10月に入るとすぐに恒例のノーベル賞だ。
自然科学系3賞は、10月2日に生理学医学賞、3日に物理学賞、4日に化学賞がそれぞれ発表される。
昨年は東工大の大隅良典栄誉教授が生理学医学賞を受賞し、4年連続で日本人受賞者が誕生するか期待が高まる。
以下3つの分野で、私の独断も含めて今年受賞の有力候補者と其の研究内容項目を挙げる。
1.生理学医学賞
(1)京都大学の本庶佑(たすく)特別教授
体内の異物に抵抗する免疫ブレーキ役のたんぱく質「PD―1」を発見。
PD―1の働きを抑えれば、免疫細胞によるがん細胞への攻撃が再活性化することを
発見し、これを応用した小野薬品工業の抗がん剤「オプジーボ」の開発につながった。
日本のノーベル賞と言われる京都賞を受賞。
(2)東京農工大学の遠藤章特別栄誉教授
コレステロールを下げる薬の開発につながった物質「スタチン」を発見した。
この業績で山中伸弥教授や大村智特別栄誉教授も受賞したガードナー国際賞を受賞。
更に日本国際賞、ラスカー賞なども受賞している。
(3)大阪大学坂口志文特任教授
花粉症をはじめとするアレルギーの予防・治療が可能になるかもしれない
夢の細胞「制御性T細胞」の発見。
(4)独、米の2氏と石野良純九州大学教授
全遺伝子情報(ゲノム)を自在に変えられるゲノム編集技術の一種「クリスパー・キャス9」
こちらも
2.物理学賞
年ごとに受賞分野に傾向があるといわれているので17年は天文・素粒子分野からの受賞が濃厚だ。
1)米国勢
時間と空間の歪みが波のように伝わる現象「重力波」の観測
15年9月に米国の研究グループが重力波望遠鏡「LIGO」(ライゴ)で重力波を初検出、
「重力波天文学」という新しい分野を切り開いた。
しかしまだ早すぎるような気もする。
それなら、(スケールが違いすぎるが)
14年の物理学賞の青色LEDの様に、世界の人々に大いに役立つ製品の開発
実績ということになれば、
(2)佐川眞人氏
超強力磁石のネオジム磁石の開発。
82年の開発から既に30年以上、最強の座に君臨している。
ネオジム磁石でモーターに革命的変化をもたらし、産業用ロボットや電子機器、
EV等への貢献度は非常に大きい。
(3)東京工業大学の細野秀雄教授
鉄による超電導体、酸化物半導体「IGZO」、アンモニア合成触媒(化学賞だが便宜的にここに記載)の開発。
が挙がられる。どれもノーベル賞級の発明だと思う。
3.化学賞
化学賞は有機化学や生体分子科学、物質材料など、幅広い分野から選ばれる。
昨年は有機化学分野の「分子機械」が選ばれたため、今年17年は生化学や材料などの研究者が有力と言われている。
とは言っても、「広く世界中の産業、生活に役立っている製品の開発に対して」であれば
何と言ってもリチウムイオン電池ではないだろうか。
(1)グッドイナフ教授、旭化成顧問の吉野彰氏の2人と、
東芝リサーチコンサルティングの水島公一氏
(2)中部大学の山本尚教授
物質同士の反応を活性化する触媒の研究に取り組み、「酸触媒」という触媒に特殊な分子を結合させると、目的の物質を効率的に取り出せることを発見した。
歴代のノーベル賞受賞者が事前に受賞した人が多い、「ロジャー・アダムス賞」を
受賞している。日本人ではノーベル化学賞を受賞した野依良治氏に続き2人目。
(3)九州大学の國武豊喜特別主幹教授
人工細胞膜の作成で人工細胞や膜たんぱく質などの研究が進展した。
細胞では脂質分子が二重膜を作り、外界と内部を隔てる。この膜は極めて破れやすく、人工的に再現するのは不可能と思われていた。
(4)東京理科大学の藤嶋昭学長
光触媒の発明。毎年挙がっている。
(5)桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授
次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」を発明。
尚、産業、社会への貢献度の大きい基本材料である
炭素繊維、光ファイバー(光通信)でのノーベル賞に関してはあまり話題にならないが、
過去これらへの授与はないようだ。
これらは全世界の生活・産業への貢献が非常に大きいので、その貢献者にはやはりノーベル賞がふさわしい。
今年の発表は後数日、静かに待つのみだ。
尚ノーベル賞の選考についてはこちらをご参照。