バイポーラ型鉛蓄電池は定置型の主流になるか?

これまで直近のブログでは最近急激に注目を集めてきた全樹脂電池を3回に亘って取り上げてきた。

この全樹脂電池はバイポーラ型としているため、積層して使え、省スペース、余分な筐体(ケース)や配線が不要、製造工程がシンプル等の特徴を持ちリチウムイオン電池にくらべ大幅なコストダウンができるとされている。そしてその用途としてAPB社は再生エネルギー保存用としての定置用を狙っている。

この定置用電源は今後の再生エネルギーの増大に対応電源として非常に大きな市場(2019年の3000億円から2030年には8000億円規模)になると予想されており、現在稼働中のものも含めいろいろな電池が候補に上がっている。
(以下の図は最後の参考サイトから引用)

この定置用電源として、従来型(有機液体電解質使用)のリチウムイオン電池はリサイクル性と安全性に問題があり、更にまだコストが高いとされており、最近バイポーラ型全樹脂電池が注目されている。

しかし、実は以前からずっと注目されていた電池がありました。

それは鉛蓄電池。鉛蓄電池は誰でも知っているように現在も一般ガソリンエンジン用の12Vの主バッテリーとして、またEV用でも補助バッテリーとして重要な役割を演じており、“枯れた技術”とされていているが、この鉛蓄電池のバイポーラ型製造が研究されていた。

考えられているバイポーラ型鉛蓄電池の特性は下図の様に理想的ともされている。

しかし実用化のための3つの大きな技術的課題がありこれまで実現していなかった。
その3つの課題とは
①「鉛箔の薄膜化と長寿命の両立」
②「樹脂プレートの成形と接合技術」
③「鉛箔と樹脂プレートの異種材料接合」

これらの課題は古河電気工業のメタル/ポリマー技術および古河電池の電池/加工技術を駆使することで解決され、ついに「長年実用化困難とされたバイポーラ型蓄電池の量産実用化のめどが立った」としている。

最終的に公開されているバイポーラ鉛蓄電池のデータは以下の通り。

  バイポーラ型蓄電池の概要

APB社バイポーラ型全樹脂電池についてもこの形のデータ(特に寿命データ)を入手したい。


古河電工Gは鉛バイポーラー電池を2021年度中にサンプル出荷、2022年から製品出荷し、電力事業者、発電事業者を中心に展開する予定。

APB社も2021年中に生産開始することを公表していますが、コロナ禍の問題もあり両社とも進展が遅れるかも。

”枯れた技術”による鉛バイポーラー電池と最新技術とされる全樹脂電池(APB)両バイポーラ電池の今後の推移に注目して行きたい。
(上記本文と図は以下のサイトより適宜引用した)

<参考サイト>
・◎再生エネ活用の本命「バイポーラ型蓄電池」
・◎実用化困難とされた「バイポーラ型蓄電池」を量産へ
鉛バッテリーがリチウムイオン電池を超える、古河電工がバイポーラ型蓄電池で
再エネ用蓄電池の本命か? リチウム電池を超える新型鉛蓄電池が量産実用化へ
・◎“枯れた”鉛蓄電池でリチウム電池超え、古河電工が22年量産へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日産から飛び出した全樹脂電池技術のもう一つの行先は中国

日産が電気自動車EVを発売したのは2010年だが、当時日産はリーフ用電池を外部から調達できず電池は内製するしかなかった。

しかし近年、内製より低コストで調達できる外部環境が整ったため、日産はEV用電池を自社で開発・製造するのではなく外部から調達する方針に変更した。

2020年に量産を始める予定のEV専用の新プラットフォーム(車台)を適用した新型車からは外部の電池メーカーから積極的に調達する方針だそうだ。

この方針転換で、これまで日産社内で電池開発を担当する技術者にとっては優れた技術を開発しても内製できる可能性が殆どなくなったため、多くの電池技術者が日産を離れた。

その一人が堀江英明氏
同氏は1990年に全樹脂電池の構想を始め2018年日産を飛び出してAPBを立ち上げた。そして19年2月には三洋化成工業の子会社となり全樹脂電池の開発・生産を共同で進めることになった。そして資金を集め2021年には量産を開始する計画を打ち出した。(ここら辺の状況についてはこれまでのブログをご参照。)

 一方堀江氏とは別に日産から飛び出したのは
技術者の他に日産の子会社として電池生産を担当してきたオートモーティブエナジーサプライ(AESC。同社は中国の再生エネルギーの大手であるエンビジョングループの傘下に入りエンビジョンAESCグループとして2019年4月に再出発した。

同社は2020年12月から新型電池の量産開始を予定しておりその最大の特徴はセル形状ドイツ自動車工業会(VDA)規格に合わせたことだ。
VDA規格(付記参照)の電池は欧州の各自動車メーカーが既にEVに搭載しており、現在CATL韓国LG化学などが供給しているが、エンビジョンAESCグループはこの一角に入ることを狙っている。

新工場の場所は中国の無錫市。同社の現在の生産能力は日米欧で7.5ギガワット時であるが、これを2023年までに20ギガワット時まで生産量を増やす強気の戦略を描く。

(以上日経クロステック2020年4月23日付け記事/6月8日付け日経産業新聞6月8日付より抜粋)

詳しくは同誌をご参照ください。

 

最後に、日産を飛び出した電池技術がそれぞれAPB/三洋化成工業の静置型大型電池狙いとアンビジョンAESCグループのEV用途向けとなったわけであるが両社の今後の行方に注目して行きたい。

 

<付記>
VDAに関して
1.簡単
2.わかり易い
3.ウィキペディア

 

 

 

 

 

日産自動車、全樹脂電池特許をAPBにライセンス供与

これまで全樹脂電池に関しては過去3回の記事でその概要は知ることが出来た。
そして21年以降大量生産に移行する計画も立ち上がったことも知った。

しかしはっきりしない懸念部分もいくつかあった。
其の一つがAPBの堀江社長が日産在籍中やその後慶応大大学院での日産との共同研究での特許の件だ。
当然これらの特許はAPBが単独で自由に使えるものではない。大量生産に当たるに際し、これら特許技術の使用条件に関する情報がなかった。

この度、4月16日付けで日産自動車は表記のように、全面的にAPBにライセンス供与することになりこの問題はスッキリした。

以下、下記に添付した日産のニュースサイトとメディアのサイトから抜粋した部分にこれまでの情報をあわせてご紹介します。

以下抜粋と追加文で再構成
日産自動車は2020年4月16日、次世代リチウムイオン電池の1つである「全樹脂電池」を開発するAPBと、バイポーラ電極構造の全樹脂電池の要素技術に関する特許やノウハウの実施許諾契約を締結したと発表した。
APBは日産自動車と全樹脂電池を共同開発してきた三洋化成工業とも同様の契約を結んだ。これによりAPBは非自動車用途における全樹脂電池の開発と製造、販売を行えるようになる。
APBは今回のライセンス契約の締結によって「全樹脂電池の根幹となる革新的な技術群を得ることができ、本格的な生産に向けた基盤が整う」(堀江氏)とし、定置用蓄電池の製品化に向けて動き出す。また、日系企業7社から80億円の出資を受けて、1年間にギガワットアワー(GWh)規模の電池を生産する工場を日本国内に建設する。

日産自動車は2002年ごろから全樹脂電池の研究を本格的に開始しており、現在も取り組んでいる。今後も全樹脂電池の研究開発を継続するそうだ
三洋化成工業も、引き続き全樹脂電池に経営資源を投入し、APBと共同で開発を進めていく。
尚、三洋化成は高吸収ポリマーで世界首位の日本触媒と今年10月1日に予定していた統合(新会社シンフォミクス))を来年4月1日に延期した。

今回の発表資料で使用された図(A図)がちょっと気になりました。
A図
全樹脂電池はバイポーラ電極構造を有する全樹脂電池であり
「バッテリーセルの表・裏面をそれぞれ構造体であると同時に正極・負極の機能を有する樹脂集電体で形作り、複数のセルを重ねることで、バイポーラ構造の組電池の構成を可能とする要素技術」とされている。
使用されたA図は全樹脂電池のケース自体が電極で有ることが分かり難く理解し難い図だ。
B図
対して、B図は上記で説明されている両側のケース自体が正負の電極になっていることがわかり易いと思うが。

<参考>
APBの代表取締役社長の堀江英明氏は日産自動車に1985年に入社し1990年以降日産自動車で電動車用高性能電源システムの研究開発で「リーフ」のリチウムイオン電池開発に携わり、2012年からは電気自動車の電源システム開発に従事しながら東京大学の特任教授を兼務していた。全樹脂電池は同氏が1990年代から構想し、2012年から日産自動車と三洋化成工業が共同で要素技術の研究開発を進めてきた。
【堀江英明氏による全樹脂電池のコメント】
「従来、電池のデザインにおいて、電流を通す端子や集電体は、抵抗を低減するための部材として金属であることが必須と考えられてきました。我々は今回、世界で初めて、集電体を含めた電池骨格を全て樹脂材料で再構築し、またバイポーラ構造を採用することで、出力は従来同様に確保しつつ、異常時においても電池内部での急激な発熱・温度上昇を抑制する、世界初の電池デザインとそれを支える一連の革新的な技術群を創出し、この高性能電池を『全樹脂電池』と名付けました。」

全樹脂電池は、
電解質と電極を樹脂に置き換えることで安全性を向上する。バッテリーセルは、構造体であり電極の機能をもった樹脂集電体で構成する。バイポーラ電極はセルケースと密着しており、セルケースの外側から広い面積を使って電気を流すことができる。容積あたりの充電容量を増大する。また、「電極の断面積が広いほど抵抗が下がるため、効率よく電気を出し入れできる構造だ」(日産自動車)としている。このようなセルを複数重ねることで組電池となる。従来のリチウムイオン電池と比べて構造がシンプルになるため、コスト低減が図れる。コスト低減によって定置用蓄電池が普及すると、深夜電力や再生エネルギー電力の有効活用が進む。ピーク時の電力消費の抑制や、安定した効率的な電力活用の実現にもつながるとしている。

懸念事項その2は
やはり2次電池としての性能特に蓄電容量、充電速度、特に耐久性繰り返し充放電による劣化等)のデータです。

電池容量については当初(2019.6.3の記事)ではリチウムイオン電池が300Wh/Lに対し
最大560Wh/Lとされていましたが、量産計画発表時での性能は300Wh/Lとされていて
ほぼ現在のリチウムイオン電池並です。
しかし充電速度や特に耐久性についてはこれに言及した発表記事は見かけないようですのでちょっと気がかりではあります。が、21年には量産に移行する計画なのですから、筆者が入手出来てないだけでベストデータは然るべきところに出ていると思います。

尚、この樹脂電池の市場はエネルギー事業者が長期間に亘って使用する「定置用」が最も狙い目なのでしょうが、「魅力あるがハードルが高い」EV用に対し、「魅力もありハードルも低そう」なこの市場は多くの競合製品が虎視眈々と狙っているはずです。
今のところ製品コスト的には最も有望そうではありますが・・・。
第2、第3の市場も考えて置く必要もありそうです。
全樹脂電池の特徴を活かせる民生用、工業用分野が必ずあるはずです。

今後、最強ライバルと考えられる全固体電池の動向とも合わせ、全樹脂電池の行方を追って行きたいと思います。

 

2019/2/15
三洋化成の「全樹脂電池」 10年後1000億円規模に 3Dプリンターで複雑な形状も

2020/04/13
日本触媒と三洋化成、統合を21年4月に延期

2020/04/16
日産自動車、先進的なリチウムイオンバッテリーの要素技術をAPB株式会社にライセンス供与

2020/04/17
◎日産が「全樹脂電池」で技術供与、ベンチャーが定置用蓄電池向けに量産へ


下記サイトは日産のテクノロジーライセンスの全体がわかるサイトですので
日産のテクノロジーライセンスについて興味ある人はどうぞ

 

 

 

全樹脂電池が量産移行へ

現在のリチウムイオン電池の欠点である発火・燃焼・エネルギー密度の問題を解決すると期待される全固体電池と平行して急遽?登場した全樹脂電池に付いて、前回の記事で当時の情報を纏めて紹介したが、いよいよ大量生産につながるニュースが3月初旬に出た。
そこで今回はおさらいを含めてその状況をご紹介したい。

1.発表内容
 三洋化成工業は4日、電池技術開発のノウハウを持つ子会社APB(東京・千代田)が国内7から第三者割当増資で約80億円を調達すると発表した。APBは福井県越前市で用地と建物を取得し、第1工場を設けた。第1工場の敷地面積は2万3733m2、延床面積は8628m2。2021年に操業を開始し、全樹脂電池の量産技術を早期に確立することを目指す。次世代電池の開発競争で先行する全固体電池などを追い、5~10年後をめどに数千億円規模の事業に育てる狙いだ。
APBは代表取締役である堀江英明氏が、三洋化成工業と共同で開発したバイポーラ積層型のリチウムイオン電池である全樹脂電池(All Polymer Battery)の製造及び販売を行うスタートアップ企業。
出資した7社とはJFEケミカル、JXTGイノベーションパートナーズ、大林組、慶應イノベーション・イニシアティブ1号投資事業有限責任組合、帝人、長瀬産業、横河電機
JFEケミカル:負極材料のハードカーボンの提供と電池開発。
JXTG、長瀬産業:様々な材料の提供。
大林組:ビルなどでの定置用電池の設置。
帝人:ナノカーボンの提供

2.全樹脂電池とは
全樹脂電池はAPBと三洋化成工業が共同開発したバイポーラ積層型リチウムイオン電池で、集電体も含めた電池骨格を全て樹脂材料で構成している。
全樹脂電池には界面活性技術を持つ三洋化成が新開発した樹脂を用いる。活物質に樹脂被覆を施し、樹脂集電体に塗布することで電極を形成している。
特徴としては、従来のリチウムイオン電池と同様の出力を確保しつつ、異常時の急激な発熱や温度上昇を抑制できる点がある。全樹脂電池は釘を打ったりドリルで穴を開けたりしても発火しない
また、独自の製造プロセスにより工程を短縮することで従来のリチウムイオン電池よりも大幅な製造コスト低減リードタイム短縮が図れる。
部品点数が少ないことに加えて、樹脂で構成することで電極を厚膜化し易いためセルを大型化し易く、高いエネルギー密度を実現している。
形状の自由度も高く、「リチウムイオン電池の理想構造」(APB)だとしている。

以下参考サイトからの引用図で説明します。

従来の電極(左)とバイポーラ電極(右)での電流の流れの比較
(従来は電流は電極につながるリード線を通って流れるのに対しパイポーラ型は面全体を通して流れる。)

電池の製造プロセスの比較
(ロールツーロール方式なので工程が少なく生産性がアップし、低コスト化につながる)

電解質の伝導度の比較(リチウムイオンの伝導度(輸率)が常温でも数倍高い)

単セルの構造とモジュールとした状態
(積層するだけで、結線や収納箱が不要なので省スペースとなり、単位体積あたりのエネルギー密度が高くなる)

全樹脂電池モジュール(左)とその内部構造(右)

上記全樹脂電池に関して、形状や生産プロセスはこれまでの情報で判るが、製品(試作品)の静置型電池としての諸性能(特に耐久性)が十分なのかどうかが今一不明なので若干の懸念を持たざるを得ない。今後全樹脂電池に関しては電池性能を主体に注目して行きたい。

 

ところで
先行する競合製品である全固体電池の開発・生産状況については
トヨタ自動車が22年からEV(電気自動車)に搭載するとされているが・・・。
一方小型全固体電池村田製作所TDKは20年中にも量産化する。
また京セラは電解液を電極に練り込んで粘土状にする独自技術を使った新型電池を20年にも本格量産するという。
しかし従来型のリチウムイオン電池もまだまだ改良(不燃化、高性能化)がなされており、更に非リチウム金属を使用する電池も開発・進化中であり、今後の2次電池の技術ニュースに目が離せない。

 

<全樹脂電池関連参考サイト>
日経2020/3/2
三洋化成、福井で全樹脂電池を量産 工場新設を正式発表

R Times 2020年3月4日
APB株式会社 次世代型リチウムイオン電池「全樹脂電池」の開発を行うAPB、約80億円の資金調達を実施

日経2020/3/4
全樹脂電池量産へ7社とタッグ 三洋化成、80億円調達

Motor Fan 2020/03/04
「全樹脂電池」ってなんだ? 次世代型リチウムイオン電池開発でAPBが80億円を調達

大林組 2020年 03月 04日
次世代型リチウムイオン電池「全樹脂電池」の開発を行うAPB社へ出資します

<最新ニュース>
2020/07/20
APB:全樹脂電池を川崎重工の自律型無人潜水機に搭載して実証試験を開始

 

 

 

 

 

 

 

全個体電池の新製法出現。全個体リチウムイオン電池の実用化が早まるか?

現行のリチウムイオン電池の性能を上回る固体電解質を用いた全個体リチウムイオン電池の開発が世界中で競われている。

我が国については、大枠以下の状況であろう。

1.車載用全個体リチウムイオン電池(東工大/トヨタグループ)
東工大の菅野教授が1911年に開発したLPGS系から進化した固体電解質を用いたリチウムイオン電池がEV用途としてトヨタ自動車を先頭に22年の実用化を目指して開発されている。(関連ブログ有り)

2.超小型~小型の全個体電池
既にTDKをはじめとした電装部品メーカーで商品化された(セラチャージ等)。

3.全樹脂リチウムイオン電池
元日産でEVの電池開発に携わった堀江氏が慶応大に移り、ゲルを用いた全樹脂リチウムイイオン電池を開発し、高吸水性ポリマ―メーカーである三洋化成と日本触媒とで共同開発が進んでいる。(前回ブログ)

このような状況の中
ベルギーの研究機関imecが開発しパナソニックも参加する新しい製造法で、安価で大容量の全個体電池が出現し、大型電池の実用化の前倒しが期待されている。

以下日経エレクトロニクス2019.8月号、(日経産業新聞9.27)より抜粋し概要をご紹介する。
その特徴は固体ナノコンポジット電解質(SCE)を開発したことである。

先ず電極の構成として
・正極の形成。これは既存の液体電解質のLiBと同じ。
今は正極にリン酸鉄リチウム(LiFePO)(LFPと表記)を使用。
・負極には金属リチウムLiを使用。
これらは今までと同じだが

imecが開発した電池の最大の特徴はその個体電解質でありその製造プロセスが注目されるものである。
即ち
・液状の電解質を電極に染み込ませた後に乾燥して固化する。
・この固体電解質の主成分はSiO2でありふれた酸化物材料であるが、比表面積が   1400m2/g(活性炭レベル)と極めて高い多孔質になっておりその内壁にイオン液体のLi塩が結合している。
この製造法は、ゲル作成の古い技術と新しい素材であるイオン液体を組み合わせたところに特徴がある。

電池製造の流れ(考サイト1より)

TEOS(オルトケイ酸テトラエチル)イオン液体によるゲル電解質の形成

・まず、TEOSと呼ぶSi系材料をイオン液体中に分散させた後、水を加えて(加水分解して)ゲル化する。
水を除去後、さらに二酸化炭素(CO2)を用いた超臨界乾燥を施す。
すると「エアロゲル」と呼ばれる極めて軽いスポンジ状の固体材料になる。
この方法は80年前からある技術だが、イオン液体を混ぜる点が新規なところ。
これが、上述の電解質が液体から固体になるプロセス。
この構造により、電解質は固体化後も弾力があり、充放電に伴う電極中の活物質の膨張収縮を吸収できるとする。

この電池の特徴は
1.製造
・コバルト等の高価な資源を使わず、従来のLiイオン電池をつくる設備を流用出来るため
低コストで製造が出来る。
大型(A4サイズ)も製造可能。

2.性能
・体積エネルギー密度425ワット時/リットル(以下Wh/Lとする)、この値は現在のLiイオン電池とほぼ同じだが、2024年には1000Wh/Lまで高められるとする。

その根拠としては
・現在用いている正極材料は電位窓約3.5Vのリン酸鉄リチウム(LFP)だが、同5.5Vの正極活物質を使えば約1000Wh/Lも可能となる。(現在のLiBは800wh/Lが限度とされている)
・今回の電解質が高温に強い(320℃まで利用可能)ため、現在の車載用LiBでは必須の冷却システムが不要となり現状でも現在の約2倍の体積エネルギー密度となる。
・充電時間も現在は2時間程掛るが将来大幅に短縮(20分で充電)出来るとしている。
・imecが用いるこの固体電解質のイオン電導率は現在約10mS/cmで東工大/トヨタ自動が開発した電解質と同等の性能とされる。同社はさらにこれを10倍の100mS/cmに引き上げる事を目標としている。 

現在の課題は急速充電の実現。
一般に全個体電池は急速充電に優れた物が多いが、このimecの電池の急速充電特性は液体電解質のLiBと同等かやや低い。速くすると急速に容量が低下する。
この原因として2つが推測されている。
その1.固体電解質がイオン液体とのハイブリッドであること。
その2.Li負極を用いるためデンドライト(樹状突起)ができこれが充放電の律速となっていること。
しかしimecはこの対策として、電極の構造をジャングルジムの様な規則的な空間を備えた
ナノメッシュ電極とすることで制御出来るとしている。 

今後現行リチウムイオン電池の頑張り(さらなる性能向上)と新固体電池の商品化の進展に注目して行きたい。

<参考サイト>
1.imecがA4型5Ahの全固体電池、高伝導率酸化物系電解質で

2.全固体電池の実用化、目前に TDKと日立造船、今年から本格量産 「安全で大容量化」容易に2019.3.25 

3.全固体電池の菅野教授が語る、EVはこう進化する(東工大菅野教授)
次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか(2018年1月17日)

4.全固体リチウムイオン電池の研究開発プロジェクトの第2期が始動
(2018年6月15日)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

5.イオン液体【ウィキペディア】

6.電気伝導度の基礎

 

 

 

新型リチウムイオン電池「全樹脂電池」について、全固体電池と競合するか?

リチウムイオン電池の最大の欠点である発火の可能性がなく、更に小型高性能電池として、全個体電池が注目を集めているのは周知の通りですね。

この個体電池は、現行のリチウムイオン電池の有機液体電解質を無機個体電解質に切り替えることで不燃とし、更に正負の電極の各種改良とともに、量産化対応がなされている。

本命の自動車積載用の大型の全個体リチウムイオン電池は、トヨタ自動車が22年に実用化するとされ、他の自動車会社もその後追随すると予想されている。

他方、小型~超小型の全個体リチウムイオン電池は、IoT用などのセンサー用途として、TDKや自動車部品メーカー等数社が既に製品化し量産を開始している。(セラチャージ

こういった状況のなか最近、全樹脂電池と呼ばれる2次電池が今非常に注目されている。取り上げられることの多い全個体電池の陰に隠れて知らない人も多いかもしれないが、後に示す様にかなり前から研究がされている。

以下全樹脂電池の概要をご紹介する。(内容は専門誌、各種サイト情報を参考にして再構成した。)

1.全樹脂電池とは
「電極を含め全てを樹脂で形成したリチウムイオン2次電池」とされている。
全個体電池が電解質を有機液体から固体電解質を使用したのに対し、全樹脂電池は正極や負極も樹脂製とすることで、製造が容易で、低コストに生産出来、安全性が高く、高エネルギー密度化が可能、更にはリサイクルが容易などの優位性があるとされる。

2.開発の経緯・状況
日産自動車でEVリーフの電池開発を行っていた堀江英明氏が1990年頃考案し、慶応大学へ移籍した後、三洋化成工業(以下三洋化成)と共同開発を始めた(2012)。
その後同氏は低コストの大量生産技術を確立するためのスタートアップAPBを設立した(2018.10)。
これを三洋化成が出資子会社化した(2019.2)。
また負極材料(ハードカーボン)メーカー(JFEケミカル)も出資した。

3.全樹脂電池の基本構造について
1)電極の基本構成
   (日経XTECHより)

全樹脂電池のこれまでの電池と違う最大の特徴は電極の構成であり、
正極または負極の微小な活物質の粒子の表面を電解液を吸わせたゲル状の高分子膜で覆い、それらに粒子状の導電助剤や導電性繊維と混ぜて正極(負極)の合材(ペースト)とする。
そしてそれらをセパレーターで挟んで重ね合わせ、更にそれらの両面に導電性樹脂フィルムの集電体を配した構成である。

2)全樹脂電地の製造方式
ロール状のフィルム(導電性で片方の電極の集電体となるもの)シートを繰り出しながら、順に①枠となるシール材、②正極合材の塗布、③セパレーターの配置、④負極合材の塗布、⑤集電体フィルムを配置するの工程で、上記全樹脂電池の基本であるセルが出来上がる。

工程は基本的にロール・ツー・ロールの方式なので生産性が高く、また従来の工程では必要だった乾燥工程がゲルを使う方式なので不要。そのため処理速度を2倍から4倍にも高めることも可能という。
また合材を厚く塗っても機能するという。(単位面積当りの容量アップになる)

3)構成素材
①負極活物質
これ迄負極にはC(ブラファイト、黒鉛)が使われていたが、最近は容量アップのため黒鉛にSi(シリコン)またはSiO2を加えたものが使用される様になった。しかし体積変化の問題があり未解決。
一方、本全樹脂電池の負極材料には黒鉛(ソフトカーボン)ではなく、ハードカーボン(難黒鉛化炭素)を採用している。ハードカーボンはLi+をより高速に多量取り入れることができる。(後記サイト参照)
負極の容量アップは三洋化成が取り組んでおり、ハードカーボンはJFEケミカルより調達している。(同社もAPBに出資)

②正極活物質
正極材料の詳細は公表されていないが、従来リチウムイオン電池に使われてきた物質と同じものであろう。
三洋化成は正極材の量産と新しい用途の開拓を勧めており、更に正極材の高容量化に他社開発の新技術を取り込む。(Niを多く含む正極材など。)

③電解質
高分子ゲルに含ませて使用する。詳細は不明だが今後は日本触媒(出資決定)が提供することになるである。

④その他
集電体の導電性フィルムの明細は不明。
セル(右)とパック(左)A4サイズ厚さ2mm、平均電圧3.7V

4.使用方法

1セルをパックにした製品よりも複数のセルを組み合わせて大容量電池として使う場合にその特徴が発揮される。
すなわち正と負の集電体面を合わせて重ね合わせるだけでよく、更に通常の電池の組み合わせでは必要な配線や空間スペースが不要である。

5.当面の価格目標
1ワット時当たり15円。(定置用電池やEV用2次電池の長期的な目標は10円/WH)

6.用途
今の所、ビルや発電所などの大型静置型電源等の既存蓄電池の代替が最も有望と考えられている。
新規用途として、ディスプレーの背面、ロボットの筐体、壁面への埋込なども提案されている。
更にペーストを使い3Dプリンターで形成が可能なため、各種形状の電池が製作可能であり、安全性が保証されていれば、生活関連や医療など多種多用な場所での使用が考えられる。
EV用途はハードルが高いようである。

7.今後の予定
開発者の慶大の堀江英明教授(APB社長)と三洋化成工業は2020年に実用化し、2021年秋にも「全樹脂リチウム電池」の生産を開始するとされる。

最後に
これまで発表された部分についてはいいこと尽くめであるが、計画通り2021年の生産移行・量産化ができるのであろうか?

車載用や大型蓄電池では充放電時間や耐久性(これが一番重要で困難)のデータが不明なので難しそうだが、一般用として低価格、マルチ形状対応可能等の優位性をいかした展開がなされるのではないかと思われる。

何れにせよ、今後公開される各種データと状況の推移に留意していきたい。

<参考サイト>
*1:APB社について
*2:カーボンについて
・JFEケミカル、APB株式会社」へ出資
ハードカーボンとは
・今後はこれ?球晶黒鉛 負極材
*3:三洋化成の展望
 10年後1000億円規模に 3Dプリンターで複雑な形状も
2030年に“1兆円企業”に、三洋化成と日本触媒の統合効果

開発進む次世代電池

現在リチウムイオン電池が全盛ではあるが、いくつかの問題や課題(火災の危険性、充電時間が短い、容量が小さい、資源問題等)があり、これらを乗り越える次世代電池の開発競争が激しくなっている。
以下その概要は以下の通り。

電池の種類 特徴 用 途 現在の課題 実用化の目標
全個体電池(硫化物型) 急速充電が可能  

電気自動車(EV)

空気に触れるとガスが生じる 2020年代前半
(トヨタは過去22年としたが)
全個体電池(酸化物型) 安全で扱い易い イオンの動きが遅い(10分の1) 2030年代
(小型はTDK等で先行試生産中)
ナトリウムイオン電池 資源が豊富
安価で高い出力
定置型大型蓄電池

(風力発電用)
(太陽光発電用)

電池が重い
(EVには不向き)
数年後
リチウム硫黄電池 安価で高容量 耐久性
(硫黄が溶け出し劣化し易い)
2030年以降
リチウム空気電池 小型で軽量 ドローン
ウエアラブル端末
水分に弱い
寿命が短い
2025年

1.全個体電池
2011年東工大菅野教授が既存の液体電解質の性能を上回る固体電解質を発見してからその後急速に研究が進展した。ただし硫化物系のため、空気に触れるとガスが生じる等の問題がある。これを解決できる酸化物系の開発が進んでいるがイオンの動きが遅い等の問題があり実用化は硫化物系よりだいぶ先になるとみられている。
電気自動車(EV)用途に、トヨタやパナソニックが開発中。
しかし非自動用としてセンサーやウエアラブル端末には、酸化物系の小型製品が既にTDKやFDKで試生産されている。

全個体電池に関しては別途また取り上げたい。

2.ナトリウムイオン電池
ナトリウムイオン電池の最大の魅力は安さだ。資源は普遍的に存在し枯渇の心配はない。また電極はリチウムがコバルト等の高価な金属を使用するのに対し、安い鉄などが使える。課題は電池が重くEVに乗せると後続距離を伸ばし難いこと。
したがって移動用ではなく自然エネルギーで作った電気を蓄える定置型の大型電池が有力。実用化も数年後と見られている。

3.リチウム硫黄電池
安価な硫黄を使うリチウム硫黄電池も自動車用は不向きで、ナトリウムイオン電池と同様定置型が適している。コストは4分の1になるとされるが、電極の硫黄が溶け出しやすいなど耐久性が問題。

4.リチウム空気電池
一時電池としては既に販売されているが、二次電池として現在開発中。
小型電池として有望。空気中の酸素で充放電する。ドローンやウエアラブル端末等の用途が期待されている。18年4月ソフトバンクとNIMS(物材機構)が25年の実用化を目指し共同研究を始めた。

最後に
現在全盛の液体電解質を用いたリチウムイオン電池の後継として全個体電池を始めとして
各種の電池が研究・開発されているが、現行電池の改良も進んでいるため、中型以上の電池については、完全に置き換わり得る電池が出てくるかまだ予断を許さない。
現在全個体電池が最も注目されているが、IOT時代を見据え、既に大量の超小型品が生産されている現状を見ると、まず超小型全個体電池が最も早く生産拡大・普及していくのでは無いだろうか。

 

次世代電池サイト
その1.(NEDO)
その2.(JAIMA)
その3.(JST)
その4.(日経XTEX)

 

 

 

水と窒素からアンモニアを造る

アンモニアに関してはこれまで本ブログで何回か取り上げたが、合成法に関してもハーバーボッシュ法(高温・高圧下の反応で莫大なエネルギーと巨大装置が必要)に代わる方法として、東工大の細野秀雄教授らの「エレクトライド触媒」を用いる方法について取り上げた。
東工大のこの方法は、現在味の素などと協力して2021年をめどに実用化を目指し研究されている。ここから

一方今回新たに更に画期的と思われる方法が開発されたのでご紹介したい。

常温・常圧で合成するのは上記方法と同じだが、水素原料がなんと水なのである。
触媒と還元剤の存在下、水を窒素と混ぜるだけでアンモニアができるのだそうだ

要旨
東大の西林仁昭教授らは、常温・常圧の条件下でアンモニアを合成する手法の研究に取り組んでいるが、今回新たな手法を開発した。還元剤としてこれまでの高価な薬剤から有機化学でよく使われるヨウ化サマリウム(SmIを使い触媒としてモリブデン化合物を用い
従来の200倍の大幅に効率の高い方法を開発した。

                      

 

今後は一度使用の還元剤のヨウ化サマリウムの再利用方法を開発すると共に、
日産化学と協力して大型プラントでの応用を目指す

 

最後に
アンモニアは肥料や火薬や医薬品の原料になるだけでなく、自身が燃料となることや、水素の供給源として運搬や貯蔵に便利なことから、水素社会の一翼を担う裏方として、またはアンモニアが主役となるアンモニア社会となる可能性を秘めているといわれている。

 

<参考サイト>
◎モリブデン触媒に関して
・世界最高の活性を示すアンモニア合成触媒の開発
東京大学 西林研究室

◎ヨウ化サマリウム(SmI2)について
強い一電子還元剤であり、例えば水を速やかに還元して水素に変える。
ウィキペディア

 

 

 

 

 

 

 

 

将来は再生エネ水素によるアンモニア発電が主流になるか?

アンモニア(NH3)が非常に注目されています。

アンモニアは現在ハーバーボッシュ法によって大量に生産されその大部分は肥料として利用されていますが、その他食品、医薬品などの原料として重要な位置づけにあります。

しかし今アンモニアの次の特長が大いに注目されています。
1.水素のキャリヤー(運搬体)として優れている
2.燃やすことができ、燃やしても炭酸ガスを出さない
3.火力発電に使用できる

1の水素のキャリヤーとして注目されているのは、
①アンモニア(NH3)がその分子の中に窒素の3倍の水素原子を持つ
②アンモニアが液化しやすく、取り扱いやすい
③アンモニアが肥料製造用等の通常のインフラでの取扱(サプライチェーン)が確立されている等のためです。

純粋な水素のままだと、高圧ガスとして丈夫なガスタンクに収納するか、液化の為多大なエネルギーをかけて零下153度にしなくてはならずその運搬にも特別な容器が必要。

アンモニア以外のキャリアーを使う有望な方法については、
現在千代田加工建設が主体となって行っている、スペラ水素(トルエンに水素を付加しヘメチルシクロヘキサンMCHとする)があるがこれについては以前のブログご参照。

アンモニアの原料となる水素の製造方法はいろいろあるが、化石燃料からだと炭酸ガスが発生する

炭酸ガスを出さない製造方法としては水の電気分解があり、その電気として、太陽光、風力などの再生可能エネルギーや余剰エネルギーが期待されている。

アンモニア発電の現状を概括
非常にわかり易く書かれた添付サイトの記事を読めば一目瞭然ではあるが敢えてまとめると、
1.日揮産総研は昨年10月、再生可能エネルギーによる水素を用いたアンモニア合成とそのアンモニアによる発電世界で初めて成功したと発表した。

2.全体の流れは、
①再生可能エネルギー(太陽光)による電気で水を分解し水素を生成
②この水素と窒素を新開発の触媒を使って反応させアンモニアを合成
③そのアンモニアだけを燃料としてガスタービンで発電

3.検証結果
①開発した新触媒が従来よりも低温・低圧下(50~80気圧)でもアンモニアを製造できること。
②再生可能エネルギーの出力(水素供給量)の変動に対しても機能が劣化せず、アンモニア製造量の変動に対応できることが検証できたこと。
(当初の実証試験では、高圧水素ボンベの水素を使用、その後敷地内の太陽光発電による水素使用)
新触媒はルテニウム酸化物で、従来の炭素系担体を用いたルテニウム触媒に比べて安定性に優れている
太陽光で作った水素と新触媒で合成したアンモニアを燃料としたガスタービンで47kwを発電した。

今後
日揮は2020年代半ばを目処にアンモニア発電技術の実用化を目指す。

最後に
地球温暖化の最大の原因とされる二酸化炭素の削減が叫ばれているが、その対策として
1.全く発生しない新規なプロセスを開発する
(上述のアンモニア火力発電、アンモニア燃料電池、電解水素による各種物品製造等)
2.発生量を減らすプロセスに改善・変更する
3.発生した炭酸ガスを原料とする工業の創生
4.発生した炭酸ガスの地中封入CSS
私は3が最も効果があると思っている。これについては後日現状を紹介したい。

<参照サイト>
アンモニア合成試験装置完成(日揮)

低温・低圧でアンモニアを合成する触媒の開発(産総研)

再生エネルギー由来の水素を用いたアンモニア合成と発電に世界で初めて成功(日揮)

 

 

 

 

水素社会での水素の輸送と貯蔵の主力はMCH法になるか

水素は燃えても水しか出さない究極のクリーンエネルギーのため
今後水素エネルギーが主体のいわゆる水素社会となることが予想されているが、
そのためには大量の水素の製造、輸送、貯蔵方法の確立が必要である。

現在水素の製造については
①天然ガスの副生、②化石燃料の分解、③水の電気分解
等各種検討されている。

③の水の電気分解については、近年特に再生エネルギー特に風力発電所の余った電力の利用が検討されている。
現状では、水を電気分解した後の粗い水素ガスは不純物(酸素等)を含んでいるため、やや複雑な精製工程が必要となっている。(千代田化工建設で2019年2月を目処に技術検証中

次に大量の水素ガスの運搬・貯蔵方法に付いては、
①水素を極低温(-253度)に冷却して液化し液体水素とする(川崎重工)、
②水素と窒素を触媒下反応させてアンモニアとする(日揮、IHI)、
③水素をトルエンと反応させてメチルシクロヘキサン(MCH)とする(千代田加工建設)
等の方法が検討されている。

以下本ブログの趣旨である③の方法に付いて記す。(①と②については後日取り上げる)

水素をトルエンと反応させMCHとする方法は体積が500分の1となり、かつ常温・常圧で液体であり、一般的な石油輸送設備で行えるため現在最も有力な方法と考えられている。

ただし、これを運んだ後使用時には逆反応で水素を取り出す必要があり、この反応には触媒が必要で、従来2、3日の耐久性しかなかったものを、千代田加工が8000時間の耐久性ある触媒を開発し、この方法が最有力候補として浮上している。

<方法の概要>は以下の通り。
まず全体のフローは以下の図の通り。(千代田加工のHPより)

1)まず各種方法で製造された水素は、トルエンと反応させMCHメチルシクロヘキサン)とする。
つまりトルエンの2重結合の部分に水素を付加し飽和炭化水素のMCHにする。
すると水素の体積は500分の1となりこの液体の取扱も非常に容易になる。
MCHは日本の消防法では、危険物第4類・第1石油類に該当する
(MCHはトルエンに比べ毒性が低く、有機溶剤中毒予防規則の対象外)

2)従って運搬・貯蔵は常圧・常温で既にある一般的な石油輸送設備・石油タンクで行える。
3)本法の技術の核がMCHから気体の水素の取り出しを行う触媒技術
千代田加工は触媒性能が従来2~3日だったのを2年程度継続しても利用効率が落ちない触媒の開発に成功し本法の実用化の目処が立つようになった。
そこで千代田加工はこのMCHを「スペラ水素」と名付けて事業化を目指している。

<参考サイト>
SPERA水素システムについて
動画スペラ水素

上述した様に水素の運搬・貯蔵は他社でも検討している。

1)川崎重工
水素を摂氏マイナス253度に冷やして液体水素とする方法を採用し、
専用の設備や運搬船を開発している。
◯「水素社会の未来を切り開く」:
-253度の液体水素を6000kmも運搬、水素社会を支える専用船が実現

2)日揮
水素と窒素を触媒反応させて作ったアンモニアを水素の運搬手段として活用する手法の実証実験を進めている。

<参考資料>
経済産業省 第9回水素・燃料電池戦略協議会向け資料

 

<付記>
なぜ水素を付加するキャリヤーがトルエンなのか。
トルエンのメチル基がないベンゼンやまたベンゼンが2個のナフタレンの方がよさそうだが?
確かにMCHの水素の貯蔵密度は理論上47.0kg-H2/m3であり、ベンゼン←→シクロヘキサン(56.0kg-H2/m3)やナフタレン←→デカリン(カヒドロナフタレン)(65.4kg-H2/m3)に比べやや劣るものの、
液体の状態を維持できる温度範囲が広い利点を持つため
ウィキベディア)より