石とプラスチックから出来た紙、ライメックス(LIMEX)

最近ライメックスという「石から作られる紙」が注目されている。

その特徴は
1.
従来の紙の製造時に必要とされる原料の木材と水が不要である
(因みに紙1トン作るのに木材20本、水100トンが必要だが、代替紙1トンのためには
 石灰0.6~0.8トン、樹脂(PP)0.2~0.4トンとされる。)
2.原料の石(石灰石)は日本で100%自給出来る資源であり、世界的にも埋蔵量は
非常に多く枯渇の心配はほぼない。(結果値段も安い)
3.薄い紙としてだけでなく、厚物、板物としてプラスチックの代替としても使える。
4.紙に比べ耐水性や強度が高いので、浴室等水回りや屋外での使用もできる
5.製造時、廃材や汚水の発生が少なく、特に世界的に逼迫してきている水を大量に
使わなくて良いエコロジー素材である。
とされている。

この素材の誕生とその後の華々しい展開
・2011年に山崎敦義氏によって設立されたベンチャー企業TBMが開発。
(元は台湾のストーンペーパーだが、日本の高度な印刷品質要求に合うものとして新規に開発)
ネーミングは、石灰石(LIMESTONE)のLEMEと未知の可能性を秘めたXを合わせてLIMEXとした)
・その後のブレイン人材と優秀実行部隊の獲得による戦力アップ
・2013年経済産業省のイノベーション拠点立地推進事業に採択
数々の受賞(受賞歴下記)による知名度アップ
・大企業との連携
2016年11月、凸版印刷株式会社と共同開発の基本合意
2017年3月、日揮株式会社、サウジアラビア国家産業クラスター開発計画庁(NICDP)とサウジアラビアでのLIMEXの開発及び製造活動に向けて基本合意
2017年8月NEDOより平成29年度「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」に採択

・2018年 従来の石灰石の代わりに植物から作った生分解性プラスチックである
 ポリ乳酸とを組み合わせたバイオプラスチック新素材の開発。
・生産量の拡大計画
2020年に白石市の工場の年産能力を6千トンから5倍の約3万トンに高める予定。

<所感>
・原料が石灰とPPから考えると、なぜもっと昔に世に出なかったのかとは思う。
しかし基本的に特許が取れるということは誰もやっていなかったのだろうか。
昔から大理石(石灰石)とアクリル樹脂MMAとの混合製品はあった。
(粉体混合ではなく、また厚板としての利用だが)
・LIMEXの発想・製品の元が台湾の「ストーンペーパー」だった(社長談他)のなら、
素材・技術がシンプルそうなので「日本発」というのは一寸気が引ける。
(「KAIZEN」が妥当?)。
・原料が自給出来る日本にとっても有用だが、水も木も少ない中東にとっては
ポスト石油としての期待もさぞ大きいだろうとおもわれる。今後のプラント建設に期待。
また開発途上国にとってもまずは採用しやすい自国の産業となりやすいだろう。
・現在の紙の一部はLIMEXに置き換わるだろうが、木からの紙も良い点は多いので、
値段を基準に棲み分けて行くのでは。
・木(パルプ)を原料とする現行の紙のリサイクルはよく分かるが、このLIMEXのリサイクル      はちょっと難しいと考えられる。
なぜなら樹脂がPPの製品だけでも単品で集めるの(分別することが)難しいのに、
今後多種の樹脂が使われてくることは必然。
環境性(エコロジー)を謳い、生分解性樹脂を多用されるならそもそもリサイクルそのものがなくなる。
・「アップサイクル」が出来る製品でもあった。
アップサイクルとは、リサイクルの上位概念で元の性能以上のもの(材質・製品等)に
生まれ変わらせるという意味。
今後いろいろな分野でこの言葉が好んで使われるようになりそうだ。

LIMEXが今後、素材としての発展と用途してどんな分野にどれだけ浸透(侵食)してゆくか、注目してゆきたい。

 

<参考サイト>
LIMEXとは
動画:地球を救え!石灰石からつくる革命的新素材「LIMEX
LIMEX(ライメックス)が秘める地球環境問題解決への可能性
数々の受賞
◯テレビ番組カンブリア宮殿出演

◯参考
ストーンペーパー

<参考情報>
最近のプラスチック製ストローの環境汚染の問題に絡み、2018年10月4日の日経産業新聞にわかり易いライメックスの記事がでている。
注目は、TBMが伊藤忠他と組んで20年度までに米国に工場を設けるとしていること。