量産車に採用される炭素繊維(CFRP)はどちらが勝つ?

炭素繊維強化樹脂(CFRP)はその強度と軽さから、これまでスポーツ用品から一般産業部品、風車のブレード、そして飛行機(ボーイング787等)に用いられてきた。

一方自動車に於いては、その軽さと強度は環境対策、燃費性能向上に於いて魅力的な素材ではあるものの、材料が高価なこと、大型部品の加工が難しい、加工時間が長い等で生産性が低いという問題から、一部の高級車・部品を除き、量産車には採用されるまでには至らなかった。

しかし近年この高価格と生産性の低さを改善するCFRP及び加工法が開発され、量産車に採用される状況になってきた。

炭素繊維強化樹脂CFRPにはこれまで熱硬化性樹脂を使うCFRPに対し、炭素繊維は同じだが熱可塑性(熱くなると柔らかくなる)樹脂を使う熱可塑性CFRP(一般にはCFRTPと略記される場合が多い)が開発された。

熱可塑性樹脂は帝人が開発したが、GMはこの熱可塑性CFRPを使い世界で初めて量産車のピックアップトラックに採用した。
熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂に比べ材料コストが安く成型時間も短いが、これまで大型部品の量産が難しいという課題があった。
それが複雑形状の大型部品を短時間(1分)の成型時間で量産出来るようになったことで量産車に採用された。
帝人とGMが6年3ヶ月の歳月を掛けてこぎつけた技術だ。

一方トヨタ自動車は採用する炭素繊維を、東レではなく三菱ケミカルのCFRPに決めた。
その理由は三菱ケミカルがSMC(シートモールディングコンパウンド)工法をもっていたからだった。(尚東レは2014年トヨタの燃料電池車ミライの水素貯蔵タンクや円筒シャフト等の部品を提供してはいるが大型成型品ではなかった)

SMC工法とは、2~3cmに切断した炭素繊維をエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂に分散させたシート(SMC)を使い、同シートを加熱しながらプレス成型して製品をつくる方法。
特徴は複雑な形状の部品が成型出来ること、量産対応が可能なこと。

ただしカット繊維を使っているため、強度的には低くなるため、SMC工法による部品自身で強度が足りない場合は、カットしてない長繊維でのプリプレグや、長繊維で作った織物を片面に充てがい樹脂成型して強度を補強する方法が取られている。

熱硬化性CFRPは部品や高級車ボディーへの一部採用で先行してきたが、
GM・帝人で車体に採用が決まった熱可塑性CFRPが追い上げてくる可能性が高い。

車の軽量化の手段として、これまでの材料である高張力鋼(ハイテン)板やアルミ合金が使われてきたが、軽量化を目的としたその使用量の低減には自ずと限界がある。
一方高張力鋼の引張り強さは、炭素繊維の長繊維の併用で十分補強でき、アルミ合金部品には素材単価はかなわないとしても、多くの部品からなるものであれば、CFRPの一体成型によるコストダウンが可能になる。

軽量化素材の比較

上記の理由で今後CFRPの大衆車への使用が増大して行くと思われるが、
GM/帝人の熱可塑性CFRP対トヨタ/三菱ケミカルの熱硬化性CFRPの行方が注目される。
更に、飛行機向けでは圧倒的地位を築いている東レが出遅れていた量産車へのCFRPの取り組み・巻き返しが注目される。

 


これまで車用部品、大型パネルの部材として熱可塑性CFRPが先行開発採用されてきたが、今後は可塑性CFRPが主流になっていくのではないかと一部で考えられている。

確かに加工性(生産性)、性能(強度等)、材料コスト(樹脂)、リサイクル性等が熱硬化性CFRPより優れていればそうなるのは必然だが、しかし私にはどうしても気になる点がある。
それは.異常高温環境下での形態安定性保持・強度不足の懸念についてだ。
熱硬化性CFRPは問題ないが、熱可塑性CFRPは成形品でも高温になると樹脂が柔らかくなる。このため常温で強度が維持されていても、火災等何らかの異常高温環境になった場合に強度が不足し問題になることはないのか。

<参考サイト>
2017年07月18日
炭素繊維とアルミ、量販車への採用を後押しする成形・加工の進化
三菱ケミカルは17年に入り、シート・モールド・コンパウンド(SMC)と呼ぶ生産性を向上したCFRPがトヨタの「プリウスPHV」の骨格部材に採用された。

2018年05月29日
プリウスにも採用、炭素繊維が鉄素材の牙城を崩し始めた理由

2018/6/14
世界初、量産車に採用 アルミを超える新炭素繊 

石とプラスチックから出来た紙、ライメックス(LIMEX)

最近ライメックスという「石から作られる紙」が注目されている。

その特徴は
1.
従来の紙の製造時に必要とされる原料の木材と水が不要である
(因みに紙1トン作るのに木材20本、水100トンが必要だが、代替紙1トンのためには
 石灰0.6~0.8トン、樹脂(PP)0.2~0.4トンとされる。)
2.原料の石(石灰石)は日本で100%自給出来る資源であり、世界的にも埋蔵量は
非常に多く枯渇の心配はほぼない。(結果値段も安い)
3.薄い紙としてだけでなく、厚物、板物としてプラスチックの代替としても使える。
4.紙に比べ耐水性や強度が高いので、浴室等水回りや屋外での使用もできる
5.製造時、廃材や汚水の発生が少なく、特に世界的に逼迫してきている水を大量に
使わなくて良いエコロジー素材である。
とされている。

この素材の誕生とその後の華々しい展開
・2011年に山崎敦義氏によって設立されたベンチャー企業TBMが開発。
(元は台湾のストーンペーパーだが、日本の高度な印刷品質要求に合うものとして新規に開発)
ネーミングは、石灰石(LIMESTONE)のLEMEと未知の可能性を秘めたXを合わせてLIMEXとした)
・その後のブレイン人材と優秀実行部隊の獲得による戦力アップ
・2013年経済産業省のイノベーション拠点立地推進事業に採択
数々の受賞(受賞歴下記)による知名度アップ
・大企業との連携
2016年11月、凸版印刷株式会社と共同開発の基本合意
2017年3月、日揮株式会社、サウジアラビア国家産業クラスター開発計画庁(NICDP)とサウジアラビアでのLIMEXの開発及び製造活動に向けて基本合意
2017年8月NEDOより平成29年度「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」に採択

・2018年 従来の石灰石の代わりに植物から作った生分解性プラスチックである
 ポリ乳酸とを組み合わせたバイオプラスチック新素材の開発。
・生産量の拡大計画
2020年に白石市の工場の年産能力を6千トンから5倍の約3万トンに高める予定。

<所感>
・原料が石灰とPPから考えると、なぜもっと昔に世に出なかったのかとは思う。
しかし基本的に特許が取れるということは誰もやっていなかったのだろうか。
昔から大理石(石灰石)とアクリル樹脂MMAとの混合製品はあった。
(粉体混合ではなく、また厚板としての利用だが)
・LIMEXの発想・製品の元が台湾の「ストーンペーパー」だった(社長談他)のなら、
素材・技術がシンプルそうなので「日本発」というのは一寸気が引ける。
(「KAIZEN」が妥当?)。
・原料が自給出来る日本にとっても有用だが、水も木も少ない中東にとっては
ポスト石油としての期待もさぞ大きいだろうとおもわれる。今後のプラント建設に期待。
また開発途上国にとってもまずは採用しやすい自国の産業となりやすいだろう。
・現在の紙の一部はLIMEXに置き換わるだろうが、木からの紙も良い点は多いので、
値段を基準に棲み分けて行くのでは。
・木(パルプ)を原料とする現行の紙のリサイクルはよく分かるが、このLIMEXのリサイクル      はちょっと難しいと考えられる。
なぜなら樹脂がPPの製品だけでも単品で集めるの(分別することが)難しいのに、
今後多種の樹脂が使われてくることは必然。
環境性(エコロジー)を謳い、生分解性樹脂を多用されるならそもそもリサイクルそのものがなくなる。
・「アップサイクル」が出来る製品でもあった。
アップサイクルとは、リサイクルの上位概念で元の性能以上のもの(材質・製品等)に
生まれ変わらせるという意味。
今後いろいろな分野でこの言葉が好んで使われるようになりそうだ。

LIMEXが今後、素材としての発展と用途してどんな分野にどれだけ浸透(侵食)してゆくか、注目してゆきたい。

 

<参考サイト>
LIMEXとは
動画:地球を救え!石灰石からつくる革命的新素材「LIMEX
LIMEX(ライメックス)が秘める地球環境問題解決への可能性
数々の受賞
◯テレビ番組カンブリア宮殿出演

◯参考
ストーンペーパー

<参考情報>
最近のプラスチック製ストローの環境汚染の問題に絡み、2018年10月4日の日経産業新聞にわかり易いライメックスの記事がでている。
注目は、TBMが伊藤忠他と組んで20年度までに米国に工場を設けるとしていること。

エコプロ2017、ナノセルロース(CNF)展

先日(12/7,8,9)東京ビッグサイトで開催された「環境とエネルギーの未来展エコプロ2017」に行ってきた。
本イベントは環境に配慮した製品やサービスを展示し、「持続可能な社会の実現に向けて」をテーマに600以上の会社・団体が出展。
国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標Sustainable Development Goals)に対応し、リサイクル技術クリーンエネルギー関連の展示がされた。詳細は主催のHP参照
この中で特にCNF(セルロースファイバー)について各社資料を参考に其の一部をご紹介.

(ナノセルロースサイト写真から)
各社カタログを入手したが、偏り無く伝えていたのは産総研の資料だったので主にこれを元に説明します。

セルロースナノファイバー(CNF)とは、一言で言えば植物繊維をナノメートル単位にまで微細化した物です。

<製造プロセス>
植物(木、竹、草等)→チップ→脱リグニン→パルプ→下記A、B処理

A:パルプを化学薬品で前処理し物理的に解繊する。
TEMPO触媒酸化(下記注1~3)リン酸エステル化が使われ、
完全ナノ分散した約3ナノメートルの透明なCNFとなり工業用として幅広く活用される。
カルボキシメチル化(CMCしたものは数ナノから数百ナノとなり、食品・化粧品の増粘、分散安定剤として使われる。

B:パルプを前処理せず
①濃硫酸で分解する
セルロースの短繊維(ミクロフィブリル)が非結晶領域で分解され紡錘状の結晶が得られる。これはセルロースナノクリスタルと呼ばれている。(現在メーカーはカナダの2社のみ)
②機械処理だけでセルロースをほぐす
次の3工程で細かくする。
(1)剪断・・・約2500気圧に高めたパルプ分散液を極細のノズルを通して細く裂く
(2)衝突・・・2つのノズルから相対速度マッハ4の高速で溶液同士をぶつけて砕く。
(3)キャビテーション・・・ノズルから噴射する時に急激に圧力が下がり気泡が生じ、この気泡が破裂する時の衝撃で更に細かくなる。
これで約20nmの大きさになる。生産性は高く、低コストで製造出来る。

C:チップをそのまま解繊(解きほぐす)
セルロースの表面にリグニンが付着しており、分散もしていない。外観もリグニン由来の茶色となる。リグノセルロースとよばれる。

特殊セルロース:微生物を使って生合成する
糖質、グリセリンを原料として酢酸菌という微生物にセルロースを合成させる。
このセルロースは「バクテリアセルロース」と呼ばれ、食用、工業用に用いられる。

<特性と想定される用途>
1.軽量・高強度を利用

①プラスチックに添加・・・強化プラスチック(ヘルメット等)、発泡材料、
3Dプリンター用樹脂、防弾チョッキ、住宅建材
②ゴムに添加・・・・・タイヤ(カーボンブラック代替)、スポーツシューズ(靴底)、
③紙に添加
スピーカー振動板他、製紙用各種用途添加剤
2.透明性
透明保護フィルム
3.石英並の低熱膨張
電子基板、電子部品
4.ガス遮蔽性
食品包装用フィルム、電池部品
5.細孔の制御が可能
濾過材料、担持材料(細胞培養基材)、ドラッグデリバリー(DDS)システム
6.増粘性の制御が可能
増粘剤、塗料・インキ・顔料、化粧品、ガス・オイル掘削用
7.表面積が大きい
消臭機能のあるオムツ

注1)
化学処理のTEMPO酸化は、東京大学の磯貝明教授らのグループが開発し、高効率でCNFを調整する技術で、アメリカ化学会のAnselme Payen賞を受賞しました。

注2)
“森のノーベル賞”に日本人のセルロースナノファイバー研究が授賞

注3)
TEMPO酸化、少し詳しくはここから

<会場の写真及び展示パネル>
企業や大学・団体等の研究・開発状況を紹介する展示パネルを撮影したので幾つか貼付します。(尚スマホで撮影したので細かい字は見えず概要のみでご了承下さい)

 

最後に、環境省が主催するCNVプロジェクトをご紹介。

VはEVやFCVと同じVehicleつまり車であり、自動車の各種部品・部材をCNFで作成し、材料評価から実機搭載までを一気通貫で実施、早期社会実装に向けて貢献するというもの
京都大学が代表技業者となり大学、研究機関、企業等計21の機関で構成されている。

今後共製造技術進化と応用の高度化及び製品の多様化に注目して行きたい。

 

 

 

 

 

 

夢のマグネシウム合金、強さの秘密解明とその応用

飛行機の材料は強くてしかも軽い必要があり、現在で一般に良く知られている合金であるジュラルミン(超々ジュラルミン)が使われている。ジュラルミンはアルミニウムに銅、マグネシウム、亜鉛等を加えたもので其の技術はなんと戦前に開発されたものなのだ。
(ジュラルミンについて詳しくはここから。)

しかし更に軽くて強い材料が要望されており、其の一つの答えが、炭素繊維であり、既にボーイングのジェット機に使用されている。
ただ、炭素繊維は値段が高く、細かい賦形加工は難しい。
そこでジュラルミンや炭素繊維をコスト、性能で上回る材料(金属)が望まれている。

現在注目されているのはアルミより軽いマグネシウ合金だが、マグネシウム合金では、
これまで①燃え易い②弱いという2つの欠点が克服されていなかった。

しかし熊本大学の可村能人教授はこの問題をクリアした合金の開発に成功した。
KUMADAIマグネシウムとしてこれまで何度もニュースになりご存知の方も多いと思う。
KUMADAIマグネシウムの凄さについては、この動画1でよく分かる。

但し、今回のブログは、凄さの秘密を解説するのがメインなのだ。
尚記事の構成・内容は、NHK、Eテレ「サイエンスZERO」(軽い、強い、燃えにくい、夢の新マグネシウム合金)を参照した。

新合金の開発は、(非マグネシウム研究者として)国の新規マグネシウム合金開発プロジェクトに招聘された熊本大学可村教授がマグネシウムに別の元素を加えて其の性能を調べる実験を繰り返し、遂にその配合を発見した。それはマグネシウム(Mg)亜鉛(Zn)1%とイットリウム(Y)2%を加えるという条件だった。

従来のマグネシウム合金と較べて新合金の特長は、
1.曲げに対する変形→従来品はすぐ曲がり曲がったままに対し、しなるだけですぐ元に戻る。
2.引張強度→従来品は200MPaに対し500MPaで従来の2.5倍
3.燃え難さ→従来品が610℃で燃えるのに対し、910℃まで燃えない

この性能が世界を驚かせた。

ただ開発話の中でいくつかの疑問が生じるが、これについての答えは以下の通り。
1.これまでに上記の組成は検討されなかったのか
→同じ組成はあったが入れる量が違っていた。
2.燃え難くなるのはどうしてか
→Y(イットリウム)が酸素を通さない膜を作るので燃えにくくなる。
3.他の研究者が同じ組成で作っても強度が出ないのはなぜか
→この答えは可村教授自身にも分からないままであった。

しかし
A)東大の安倍英司教授のSTEM顕微鏡による原子配列状態の観察結果、及び
B)京都大学の奥田浩司教授によるSpring8での放射光を使った解析により明らかになった。
即ち、
1)Mg(97)/Zn(1)/Y(2)の合金のSTEM写真を調べるとZn+Yの白い層とMgの黒い層が交互に規則正しく整列していた。
これは「長周期積層構造(LPSO構造)」と呼ばれているもの。

2)上記3成分を配合した状態から徐々に温度を上げながら合金が出来る状態を放射光で観測すると
①最初ZnとYはMgの中でバラバラの状態で存在、
②温度が上がるとZnとYがくっつき始め166℃
③更に温度が上がるとこの塊が大きくなって行き(225℃→295℃
④そして自然に規則正しく並ぶ522℃

以上の現象は同じ配合で温度を上げてゆけば必ず出来ることを意味する。
それではなぜ可村教授が作った長周期積層構造の合金だけが強度がでるのか?

阿部教授が長周期積層構造(LPSO構造)を詳しく観察すると積層構造が折れ曲がった部分を見つけた。
顕微鏡の倍率を低くすると、三角形状となっている部分が沢山出来ていた。
この三角形は「キンク変形」と呼ばれ、これが強さの正体(原因)だった。
即ちキンク変形という結晶が歪んだ部分が入ると、次に全体を変形させようとした時、その変形に対する抵抗となっていることによることが判明した。
結論として、長周期積層構造(LPSO構造)+キンク変形が強さの秘密であった。
(詳しくは下記文献をご参照)
その1
その2.

それではなぜ可村教授が作った合金にはキンク変形が入るのか。

一般的な合金の作り方は、るつぼに金属の混合物を入れ、加熱して溶かし、鋳型に流し込んでゆっくり冷やし、鋳型から取り出す。原料を配合して溶かした後取り出す。
しかしこれには、キンク構造は入っていない。

その秘密は可村教授が昔から使っていた独特の方法にあった。
それは、金属混合物を溶かした後、小さな穴から噴出させ急冷しリボン状にする。
これを銅製の缶に詰め込んだ後、100トンの力で細長く押し出す。
この時、強い力で押されることでキンク変形が入り強くなっていたのだ。

では、通常の方法で溶かして作った合金を強い力で押し出し加工するとどうなるか?

果たせるかな(案の定as was expected)、強い金属が出来たのだ。

この長周期積層構造(LPSO構造)の合金を押し出し加工し、キンク変形させ強くする方法は材料工学分野では新発見であった。

その延長として、最近チタン合金アルミ合金についても強くなることが分かった。

この技術は一つの大きなブレークスルー技術となるかもしれず、
金属加工分野が大きく変わりそうだといわれている。

ここからは
軽くて、強くて燃えにくい新マグネシウム合金の応用研究について
1.航空機
(特に動画参照)
マグネシウム合金の航空機分野への応用が2014年に解禁された。
ただし、Mgの燃焼試験にパスしないといけないが、可村教授の合金は燃焼試験にパスした。
即ち航空機に使えるというお済み付きを貰ったわけだ。
2.自動車
当面はエンジンのピストン、ターボチャージャーの羽根等でエンジンの出力が上がり結果として燃費が良くなる。狙いは安価になった時のボディへの使用。(現行ハイテンを駆逐?)
3.宇宙
ロケット、衛星
上記1から3は燃費向上に寄与だが、以下は別の特徴が生かされた分野
4.医療
主成分であるMgの生体に対する特徴
・Mgは人体に必要なミネラルであり、人体に害はない。
・人体に吸収されやすい。
その他、Znも人体にあり、問題なく、Yについても特に記載はない。
製品への応用
50ミクロンのワイヤーが出来る様になり、ステント(血管拡張器)への応用が期待されている。
ステントは現在ステンレスやチタンと樹脂で作られているが、ステンレス等では一生血管内に留まるため、血栓をサラサラにする薬を飲み続けなけらばならない。また樹脂では一定期間後に体に吸収されて無くなるものもあるが、金属の2倍の厚さが必要でその分血管が狭くなる。
その点、新Mg合金は薄く、細く出来、また生体中で吸収されるので、まさに理想的な材料かと期待されている。
現在はステント形成技術の検討とマウスによる実験が行われている。
今後は基礎、応用の両面から研究を進めてゆく必要がある。

一般に
新材料が発見されてから実用化されるまでに30年位かかるので新マグネシウム合金も後
14,5年は掛かるだろう。しかし一旦実用化されればジュラルミンの様に100年以上使われるだろう。

放送内では竹内MCは敢えてレアーアースのYを使うことについては言及しなかったが、
やはり日本としては、最終的にはレアーアースを使用しない技術を開発する必要がある。
茨城マグネシウム工業会もハッキリそう言っている。

終わりに、
やや古いが、この動画2もおすすめ。メカニズム的な話は無いが、新マグネシウム合金の全体がよく分かる。

またこれからの研究者にとっては(どの分野でもそうだと思うが)、可村教授が動画1で何度も口にされている「マッドルスルー」の覚悟が必要だろう。

これまでのマグネシウム合金全般について知りたい方には
誰にでも非常に解りやすいサイトがあります。ここをご参照。

 

 

 

 

次世代自動車用バイオ樹脂の研究がすすむ

今自動車の軽量化を目的に新素材の研究が進んでいる。

車体用途では強度的に強く、軽いのはジェット機にも使われている炭素繊維だろう。
高級車には一部使われ始められたが価格が高く一般車への普及は大分先になりそうだ。

プラスチック素材なら軽くていいのだが、これまでは強度が不十分で塩ビのバンパーやアクリルのインパネなど一部に使用されてきただけであった。樹脂バンパーは壊れてもいいという前提なので使われている。しかし窓はそうはいかない。

窓は透明性が必須なのだが、アクリルやその他透明な樹脂では強度が足りない。
ポリカ―ボネイトは警察が使う盾になっているほど十分な強度はあるのだが、傷が付き易さを克服できていなかった。(表面硬化はあるが不十分)

これらの動きと平行に、非石油由来のプラスチック樹脂が二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス削減に役立つ新素材(バイオプラスチック)として注目を集めている。

新素材はこれまでの欠点だった熱に弱い性質を克服し金属やガラス等に代わりになる可能性を秘めている。

環境省も新素材を将来的に次世代自動車の部品の部品などに使う事を目指し技術面から地球温暖化防止対策を進めようとしている。

先ずは先行の製紙会社で研究がすすむ新素材セルロースナノファイバー(CNF)だ。
これにはこれまでにも当ブログに書いてきたので詳細は割愛します。(下のリンクご参照)

CNFは耐熱温度が最高約280℃のため、自動車のエンジン回りには使えない。

そこで注目されているのが本題の新素材だ。

1.バイオポリイミド
イミドと聞いただけですぐははーと思った人もいるでしょう。
北陸先端科学技術大学院大学の金子教授らは、植物から得られるブドウ糖を遺伝子操作した大腸菌によってアミノ桂皮酸に変化させた後、紫外線を当てて分子構造を変えて
熱に強いポリアミド樹脂を合成した。
耐熱性は400℃あり、エンジン回り部品への使用を第一とし、透明なので窓ガラスやライトカバーへの使用も想定されている。

2.リグノフェノール
 リグニンは良く知られているように、木材の繊維を束ねる接着剤の役割を果たしている物質だが、リグノフェノールはこのリグニンから抽出した粉状の素材で、他の樹脂と混ぜる事で軽くても丈夫で加工し易い素材になる。
高い断熱性があり燃えにくいため、車のボンネット裏の遮熱材や配線が通るコネクターなど、熱が生じやすいところに使える。金属部品に比べて15~50%重量を低減させることができると期待されている。(島根県の建設会社で開発が進む)
環境省は、上記の研究について、昨年から実証実験を始め、生産コスト削減や安定した供給方法を探っている。

目標は、先行して研究が進む木や竹由来のCNFと組み合わせることで、車体重量を10%削減した次世代自動車の実現だ。

(一部用語間違いがありましたので修正いたしました。遅くなりました。お詫び申し上げます。)

 

伝統工芸の技でつくるユニークなIoT機器

 

あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の普及を見すえ、ユニークな機器の開発が進んでいる。

 

昨年、大ヒットした映画『君の名は』で主人公が身につけていたことで一躍注目されている日本の伝統工芸「組紐」が、脈拍や咳などを識別できる生体センサーとして、実用化されることになった。

 

 組紐は、細い絹糸や綿糸を編んで織り上げて作り、和装の帯締めや武具や刀剣の飾りに使われている工芸品。

その組紐を特別の機能を持つハイテク繊維で作れば応用の一つとしてセンサーが出来る。

 

関西大学システム理工学部の田實佳郎教授と帝人は、ポリ乳酸繊維を使用した圧電体に日本の伝統工芸である「組紐」の技術を用いたウェアラブルセンサー「圧電組紐」を開発した。

 

圧電体は、圧力を加えると電気エネルギーを発生し、逆に電気エネルギーを加えると伸縮する特性を有する物質の総称。

 

その特性を利用し、スイッチなどのセンサーやスピーカーなどのアクチュエーター(駆動体)として使用されている。

 

単に圧電繊維だけではどんな動きでも電気信号が発生し、何の信号かわからない。

研究チームは、紐の編み方や結び方を変えると、捉えたい動きを表す電気信号が強まるのに気づきいた。そしてコンピューターによるシミュレーションで電気信号の変化を繰り返し計算し不要な信号を相殺する組紐の条件を突き止めた。

チョーカーと呼ぶ組紐に加工すると首に掛けるだけで、食べ物を飲み込む動きを咳払いまで捉えた。更にスポーツウエアに組紐を縫い付けると全身の動きが分かる。

将来的には検出した信号をスマホで病院に送れば医者が見て遠隔診断も出来る。

今後の進歩が注目される。

 

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ブリジストンは天然ゴムの性能を上回る合成ゴムの開発に成功

ブリジストンはバイオマス素材からポリイソプレンゴムを作ることに成功した。

自動車用タイヤは半分がゴムでその他にスチールコードやカーボンブラック等様々な物で構成されている。そのゴムにはパラゴムノキから抽出する天然ゴムと石油由来の合成ゴムの2つがある。

天然ゴムは強度や耐久性に優れ、乗用車ではゴム全体の半分以上、建設機械用では全て天然ゴムが使われている程だ。

その天然ゴムには悲しい歴史がある。天然ゴムの生産地は旧来南米地域だったが1900年代に「南米葉枯病」という病気が流行し産地として消滅してしまった。

現在は東南アジアが主流だが、この先同じことが起こらないとは言えない。

ブリジストンはこの原料リスクを避けるための対策として、病害診断の確立や「グアユール」と呼ぶ代替植物を米国で栽培する等手を打ってきた。

またサトウキビやトウモロコシ等様々な植物を発酵させ、これから抽出して作るイソプレンを重合し、天然ゴムを超える耐久性を持つポリイソプレンゴム(IR)」も開発してきた。

ただこれまで反応の触媒として用いられた触媒では分子構造が天然ゴムと異なるという欠点があった。というのはIRには「シス」、「トランス」、「ビニル」と言う3つの分子構造が含まれており、この内ゴムの性能を左右する要素として大きいのはシス構造の比率だ。

天然ゴムではほぼ100%がシス構造となっているがこれまでのIRでは94から98%強までしか比率を高められず天然ゴムに比べ耐久性が劣っていた。

そこでブリジストンは今回新たに触媒の構造を変えた「ガドリニウム触媒」を開発しシス比率を最大99.9%まで高めることが出来るようになった。またタイヤに用いた時の低燃費性に係わる分子の長さのばらつきを小さくすることにも成功し、天然ゴムを超える耐久性と低燃費性を確保出来たという。

残る課題はコストで、現時点では天然ゴムは供給に不安はなく、価格も安いので、IRの量産化技術を編み出し、コストを下げる必要がある。

 

 

 

 

次世代航空機エンジンに日本の新素材

ボーイングの次世代大型ジェット機には初めてエンジンに日本の新素材が使われる予定だ。

航空機の燃費をよくするために各種の軽量化が図られている。

これまで最大の軽量化は胴体や翼の部分を従来のアルミ合金から炭素繊維に切り替えることで行われてきた。その炭素繊維の供給会社は主に東レだった。

炭素繊維(PAN系)の生産は日本企業3社(東レ、三菱ケミカル(合併前は三菱レイヨン)、東邦テナックス)で世界のほぼ6割から5割を占めている。(昔は7割以上だったが次第に減減少している)

今後も燃費向上のため機体全体への炭素繊維の使用は増えて行くものと見られている。

しかしながら更に燃費を良くするために現在注目されているのがエンジンだ。

米国ジェネラル・エレクトリック(GE)は次期大型機(777X)のジェットエンジンのタービンブレード等を従来のニッケル合金から新素材の炭化ケイ素(SiÇ)繊維素材に切り替える。

この繊維はCMCと呼ばれるセラミックスとの複合材に加工されたうえでエンジン部品に形成される。

この炭化ケイ素(SiC)繊維はニッケル合金に比べ重さが3分の1、耐熱温度が摂氏1800~2000度あるため、現在行っているエンジンの冷却をする必要がなくなりエンジン重量の軽減と高温燃焼による推力が向上し燃費が改善する。

炭化ケイ素(SiC)繊維を生産出来るのは現在世界で2社しか無い。

それが宇部興産日本カーボンで、両社が素材をGEに供給しGEが複合材に加工する。

宇部興産は25年までに宇部工場内に工場を新設し年間200トン体制を目指す。

GEも19年に米国内で100トン以上の能力の工場を立ち上げ日本カーボンと共同で増産する予定だ。

ボーイングの次期大型機777Xの後部胴体、中央翼、中部と前部胴体の製造は

夫々三菱重工、富士重工、川崎重工が東レから炭素繊維の供給を受け、製造する。(更に後方の飛行制御装置はナブテスコ)

米国は勿論世界で生産される航空機への日本企業の役割はこれからますます大きくなりそうだ。

 

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竹で新素材

新素材セルロースナノファイバー(CNF)は植物中の繊維(セルロース)をナノレベルにほぐして作る。これまでは製紙会社が得意の木材パルプを原料にしていた。

しかし日本には竹という植物もたくさんあり、特に最近放置竹林による被害が深刻化しており、対策に悩む自治体が新たな活用方として期待を集めている。

竹から作るCNFは他の樹木から作るCNFと比べてプラスチックなどの樹脂との馴染み易い。

中越パルプ工業は竹からCNFを作る技術を九大と確立した。今年6月から鹿児島県で商業生産を始める。木材パルプと合わせ年間100トンの予定。

鹿児島県は竹林面積が日本で一番。林野庁によると全国の竹林面積は16万1千ヘクタールで81年より約12%増加しているそうだ。

放置竹林の被害は京都で杉やヒノキが枯れる被害が、香川では台風時に土砂災害が起きている。

竹はこれまでは竹炭や紙、道路の舗装材などに加工されてはいるが需要は減っている。

同社は今春以降宮城県石巻市で年間500トン以上のCNFを生産出来るよう規模を拡大する予定だ。

最大の課題は1kg数千円とされるコストだ。原料となるパルプは1kg50円程度だが繊維をほぐす加工に手間がかかるためだ。

これまでに木材パルプからのCNFを使った商品としては、かすれにくく乾きやすいボールペン(三菱鉛筆)、消臭効果を高めた大人用おむつ(肌に触れない部分にCNFシート使用)(日本製紙)などがある。

更に最新技術製品への応用としては、透明ナノペーパーとして薄い太陽電池などへの応用開発がなされている。

 

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動き始めたCNF製車体研究

炭素繊維の次の新素材としてセルロースナノファイバー(CNF)の研究が盛んになってきた。CNFは鋼鉄の5分の1の重さで5倍の強度を持つため、強度が必要で重量を減らしたい自動車用途が本命と見られている。

この度京都大学とデンソー、環境省らはCNFを使い自動車の重量を1割軽くする研究を始めた。燃費が改善し走行時の二酸化炭素発生量を減らす。自動車の重量を1割軽くすると燃費が5%向上し、車1台が10万キロ走る時の二酸化炭素排出量を約0.5トン削減出来るそうだ。

環境省は17年度からの3年間で総額120億円規模を支援し、家電や住宅、産業機械にも用途を広げる方針。

共同研究には京大を中心に約20近くの企業や大学が加わる予定。その分担項目はパルプを薬品で効率よくほぐす量産技術を開発するグループ、空調やドアの部品などをシアsクスルクループ、試作車を作るグループに別れる。

実用化の最大の課題は一般の車体に使う鋼材に比べて高い価格の引き下げだ。

政府は地球温暖化対策を目指す「パリ協定」を受け、30年に温暖化ガスの排出を13年比で26%削減する目標を掲げる。削減の為の革新的技術は100件ほど考えられているがCNFは大いに期待されている。

なおCNFの液体としての利用・製品応用については、過去の記事で記述しているのでご参照願いたい。

また今後共CNFを始めとした新素材については新しい情報が入り次第記事を書く予定。乞うご期待。