボルト
●電池のエネルギー密度;1kg当たり200wh
●充放電回数:400回迄負極の性能低下なし。
等リチウムイオン電池に比べて性能的には見劣りしない。

<カリウムイオン電池のメリット>
◯カリウムはリチウムに比べて入手し易い。(金属としてだけの比較)
◯リチウムイオン電池に比べより安全性が高い。
カリウムイオンはリチウムイオン電池に比べ発火しにくく安全性が高い。
(リチウムイオン電池は一定の電圧以下になると金属が樹状に結晶化してショートし
発火する危険性がある。カリウムは電位的に2倍の余裕があり
また融解温度がリチウムより低いこともそれだけ発火のリスクが低い。)
◯リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池に比べ負極の電位を下げれるため
電圧をより高く出来る。
◯カリウムイオンはリチウムイオンに比べ動き易いので電池にすると大電流を流しやすく、
充放電の速度はリチウムイオン電池の10倍以上になる。
◯電極材料のコストが低コスト
今回、青鉛筆の芯にも使われる安い材料であるルプルシアンブルーを使用する正極を
作成した。因みにリチウムイオン電池はコバルトなど高価な材料が使われており、
電池の製造コストに占める割合は4割もあるとされる。

カリウムイオン電池のデメリット>
●イオンが大きいのでリチウムイオン電池の様に小型軽量化は難しい。
このため風力発電用など据え置き型の蓄電池用が期待される。
●リチウム電池と比べ同じ容量ではより重くなる

<今後の予定>
リチウムイオン電池で実績のある昭和電工と協力して長期間の使用が求められる据え置き型電池を目指すそうだ。

今回の東京理科大の開発で、これまで殆ど手が付けられていなかったカリウムイオン電池の開発に乗り出す研究者や企業も増えそうだ。

<これまでのカリウムイオン電池の開発>
米国(2012年)
同教授(2015.11)

上記内容は日経産業新聞2017.2.9他を参照し記述した。

<所感>
リチウムイオン電池が既に広く普及しているだけに、カリウムイオン電池が受け入れられるためには、先ずはリチウムイオン電池の欠点を補う部分での使用に特化した棲み分けが出来る製品を開発し普及させていく戦略が有効と考えられる。

<関連サイト>
マグネシウムイオン電池
3倍
パワーリチウムイオン電池