全個体電池の新製法出現。全個体リチウムイオン電池の実用化が早まるか?

現行のリチウムイオン電池の性能を上回る固体電解質を用いた全個体リチウムイオン電池の開発が世界中で競われている。

我が国については、大枠以下の状況であろう。

1.車載用全個体リチウムイオン電池(東工大/トヨタグループ)
東工大の菅野教授が1911年に開発したLPGS系から進化した固体電解質を用いたリチウムイオン電池がEV用途としてトヨタ自動車を先頭に22年の実用化を目指して開発されている。(関連ブログ有り)

2.超小型~小型の全個体電池
既にTDKをはじめとした電装部品メーカーで商品化された(セラチャージ等)。

3.全樹脂リチウムイオン電池
元日産でEVの電池開発に携わった堀江氏が慶応大に移り、ゲルを用いた全樹脂リチウムイイオン電池を開発し、高吸水性ポリマ―メーカーである三洋化成と日本触媒とで共同開発が進んでいる。(前回ブログ)

このような状況の中
ベルギーの研究機関imecが開発しパナソニックも参加する新しい製造法で、安価で大容量の全個体電池が出現し、大型電池の実用化の前倒しが期待されている。

以下日経エレクトロニクス2019.8月号、(日経産業新聞9.27)より抜粋し概要をご紹介する。
その特徴は固体ナノコンポジット電解質(SCE)を開発したことである。

先ず電極の構成として
・正極の形成。これは既存の液体電解質のLiBと同じ。
今は正極にリン酸鉄リチウム(LiFePO)(LFPと表記)を使用。
・負極には金属リチウムLiを使用。
これらは今までと同じだが

imecが開発した電池の最大の特徴はその個体電解質でありその製造プロセスが注目されるものである。
即ち
・液状の電解質を電極に染み込ませた後に乾燥して固化する。
・この固体電解質の主成分はSiO2でありふれた酸化物材料であるが、比表面積が   1400m2/g(活性炭レベル)と極めて高い多孔質になっておりその内壁にイオン液体のLi塩が結合している。
この製造法は、ゲル作成の古い技術と新しい素材であるイオン液体を組み合わせたところに特徴がある。

電池製造の流れ(考サイト1より)

TEOS(オルトケイ酸テトラエチル)イオン液体によるゲル電解質の形成

・まず、TEOSと呼ぶSi系材料をイオン液体中に分散させた後、水を加えて(加水分解して)ゲル化する。
水を除去後、さらに二酸化炭素(CO2)を用いた超臨界乾燥を施す。
すると「エアロゲル」と呼ばれる極めて軽いスポンジ状の固体材料になる。
この方法は80年前からある技術だが、イオン液体を混ぜる点が新規なところ。
これが、上述の電解質が液体から固体になるプロセス。
この構造により、電解質は固体化後も弾力があり、充放電に伴う電極中の活物質の膨張収縮を吸収できるとする。

この電池の特徴は
1.製造
・コバルト等の高価な資源を使わず、従来のLiイオン電池をつくる設備を流用出来るため
低コストで製造が出来る。
大型(A4サイズ)も製造可能。

2.性能
・体積エネルギー密度425ワット時/リットル(以下Wh/Lとする)、この値は現在のLiイオン電池とほぼ同じだが、2024年には1000Wh/Lまで高められるとする。

その根拠としては
・現在用いている正極材料は電位窓約3.5Vのリン酸鉄リチウム(LFP)だが、同5.5Vの正極活物質を使えば約1000Wh/Lも可能となる。(現在のLiBは800wh/Lが限度とされている)
・今回の電解質が高温に強い(320℃まで利用可能)ため、現在の車載用LiBでは必須の冷却システムが不要となり現状でも現在の約2倍の体積エネルギー密度となる。
・充電時間も現在は2時間程掛るが将来大幅に短縮(20分で充電)出来るとしている。
・imecが用いるこの固体電解質のイオン電導率は現在約10mS/cmで東工大/トヨタ自動が開発した電解質と同等の性能とされる。同社はさらにこれを10倍の100mS/cmに引き上げる事を目標としている。 

現在の課題は急速充電の実現。
一般に全個体電池は急速充電に優れた物が多いが、このimecの電池の急速充電特性は液体電解質のLiBと同等かやや低い。速くすると急速に容量が低下する。
この原因として2つが推測されている。
その1.固体電解質がイオン液体とのハイブリッドであること。
その2.Li負極を用いるためデンドライト(樹状突起)ができこれが充放電の律速となっていること。
しかしimecはこの対策として、電極の構造をジャングルジムの様な規則的な空間を備えた
ナノメッシュ電極とすることで制御出来るとしている。 

今後現行リチウムイオン電池の頑張り(さらなる性能向上)と新固体電池の商品化の進展に注目して行きたい。

<参考サイト>
1.imecがA4型5Ahの全固体電池、高伝導率酸化物系電解質で

2.全固体電池の実用化、目前に TDKと日立造船、今年から本格量産 「安全で大容量化」容易に2019.3.25 

3.全固体電池の菅野教授が語る、EVはこう進化する(東工大菅野教授)
次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか(2018年1月17日)

4.全固体リチウムイオン電池の研究開発プロジェクトの第2期が始動
(2018年6月15日)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

5.イオン液体【ウィキペディア】

6.電気伝導度の基礎

 

 

 

新型リチウムイオン電池、全樹脂電池について、全個体電池と競合するか?

リチウムイオン電池の最大の欠点である発火の可能性がなく、更に小型高性能電池として、全個体電池が注目を集めているのは周知の通りですね。

この個体電池は、現行のリチウムイオン電池の有機液体電解質を無機個体電解質に切り替えることで不燃とし、更に正負の電極の各種改良とともに、量産化対応がなされている。

本命の自動車積載用の大型の全個体リチウムイオン電池は、トヨタ自動車が22年に実用化するとされ、他の自動車会社もその後追随すると予想されている。

他方、小型~超小型の全個体リチウムイオン電池は、IoT用などのセンサー用途として、TDKや自動車部品メーカー等数社が既に製品化し量産を開始している。(セラチャージ

こういった状況のなか最近、全樹脂電池と呼ばれる2次電池が今非常に注目されている。取り上げられることの多い全個体電池の陰に隠れて知らない人も多いかもしれないが、後に示す様にかなり前から研究がされている。

以下全樹脂電池の概要をご紹介する。(内容は専門誌、各種サイト情報を参考にして再構成した。)

1.全樹脂電池とは
「電極を含め全てを樹脂で形成したリチウムイオン2次電池」とされている。
全個体電池が電解質を有機液体から固体電解質を使用したのに対し、全樹脂電池は正極や負極も樹脂製とすることで、製造が容易で、低コストに生産出来、安全性が高く、高エネルギー密度化が可能、更にはリサイクルが容易などの優位性があるとされる。

2.開発の経緯・状況
日産自動車でEVリーフの電池開発を行っていた堀江英明氏が1990年頃考案し、慶応大学へ移籍した後、三洋化成工業(以下三洋化成)と共同開発を始めた(2012)。
その後同氏は低コストの大量生産技術を確立するためのスタートアップAPBを設立した(2018.10)。
これを三洋化成が出資子会社化した(2019.2)。
また負極材料(ハードカーボン)メーカー(JFEケミカル)も出資した。

3.全樹脂電池の基本構造について
1)電極の基本構成

(日経XTECHより)

全樹脂電池のこれまでの電池と違う最大の特徴は電極の構成であり、
正極または負極の微小な活物質の粒子の表面を電解液を吸わせたゲル状の高分子膜で覆い、それらに粒子状の導電助剤や導電性繊維と混ぜて正極(負極)の合材(ペースト)とする。
そしてそれらをセパレーターで挟んで重ね合わせ、更にそれらの両面に導電性樹脂フィルムの集電体を配した構成である。

2)全樹脂電地の製造方式
ロール状のフィルム(導電性で片方の電極の集電体となるもの)シートを繰り出しながら、順に①枠となるシール材、②正極合材の塗布、③セパレーターの配置、④負極合材の塗布、⑤集電体フィルムを配置するの工程で、上記全樹脂電池の基本であるセルが出来上がる。

工程は基本的にロール・ツー・ロールの方式なので生産性が高く、また従来の工程では必要だった乾燥工程がゲルを使う方式なので不要。そのため処理速度を2倍から4倍にも高めることも可能という。
また合材を厚く塗っても機能するという。(単位面積当りの容量アップになる)

3)構成素材
①負極活物質
これ迄負極にはC(ブラファイト、黒鉛)が使われていたが、最近は容量アップのため黒鉛にSi(シリコン)またはSiO2を加えたものが使用される様になった。しかし体積変化の問題があり未解決。
一方、本全樹脂電池の負極材料には黒鉛(ソフトカーボン)ではなく、ハードカーボン(難黒鉛化炭素)を採用している。ハードカーボンはLi+をより高速に多量取り入れることができる。(後記サイト参照)
負極の容量アップは三洋化成が取り組んでおり、ハードカーボンはJFEケミカルより調達している。(同社もAPBに出資)

②正極活物質
正極材料の詳細は公表されていないが、従来リチウムイオン電池に使われてきた物質と同じものであろう。
三洋化成は正極材の量産と新しい用途の開拓を勧めており、更に正極材の高容量化に他社開発の新技術を取り込む。(Niを多く含む正極材など。)

③電解質
高分子ゲルに含ませて使用する。詳細は不明だが今後は日本触媒(出資決定)が提供することになるである。

④その他
集電体の導電性フィルムの明細は不明。


セル(右)とパック(左)A4サイズ厚さ2mm、平均電圧3.7V

4.使用方法

1セルをパックにした製品よりも複数のセルを組み合わせて大容量電池として使う場合にその特徴が発揮される。
すなわち正と負の集電体面を合わせて重ね合わせるだけでよく、更に通常の電池の組み合わせでは必要な配線や空間スペースが不要である。

5.当面の価格目標
1ワット時当たり15円。(定置用電池やEV用2次電池の長期的な目標は10円/WH)

6.用途
今の所、ビルや発電所などの大型静置型電源等の既存蓄電池の代替が最も有望と考えられている。
新規用途として、ディスプレーの背面、ロボットの筐体、壁面への埋込なども提案されている。
更にペーストを使い3Dプリンターで形成が可能なため、各種形状の電池が製作可能であり、安全性が保証されていれば、生活関連や医療など多種多用な場所での使用が考えられる。
EV用途はハードルが高いようである。

7.今後の予定
開発者の慶大の堀江英明教授(APB社長)と三洋化成工業は2020年に実用化し、2021年秋にも「全樹脂リチウム電池」の生産を開始するとされる。

最後に
これまで発表された部分についてはいいこと尽くめであるが、計画通り2021年の生産移行・量産化ができるのであろうか?

車載用や大型蓄電池では充放電時間や耐久性(これが一番重要で困難)のデータが不明なので難しそうだが、一般用として低価格、マルチ形状対応可能等の優位性をいかした展開がなされるのではないかと思われる。

何れにせよ、今後公開される各種データと状況の推移に留意していきたい。

<参考サイト>
*1:APB社について
*2:カーボンについて
・JFEケミカル、APB株式会社」へ出資
ハードカーボンとは
・今後はこれ?球晶黒鉛 負極材
*3:三洋化成の展望
 10年後1000億円規模に 3Dプリンターで複雑な形状も
2030年に“1兆円企業”に、三洋化成と日本触媒の統合効果

 

 

 

 

開発進む次世代電池

現在リチウムイオン電池が全盛ではあるが、いくつかの問題や課題(火災の危険性、充電時間が短い、容量が小さい、資源問題等)があり、これらを乗り越える次世代電池の開発競争が激しくなっている。
以下その概要は以下の通り。

電池の種類 特徴 用 途 現在の課題 実用化の目標
全個体電池(硫化物型) 急速充電が可能  

電気自動車(EV)

空気に触れるとガスが生じる 2020年代前半
(トヨタは過去22年としたが)
全個体電池(酸化物型) 安全で扱い易い イオンの動きが遅い(10分の1) 2030年代
(小型はTDK等で先行試生産中)
ナトリウムイオン電池 資源が豊富
安価で高い出力
定置型大型蓄電池

(風力発電用)
(太陽光発電用)

電池が重い
(EVには不向き)
数年後
リチウム硫黄電池 安価で高容量 耐久性
(硫黄が溶け出し劣化し易い)
2030年以降
リチウム空気電池 小型で軽量 ドローン
ウエアラブル端末
水分に弱い
寿命が短い
2025年

1.全個体電池
2011年東工大菅野教授が既存の液体電解質の性能を上回る固体電解質を発見してからその後急速に研究が進展した。ただし硫化物系のため、空気に触れるとガスが生じる等の問題がある。これを解決できる酸化物系の開発が進んでいるがイオンの動きが遅い等の問題があり実用化は硫化物系よりだいぶ先になるとみられている。
電気自動車(EV)用途に、トヨタやパナソニックが開発中。
しかし非自動用としてセンサーやウエアラブル端末には、酸化物系の小型製品が既にTDKやFDKで試生産されている。

全個体電池に関しては別途また取り上げたい。

2.ナトリウムイオン電池
ナトリウムイオン電池の最大の魅力は安さだ。資源は普遍的に存在し枯渇の心配はない。また電極はリチウムがコバルト等の高価な金属を使用するのに対し、安い鉄などが使える。課題は電池が重くEVに乗せると後続距離を伸ばし難いこと。
したがって移動用ではなく自然エネルギーで作った電気を蓄える定置型の大型電池が有力。実用化も数年後と見られている。

3.リチウム硫黄電池
安価な硫黄を使うリチウム硫黄電池も自動車用は不向きで、ナトリウムイオン電池と同様定置型が適している。コストは4分の1になるとされるが、電極の硫黄が溶け出しやすいなど耐久性が問題。

4.リチウム空気電池
一時電池としては既に販売されているが、二次電池として現在開発中。
小型電池として有望。空気中の酸素で充放電する。ドローンやウエアラブル端末等の用途が期待されている。18年4月ソフトバンクとNIMS(物材機構)が25年の実用化を目指し共同研究を始めた。

最後に
現在全盛の液体電解質を用いたリチウムイオン電池の後継として全個体電池を始めとして
各種の電池が研究・開発されているが、現行電池の改良も進んでいるため、中型以上の電池については、完全に置き換わり得る電池が出てくるかまだ予断を許さない。
現在全個体電池が最も注目されているが、IOT時代を見据え、既に大量の超小型品が生産されている現状を見ると、まず超小型全個体電池が最も早く生産拡大・普及していくのでは無いだろうか。

 

次世代電池サイト
その1.(NEDO)
その2.(JAIMA)
その3.(JST)
その4.(日経XTEX)

 

 

 

水と窒素からアンモニアを造る

アンモニアに関してはこれまで本ブログで何回か取り上げたが、合成法に関してもハーバーボッシュ法(高温・高圧下の反応で莫大なエネルギーと巨大装置が必要)に代わる方法として、東工大の細野秀雄教授らの「エレクトライド触媒」を用いる方法について取り上げた。
東工大のこの方法は、現在味の素などと協力して2021年をめどに実用化を目指し研究されている。ここから

一方今回新たに更に画期的と思われる方法が開発されたのでご紹介したい。

常温・常圧で合成するのは上記方法と同じだが、水素原料がなんと水なのである。
触媒と還元剤の存在下、水を窒素と混ぜるだけでアンモニアができるのだそうだ

要旨
東大の西林仁昭教授らは、常温・常圧の条件下でアンモニアを合成する手法の研究に取り組んでいるが、今回新たな手法を開発した。還元剤としてこれまでの高価な薬剤から有機化学でよく使われるヨウ化サマリウム(SmIを使い触媒としてモリブデン化合物を用い
従来の200倍の大幅に効率の高い方法を開発した。

                      

 

今後は一度使用の還元剤のヨウ化サマリウムの再利用方法を開発すると共に、
日産化学と協力して大型プラントでの応用を目指す

 

最後に
アンモニアは肥料や火薬や医薬品の原料になるだけでなく、自身が燃料となることや、水素の供給源として運搬や貯蔵に便利なことから、水素社会の一翼を担う裏方として、またはアンモニアが主役となるアンモニア社会となる可能性を秘めているといわれている。

 

<参考サイト>
◎モリブデン触媒に関して
・世界最高の活性を示すアンモニア合成触媒の開発
東京大学 西林研究室

◎ヨウ化サマリウム(SmI2)について
強い一電子還元剤であり、例えば水を速やかに還元して水素に変える。
ウィキペディア

 

 

 

 

 

 

 

 

将来は再生エネ水素によるアンモニア発電が主流になるか?

アンモニア(NH3)が非常に注目されています。

アンモニアは現在ハーバーボッシュ法によって大量に生産されその大部分は肥料として利用されていますが、その他食品、医薬品などの原料として重要な位置づけにあります。

しかし今アンモニアの次の特長が大いに注目されています。
1.水素のキャリヤー(運搬体)として優れている
2.燃やすことができ、燃やしても炭酸ガスを出さない
3.火力発電に使用できる

1の水素のキャリヤーとして注目されているのは、
①アンモニア(NH3)がその分子の中に窒素の3倍の水素原子を持つ
②アンモニアが液化しやすく、取り扱いやすい
③アンモニアが肥料製造用等の通常のインフラでの取扱(サプライチェーン)が確立されている等のためです。

純粋な水素のままだと、高圧ガスとして丈夫なガスタンクに収納するか、液化の為多大なエネルギーをかけて零下153度にしなくてはならずその運搬にも特別な容器が必要。

アンモニア以外のキャリアーを使う有望な方法については、
現在千代田加工建設が主体となって行っている、スペラ水素(トルエンに水素を付加しヘメチルシクロヘキサンMCHとする)があるがこれについては以前のブログご参照。

アンモニアの原料となる水素の製造方法はいろいろあるが、化石燃料からだと炭酸ガスが発生する

炭酸ガスを出さない製造方法としては水の電気分解があり、その電気として、太陽光、風力などの再生可能エネルギーや余剰エネルギーが期待されている。

アンモニア発電の現状を概括
非常にわかり易く書かれた添付サイトの記事を読めば一目瞭然ではあるが敢えてまとめると、
1.日揮産総研は昨年10月、再生可能エネルギーによる水素を用いたアンモニア合成とそのアンモニアによる発電世界で初めて成功したと発表した。

2.全体の流れは、
①再生可能エネルギー(太陽光)による電気で水を分解し水素を生成
②この水素と窒素を新開発の触媒を使って反応させアンモニアを合成
③そのアンモニアだけを燃料としてガスタービンで発電

3.検証結果
①開発した新触媒が従来よりも低温・低圧下(50~80気圧)でもアンモニアを製造できること。
②再生可能エネルギーの出力(水素供給量)の変動に対しても機能が劣化せず、アンモニア製造量の変動に対応できることが検証できたこと。
(当初の実証試験では、高圧水素ボンベの水素を使用、その後敷地内の太陽光発電による水素使用)
新触媒はルテニウム酸化物で、従来の炭素系担体を用いたルテニウム触媒に比べて安定性に優れている
太陽光で作った水素と新触媒で合成したアンモニアを燃料としたガスタービンで47kwを発電した。

今後
日揮は2020年代半ばを目処にアンモニア発電技術の実用化を目指す。

最後に
地球温暖化の最大の原因とされる二酸化炭素の削減が叫ばれているが、その対策として
1.全く発生しない新規なプロセスを開発する
(上述のアンモニア火力発電、アンモニア燃料電池、電解水素による各種物品製造等)
2.発生量を減らすプロセスに改善・変更する
3.発生した炭酸ガスを原料とする工業の創生
4.発生した炭酸ガスの地中封入CSS
私は3が最も効果があると思っている。これについては後日現状を紹介したい。

<参照サイト>
アンモニア合成試験装置完成(日揮)

低温・低圧でアンモニアを合成する触媒の開発(産総研)

再生エネルギー由来の水素を用いたアンモニア合成と発電に世界で初めて成功(日揮)

 

 

 

 

水素社会での水素の輸送と貯蔵の主力はMCH法になるか

水素は燃えても水しか出さない究極のクリーンエネルギーのため
今後水素エネルギーが主体のいわゆる水素社会となることが予想されているが、
そのためには大量の水素の製造、輸送、貯蔵方法の確立が必要である。

現在水素の製造については
①天然ガスの副生、②化石燃料の分解、③水の電気分解
等各種検討されている。

③の水の電気分解については、近年特に再生エネルギー特に風力発電所の余った電力の利用が検討されている。
現状では、水を電気分解した後の粗い水素ガスは不純物(酸素等)を含んでいるため、やや複雑な精製工程が必要となっている。(千代田化工建設で2019年2月を目処に技術検証中

次に大量の水素ガスの運搬・貯蔵方法に付いては、
①水素を極低温(-253度)に冷却して液化し液体水素とする(川崎重工)、
②水素と窒素を触媒下反応させてアンモニアとする(日揮、IHI)、
③水素をトルエンと反応させてメチルシクロヘキサン(MCH)とする(千代田加工建設)
等の方法が検討されている。

以下本ブログの趣旨である③の方法に付いて記す。(①と②については後日取り上げる)

水素をトルエンと反応させMCHとする方法は体積が500分の1となり、かつ常温・常圧で液体であり、一般的な石油輸送設備で行えるため現在最も有力な方法と考えられている。

ただし、これを運んだ後使用時には逆反応で水素を取り出す必要があり、この反応には触媒が必要で、従来2、3日の耐久性しかなかったものを、千代田加工が8000時間の耐久性ある触媒を開発し、この方法が最有力候補として浮上している。

<方法の概要>は以下の通り。
まず全体のフローは以下の図の通り。(千代田加工のHPより)

1)まず各種方法で製造された水素は、トルエンと反応させMCHメチルシクロヘキサン)とする。
つまりトルエンの2重結合の部分に水素を付加し飽和炭化水素のMCHにする。
すると水素の体積は500分の1となりこの液体の取扱も非常に容易になる。
MCHは日本の消防法では、危険物第4類・第1石油類に該当する
(MCHはトルエンに比べ毒性が低く、有機溶剤中毒予防規則の対象外)

2)従って運搬・貯蔵は常圧・常温で既にある一般的な石油輸送設備・石油タンクで行える。
3)本法の技術の核がMCHから気体の水素の取り出しを行う触媒技術
千代田加工は触媒性能が従来2~3日だったのを2年程度継続しても利用効率が落ちない触媒の開発に成功し本法の実用化の目処が立つようになった。
そこで千代田加工はこのMCHを「スペラ水素」と名付けて事業化を目指している。

<参考サイト>
SPERA水素システムについて
動画スペラ水素

上述した様に水素の運搬・貯蔵は他社でも検討している。

1)川崎重工
水素を摂氏マイナス253度に冷やして液体水素とする方法を採用し、
専用の設備や運搬船を開発している。
◯「水素社会の未来を切り開く」:
-253度の液体水素を6000kmも運搬、水素社会を支える専用船が実現

2)日揮
水素と窒素を触媒反応させて作ったアンモニアを水素の運搬手段として活用する手法の実証実験を進めている。

<参考資料>
経済産業省 第9回水素・燃料電池戦略協議会向け資料

 

<付記>
なぜ水素を付加するキャリヤーがトルエンなのか。
トルエンのメチル基がないベンゼンやまたベンゼンが2個のナフタレンの方がよさそうだが?
確かにMCHの水素の貯蔵密度は理論上47.0kg-H2/m3であり、ベンゼン←→シクロヘキサン(56.0kg-H2/m3)やナフタレン←→デカリン(カヒドロナフタレン)(65.4kg-H2/m3)に比べやや劣るものの、
液体の状態を維持できる温度範囲が広い利点を持つため
ウィキベディア)より

夢の全個体電池(NHKサイエンスZERO)

先日NHK-Eテレ「サイエンスZERO」で全固体電池開発の番組があったので概要を紹介したい。

冒頭EV自動車レースの場面が展開される。
この部分は、現状のバッテリーをEV自動車レースに使うとバッテリーが大きい、充電時間が長い、高速走行では持続時間が短くなる(即ち航続距離が短縮)等の現在のリチウムイオン電池での問題を視聴者にわかりやすくアピールしたもの。
これら現状のリチウムイオン電池の問題は、電解質に可燃性液体を使っているためであるが、これらの問題の解決には、当面の主流として電解質を固体にした全固体電池と考えられ現在世界中で開発競争が繰り広げられてている。(過去ブロブもご参照ください

東工大の菅野了次教授は、30年も前からこの固体電解質でのリチウムイオン電池を研究していた。
しかし研究開始から10年たった1991年、液体の電解質を使ったリチウムイオン電池が実用化され現在主流の二次電池としてIT機器等各所に使われている。(より短時間での充電、長時間の使用等の要望はあるが)
その開発者の一人吉野彰氏は毎年ノーベル賞候補に上がるが、今年日本版ノーベル賞ともいえる日本国際賞を受賞した。

そんな中、菅野教授は固体電解質にこだわり続け、最近実用一歩手前(9合目)まで来たという。

その背景には3つのブレイクスルーがあった。

ブレイクスルー1:
2011年、液体電解質を上回る性能の固体電解質の発見。組成はLi10GeP2S12
 その結晶構造は、GeとPとSががっちりとした結晶構造を取っており、一部のLiイオンがまるで液体の様に動いていた。
ただし性能(エネルギー密度、出力密度)はリチウムイオン電池を上回ったが、高価なGeを使っているのが問題。

ブレイクスルー2:
2016年、Geを使わずに更に高性能な電解質を開発。その組成はLi9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3

Geの代わりにSiを使いほんのわずかの塩素を加えたところ、それまでの性能を上回る固体電解質が得られた。

この電解質を大強度陽子加速器施設「J-PARC」の粉末中性子解析装置を使ってリチウムイオンの分布状態を調べるとGeが有るときよりもより3次元的に広がっている。

また熱的な安定性に関しても、通常の(液体電解質の)リチウムイオン電池は60度での使用とされているが、今回の組成の固体電解質は150度くらいでも十分使える。(そもそも粉末を500度に焼いて作る)
また耐久性である充放電回数も100度での結果では1000回でも全く劣化しない。

ブレイクスルー3:
性能を低下させる界面の問題を解決。
電流が流れやすい電解質は出来たが、作った電池は思ったより電流が流れなかった。
この原因は酸化物(正極のコバルト酸リチウム)の方が硫化物(開発した固体電解質)よりリチウムイオンを引きつける力が強い為、正極に接触している電解質の界面部分のリチウムイオンが正極に引き抜かれリチウムイオンの無い空間が出来、不均一な固体電解質となっているためであった。
そこでNIMSの高田氏は両者間にチタン酸リチウムの薄膜(数ナノメートルのLiTi5O12)を導入することで、通常の3倍(600w/kg)の出力が得られた。

ただし現在その膜の働きの原理はまだわかっていないという。

現在この原理の解明中であり、解明されれば更に高性能な全個体電池の開発につながると考えられている。

尚、
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は2018年6月15日付で、全固体リチウムイオン電池を早期実用化するための研究開発プロジェクトの第2期をスタートさせた。
その声明文は以下の通り。
「本プロジェクトでは、自動車・蓄電池・材料メーカー23社および大学・公的研究機関15法人が連携・協調し、全固体リチウムイオン電池のボトルネック課題を解決する要素技術を確立しつつ、プロトタイプセルを用いて新材料の特性や量産プロセス・EV搭載への適合性を評価する技術を開発します。また、日本主導による国際規格化を念頭に置いた安全性・耐久性の試験評価法を開発します。さらに、研究開発と並行して、電動車両が大量普及する将来の社会システムのシナリオ・デザインを検討します。」

<参考サイト>
次世代電池を牽引する、全固体電池開発
Nature Energy 2016年4月)
トヨタと東京工業大が開発する全固体電池の登場はエンジンを場外に送るか    (Motor Fan 2017/08/11)
全固体電池の菅野教授が語る、EVはこう進化する。 次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか。
(日経ビジネス 2018年1月17日)

 

最後に
トヨタ自動車は全個体電池を搭載したEVを2022年に発売すると発表している。
番組では、全固体電池の開発が登山に例えるならほぼ9合目に来たと菅野教授は述べておられるが、番組で公開出来ない部分もあるはずなので、トヨタ及び他の会社での車載用電池としての性能、製造プロセス等相当進んでいると思われる。
今後外国勢(特にドイツ、中国)の情報も含め、車載電池の先端状況に注目してゆきたい。

 

 

 

 

ペロブスカイト型次世代太陽電池の実用化近づく

世界中で日本発のペロブスカイト型という新型太陽電池の開発競争があり、実用化が近づいています。

太陽電池は地球に降り注ぐ膨大なエネルギーの太陽光から電気を発生させる物質の総称であり、たくさんの種類の太陽電池が研究されています。(更に詳細はNEDO太陽光発電

しかし現在は産業用・民生用としてはシリコン系が圧倒的に使われています。

シリコン系も単結晶型から多結晶型、アモルファル型へと進化し、モジュールの改良とも合わせ現在はそれら単独またはその組み合わせで使われています。

これらシリコン系の特徴としては、発電効率は20%程度とまだ低く、重い、硬い、割れやすいといった欠点や、製造時真空装置を使うなど生産が難しく、製造コストが高いといった問題があります。

変換効率だけならシリコン型を超えるものはいろいろあり、量子ドット型太陽電池に至っては
理論値は70%近くに達するとされています。

しかしシリコン系の最大の特徴は耐久性で約20年以とされ、これが現在の太陽電池市場での圧倒的地位を確率している所以です。

しかし最近このシリコン系に取って代わるとされる技術が日本の研究者によって生み出されました。
ご存知の方も多いと思いますが、2009年9月桐蔭横浜大学の宮坂力教授らが発表した
ペロブスカイト型太陽電池です。ノーベル賞候補にも選定されているほどです。

ペロブスカイト構造については後述するとして、この型の太陽電池の最大の長所は、発電基板の製造が超簡単にでき、使い勝手が非常に良くなるとされるものです。
例えば製造は基板となる薄いプラスチック板に液体の原料を塗って乾かすだけで済むつまり印刷方式で大量生産ができる様になるということです。

大量生産が可能となるため低コストとなり、また製品は薄く、軽いため、現行のシリコン基盤の様に平面パネル/架台での設置の必要はなく、曲面や壁などにも貼って使える様になるというものです。

このペロブスカイト型太陽電池が発表されてから、世界中の研究者が競って研究を始めており、開発当初は3.9%だったものが10%となり現在は20%くらいまで急激に向上してきています。現在の最高値は外国勢の22.7%です。(ただし試作面積の大きさが小さい場合は高めに出ている場合があり、一定の面積での性能評価必要があることに注意を要する。)
このペロブスカイト太陽電池の太陽光理論値は30%とされていましたが、2017.4パデュー大の60%超の可能性があるとの報告もあります。

実際大量生産(大面積)でも変換効率20%台が確保できれば、変換効率だけについて言えばほぼ十とも思われますが、問題は耐久性と有害な鉛を含有していることです。

耐久性の方は、日本で確認された100℃で2600時間の性能を維持したとか2,3年程度とか報告されていますが、シリコン製にはまだ遠く及びません。

鉛の問題については鉛を使わない(鉛フリー)での太陽電池の開発が進められています。

現在世界で、変換効率アップと耐久性アップの研究が精力的に研究されており、将来的には、効率はシリコン型太陽電池を上回り、耐久性は近いものが開発されるものと期待されています。

したがって当面はペロブスカイト型太陽電池がその特徴(軽い・薄い・曲がる)を活かしてシリコン型太陽電池市場を少しづつ侵食して行きながら発展して行くと考えられます。

 

以下簡単な説明と、参考サイトをご紹介します。

ペロブスカイトとは
もともと地球下部マントルの主要構成鉱物(MgSiO3)の結晶構造であり、模式的にはABX3という組成で、八面体構造の中心に金属元素がありその廻りを立法体構造が取り囲む形をしている。

人工物ではチタン酸バリウム(BaTiO3)があり、宮坂教授が開発した組成は下記のような(CH3NH3)PbI3と言う元素構成です。

ペロブスカイト太陽電池の各研究機関による成果の経緯についての詳細は最後に添付したリストをご参照下さい。
尚、茨城県つくば市にある物質・材料研究所(NIMS)の
4月22日の一般開放で展示されていたパネル写真をご参考までに添付します。

尚一般的な太陽光発電に関しての記述はここでは省略し、主題のペロブスカイト太陽電池に関しては最近の主な記事(サイト)を年代順位ご紹介しますので、適宜ご参照下さい。

今話題の「ペロブスカイト」って何?
2015年10月22日
ペロブスカイト太陽電池で変換効率18.2%を達成、年内に20%目指す。印刷で量産できる安価な次世代太陽電池へ一歩
新聞より薄い「曲がる」太陽電池、インクジェット印刷で実現 (1/2)
2016年10月11日 h
紙のようにロール印刷、ペロブスカイト太陽電池
2017年03月22日
鉛フリーで実現、期待の「ペロブスカイト太陽電池」
20170713
ノーベル賞候補で俄然注目、「ペロブスカイト太陽電池」開発前線
2017年09月21日
ペロブスカイト太陽電池の新材料を発見、スパコン「京」を活用
20171017
日本発の太陽電池ペロブスカイト、年内にも実用化 柔軟で透明、窓や衣類に用途広げる
2018.2.11

期待のペロブスカイト太陽電池、耐久性10倍のブレークスルー
20180319

ぺロブスカイト太陽電池の実用化へ前進、寿命・製造を改良する新材料2018年04月10日

世界の注目を集める日本発の太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」とは2018423

 

 

 

 

 

 

 

 

リチウムイオン電池を大幅に超えるリチウム空気電池、ソフトバンクも参入

現在繰り返し使えるバッテリー(二次電池)はリチウムイオン電池が主流を占めているが、
電解質に有機性の液体を使用していることから発火や爆発等の安全性の問題があり、
さらにエコカーへの車載用電池としては蓄電容量(走行距離)や、耐久性(繰り返し充放電回数)が不十分とされ、更に高性能な電池が期待されている。

この期待に応じられるバッテリーとして、現在電解質に無機系個体電解質を使用する全個体電池の開発が、2022年頃の実用化を目指してトヨタ自動車を先頭に各社で進められている。これらの件についてはこれまでのブログで述べてきた。
(最新情報としては、非車載用の小型電池ではTDKが今年6月から生産予定とのこと)

一方、この全固体リチウムイオン電池は正極に希少資源のコバルトを使うという点や容量密度(走行距離)がまだ不十分のため、更にこれらの問題点を解決し、課題に対応し得る可能性のある電池として理論エネルギー密度が現行のリチウムイオン電池の5-10倍のリチウム-空気電池がある。(図の金属ー空気電池の領域)


このリチウム-空気電池は負極にリチウム金属を用い、正極に空気中の酸素を利用するもので、「究極の二次電池」とも言われ、現在世界的に研究開発が進められている。

物質・材料研究機構(NIMS)で開発されたリチウム空気二次電池の原理模式図


正極の空気(酸素)極、セパレータ―、負極のリチウム金属からなるシンプルな構造となっている。
この電池はコバルト等の希少資源を使う必要がなく、負極物質は空気を原料とするもので現行のリチウムイオン電池に比べて大幅な軽量化とコストダウンが期待されている。

リチウム空気電池の基本反応
放電(電気の取り出し)では、負極のリチウム金属からリチウムが溶けだし、リチウムがプラスイオンとなり、その時放出される電子が電流として外部回路に流れ仕事をする。
リチウムイオン(Li)の方はセパレータ―を通り、正極(多孔性カーボン)に達し空気中の酸素(O)と反応して過酸化リチウム(Li)となり正極の多孔性カーボン上に析出する。
充電は、外部からの電気エネルギーにより放電の逆つまり正極に蓄積した過酸化リチウムをリチウムイオンと酸素に分解し、陰極にリチウム金属にして戻す反応。

期待されるこのリチウム空気電池には以下の課題があった。
1)理論大容量の実現、
2)低いエネルギー効率と、短寿命

これらの課題に対して、NIMSは下の取り組みを行い大幅に改善した。
1)大容量の実現
正極のカーボンに不織布状のCNT(カーボンナノチューブ)シートの採用により達成。
これはCNT不織布の大きな表面積と柔軟な構造の寄与により、酸素の通りがよく、放電反応による過酸化リチウムが表面に析出してもCNTが変形し析出反応が制限されなくなった為と考えられている。また充電により元の形状に戻るため繰り返し回数の増加に寄与している。下図がその様子を示している。

2)低いエネルギー効率と短寿命
低いエネルギー効率の原因は、過酸化リチウムの分解が起こりにくいため充電電圧(過酸化リチウムの分解電圧)が放電電圧より高くなることによる。
また短寿命の原因は、充電時過酸化リチウムが分解されリチウム金属として負極に析出する際に、デンドライト状(樹枝状)になり、リチウム金属を劣化させると共に短絡を生じる。

この問題に対し、2017年7月31日、物質・材料研究機構(NIMS)の研究チームは同電池のエネルギー効率と寿命を大幅に改善する新たな電解液を開発したと発表した。

新しく開発された電解液は、臭化リチウム(Li)と硝酸リチウム(LNO)を含む混合電解これによって、充電電圧が3.5Vに、エネルギー効率の値77%まで大幅に向上した。
また、寿命低下の一因とされていたリチウム金属の樹枝状物質(デンドライト)の析出も防止することで、従来20回以下であった充放電サイクルを50回以上(現在はもっと大きな数字となっていると思われる)まで向上させた。

下の画像で概況を知り、正確には参考サイト2をご参照ください。


 

 

 

 

 

 

今年2018年4月11日ソフトバンク物質・材料研究機構(NIMS)は、今後のIoT時代に向けての各種デバイスやあらゆる産業に必要となる高性能電池の開発を目指し、先端技術開発センターを設置リチウム空気電池を共同で開発に着手すると発表した。(参考サイト3,4

これまでも数々の投資を行って成功させてきたソフトバンクが参入することで、リチウム空気電池の開発が一気に進む可能性もある。

一方トヨタ自動車は、車載用として全個体リチウムイオン電池を2020初頭に開発するとされていたが、リチウム空気電池も開発しており、その圧倒的容量の大きさ(走行距離)から今後の進展次第では車載用電池の実現が意外に早く来るかもしれない。

全個体電池、他の金属も含めてリチウム空気電池の今後の進展に注目していきたい。

 

<参考サイト>
1.(CNT不織布の正極)
  容量はリチウムイオン電池の15倍、超高容量の「空気電池」を開発 
2.(新電解液)
  リチウム空気電池のエネルギー効率と寿命を大幅に改善する電解液を開発
3.(SBNIMS)①
  究極の“リチウム空気電池”、ソフトバンクとNIMSが共同開発へ
4.(SBNIMS)②
   リチウム空気電池! ソフトバンクと物質・材料研究機構NIMSが共同開発に着手

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全固体電池が急速に具体化

現在EVを始めとする各種エコカーやスマホ等情報機器、その他IoT端末等にはリチウムイオン2次電池(LIB)が主流で使われている。
しかし、スマホ等では現在でも火災等が発生しており、リチウムイオン2次電池の安全性が大きな問題となっている。

また現在エコカーや飛行機用途ではより安全性を高めたバッテリーが使用されてはいるが、火災等の心配が全くなく、車載用バッテリーでは走行距離の増大、充電時間の短縮が強く要望されている。

可燃性を主体とするこれらの問題の主な原因が有機液体の電解質を使っている事にあるため、この電解質を燃えない固体電解質に置き換えた全固体2次電池の開発が世界中で研究されている。

スマホやIoT機器等の情報機器では安全性以外の性能はそれ程強く要望されていないが、車載用では、電解質を固体電解質即ち全個体電池にすることによる、安全性向上の他に、電池容量(走行距離)の増大、イオン伝導性の向上(充電時間の短縮)、耐久性の向上、容積の低減が期待されている。

全個体二次電池はこれまで大学や国の研究機関で試作結果はいくつか報告されているが、量産まで至った企業はない。いい個体電解質が開発されたとしても、最終的には正極、陰極を含めた原材料コスト、生産技術、量産コスト等が全てクリアされないと生産に至らない。

現在各メーカーの取り組み状況は以下の通り。(日経エレクトロニクス1月号より)
・車向け:トヨタ(2022年頃)、日立造船(2020年前)、Bosch(2020年頃)、サムソンSDI
・スマホ等向け:Fisker、
・I端末向けoT:TDK(2018年4月量産開始予定)、村田製作所、産総研と協業企業(2020年前)

尚、全固体電池に関する最新のニュースを紹介すると、
日本電気ガラス燃えず高性能な次世代電池、室温駆動に世界初成功
昨年11月日本電気硝子は正極材に結晶化ガラスを用いた全固体ナトリウムイオン二次電池の室温駆動に成功した。(業界初)

特殊ガラスメーカーとして培った技術により、ガラスの軟化流動性を利用し、電池の固体電解質と一体化を図った高いイオン伝導性をもつNa系の結晶化ガラスを開発し、室温での電池駆動に成功した。
(これまで、ナトリウムは既にNaS電池として大型電力貯蔵用に使用されているが高温下での可動の必要性があり、電池が複雑で大型化しているため小型電池が望まれていた)

<その他参考サイト>
全固体リチウム電池、発明者が狙う次の一手
ショートしない全固体リチウム電池、世界最高レベルの導電率
電気自動車の充電時間を短縮できる全固体電池、トヨタと東工大が開発

 

<備考>
・セミナー全固体二次電池の基礎と最新動向」がある。
受講しなくとも、全固体二次電池に関する全体の様子が分かる。