NIMS一般公開参加

先日(4月21日)つくば市にあるNIMS(国立法人材料・物性研究所)の年に1日一般に公開されるイベントに行ってきたのでその様子を紹介します。
ただ、全体は3地区に別れていて、しかもそれぞれが膨大な設備、展示内容なので見たのも一部、ここで紹介するのもまたその中の一部です。現場撮影は禁止だったり、説明を聴くだけで写真を撮る状況ではなかったので、「ブログ映え」する写真が少ないですが・・・。

つくば駅前のバス乗り場でNIMS行き循環バスに乗る

NIMS到着

千現地区の建屋配置図

入る前に受付を済ませる

室内に千現地区と他地区の建屋模型があった。

入って直ぐの展示ブース(子供向けが数件あった)

展示パネル

パネル2

棟内各階の研究室

スピントロニクスを用いた新しい熱利用技術

DYフリーのNd磁石の開発

熱↔電気変換
(パネル省略)

棟を移る時に、遅咲きの木蓮に癒やされる

M会場の入り口の様子

走査型トンネル顕微鏡で観察された物質・材料の表面

ノーベル賞の光を見よう

超電導パネル
(「電子がクーパー対を形成することで起きる」とは知らなかった)

4時過ぎ、車で来た人達の帰宅(並木地区)

天気が良くて大変気持ちのいい一日でした。

NIMSについて、及びイベントの詳細は、最後にリストアップしたサイトを参照して下さい。

とにかく日本を代表する研究施設ですので大変立派なものです。
そして日頃研究に没頭され忙しい研究者の方々が、この日のために準備をされ、丸一日一般人のために時間を使って対応していただけるわけですから、大変ありがたいことです。

この様な機会を利用しないのは大変もったいないことです。

まだ行かれたことのない人は是非計画を立てて出かけられては如何。
来年も4月の日曜日に有るはずです。
「百聞は一見に如かず」
子供さんと一緒でもいいし、一人でも。

成り行きで回るのもそれはそれで楽しいと思いますが、
出来たら事前にNIMSのホームページで見たいところを調べておいて、
計画的に回れば1日有効に使えると思います。

それと専門が対応されるわけですから、展示分野に関してはどんなことでも答えてくれると思います。
是非聴きたいこと、質問事項を考えて行けばより有効な見学となるでしょう。

NIMSについて
NIMS: 国立研究開発法人物質・材料研究機構
(National Institute for Materials Science)
2001年4月に旧科学技術庁所管の2つの国立研究所である金属材料技術研究所と無機材質研究所が合併して発足した。
2016年10月、理化学研究所産業技術総合研究所とともに特定国立研究開発法人に移行した。

一般開放関連ページ
NIMSの一般公開とは

NIMS一般公開2019

2019年のプログラム一覧

2019年度NIMS Open Facilityユーザースクールのご案内

 

NIMS実験動画集
超電導飴

これぞ、サビの正体!

亀裂を自分で修復するセラミックス

竹のようにしなやかな鉄

交換不要!複数回の巨大地震に耐える制震ダンパー

究極の充電式電池! リチウム空気電池開発に迫る

全固体電池 次世代電池の有力候補(2017年5月12日配信)

蓄電容量はLi電池の15倍、NIMSのリチウム空気電池

 

 

 

 

 

 

 

開発進む次世代電池

現在リチウムイオン電池が全盛ではあるが、いくつかの問題や課題(火災の危険性、充電時間が短い、容量が小さい、資源問題等)があり、これらを乗り越える次世代電池の開発競争が激しくなっている。
以下その概要は以下の通り。

電池の種類 特徴 用 途 現在の課題 実用化の目標
全個体電池(硫化物型) 急速充電が可能  

電気自動車(EV)

空気に触れるとガスが生じる 2020年代前半
(トヨタは過去22年としたが)
全個体電池(酸化物型) 安全で扱い易い イオンの動きが遅い(10分の1) 2030年代
(小型はTDK等で先行試生産中)
ナトリウムイオン電池 資源が豊富
安価で高い出力
定置型大型蓄電池

(風力発電用)
(太陽光発電用)

電池が重い
(EVには不向き)
数年後
リチウム硫黄電池 安価で高容量 耐久性
(硫黄が溶け出し劣化し易い)
2030年以降
リチウム空気電池 小型で軽量 ドローン
ウエアラブル端末
水分に弱い
寿命が短い
2025年

1.全個体電池
2011年東工大菅野教授が既存の液体電解質の性能を上回る固体電解質を発見してからその後急速に研究が進展した。ただし硫化物系のため、空気に触れるとガスが生じる等の問題がある。これを解決できる酸化物系の開発が進んでいるがイオンの動きが遅い等の問題があり実用化は硫化物系よりだいぶ先になるとみられている。
電気自動車(EV)用途に、トヨタやパナソニックが開発中。
しかし非自動用としてセンサーやウエアラブル端末には、酸化物系の小型製品が既にTDKやFDKで試生産されている。

全個体電池に関しては別途また取り上げたい。

2.ナトリウムイオン電池
ナトリウムイオン電池の最大の魅力は安さだ。資源は普遍的に存在し枯渇の心配はない。また電極はリチウムがコバルト等の高価な金属を使用するのに対し、安い鉄などが使える。課題は電池が重くEVに乗せると後続距離を伸ばし難いこと。
したがって移動用ではなく自然エネルギーで作った電気を蓄える定置型の大型電池が有力。実用化も数年後と見られている。

3.リチウム硫黄電池
安価な硫黄を使うリチウム硫黄電池も自動車用は不向きで、ナトリウムイオン電池と同様定置型が適している。コストは4分の1になるとされるが、電極の硫黄が溶け出しやすいなど耐久性が問題。

4.リチウム空気電池
一時電池としては既に販売されているが、二次電池として現在開発中。
小型電池として有望。空気中の酸素で充放電する。ドローンやウエアラブル端末等の用途が期待されている。18年4月ソフトバンクとNIMS(物材機構)が25年の実用化を目指し共同研究を始めた。

最後に
現在全盛の液体電解質を用いたリチウムイオン電池の後継として全個体電池を始めとして
各種の電池が研究・開発されているが、現行電池の改良も進んでいるため、中型以上の電池については、完全に置き換わり得る電池が出てくるかまだ予断を許さない。
現在全個体電池が最も注目されているが、IOT時代を見据え、既に大量の超小型品が生産されている現状を見ると、まず超小型全個体電池が最も早く生産拡大・普及していくのでは無いだろうか。

 

次世代電池サイト
その1.(NEDO)
その2.(JAIMA)
その3.(JST)
その4.(日経XTEX)

 

 

 

水と窒素からアンモニアを造る

アンモニアに関してはこれまで本ブログで何回か取り上げたが、合成法に関してもハーバーボッシュ法(高温・高圧下の反応で莫大なエネルギーと巨大装置が必要)に代わる方法として、東工大の細野秀雄教授らの「エレクトライド触媒」を用いる方法について取り上げた。
東工大のこの方法は、現在味の素などと協力して2021年をめどに実用化を目指し研究されている。ここから

一方今回新たに更に画期的と思われる方法が開発されたのでご紹介したい。

常温・常圧で合成するのは上記方法と同じだが、水素原料がなんと水なのである。
触媒と還元剤の存在下、水を窒素と混ぜるだけでアンモニアができるのだそうだ

要旨
東大の西林仁昭教授らは、常温・常圧の条件下でアンモニアを合成する手法の研究に取り組んでいるが、今回新たな手法を開発した。還元剤としてこれまでの高価な薬剤から有機化学でよく使われるヨウ化サマリウム(SmIを使い触媒としてモリブデン化合物を用い
従来の200倍の大幅に効率の高い方法を開発した。

                      

 

今後は一度使用の還元剤のヨウ化サマリウムの再利用方法を開発すると共に、
日産化学と協力して大型プラントでの応用を目指す

 

最後に
アンモニアは肥料や火薬や医薬品の原料になるだけでなく、自身が燃料となることや、水素の供給源として運搬や貯蔵に便利なことから、水素社会の一翼を担う裏方として、またはアンモニアが主役となるアンモニア社会となる可能性を秘めているといわれている。

 

<参考サイト>
◎モリブデン触媒に関して
・世界最高の活性を示すアンモニア合成触媒の開発
東京大学 西林研究室

◎ヨウ化サマリウム(SmI2)について
強い一電子還元剤であり、例えば水を速やかに還元して水素に変える。
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