日本の太陽光パネルメーカーの生き残る道は?

日本の太陽光パネルの世界シェアが10年前から大きく後退してしまっている。

かつて(2005年)日本の太陽光パネルが世界の生産量の上位トップ5社の中で4社を独占していた。
(1位シャープ、2位Qセルズ(独)、3位京セラ、4位三洋電機、5位三菱電機と日本勢は約50%を締めていた。

しかし2016年現在、1位ジンコ・ソーラー(中国) 2位トリナ・ソーラー 3位カナディアン・ソーラー(カナダ) 4位JAソーラー(中国) 5位ハンファQセルズ(韓国)と日本勢は5位以内には入っていない。なんと10位圏外に陥落してしまったのだ。

液晶やELも最初に革新的な製品を出しながら、結局は外国勢に負けてしまったパターンと同じだ。携帯は国内だけで生き残っているためガラパゴス携帯(ガラケー)といわれている。

太陽光パネルで日本勢が外国勢に負けた理由としては次の様な要因が揚げられている。
1.外資参入を阻む複雑な流通
2.買取制度によるコスト意識の低下
3.国内製を好むユーザー
このよう国内向き志向な要因で価格競争力を失い外国勢に席巻されてしまった。

具体的には
1。海外ではパネルメーカーがパネルの施工・保守までを一気通貫で行う。
これに対し日本では中小工務店が施工を担当するが、メーカーと工務店の間に住設機器販売店が存在するので、どうしてもコストが上昇する。ただ日本の狭くて複雑な形状の土地や住宅・ビルの屋上にパネルを置くには中小工務店が必要だった。

2。再生エネでつくった電気を一定期間決まった価格で買い取るFIT制度が始まったのが12年7月。太陽光の場合当初は普及促進を狙い1kw時40円と非常に高額に設定された。導入には効果が大きかったが結局この高さがユーザーのコスト意識を薄れさせメーカーのコストダウン努力にブレーキを掛けてしまった。
買取価格は年々引き下げられて現在1kw時21円になっており、18年には20円、そして数年後には10円前後まで下がる見通しではある。
しかし、中東のドバイでは4円で売電しても採算があう太陽光発電がある。世界1位のジンコ・ソーラーと丸紅が3円を切る事業に着手しているのだ。

3。日本のユーザーは、工務店が安い外国製を提案しても、割高な日本メーカーの方を選ぶという。その心理は住宅を一生の買い物と考えることから屋根の上のパネルも同じような感覚を持つため、安さよりも信頼感や知名度に重きを置くためだそうだ。
しかし最近は消費者も割安な海外パネルに目を向け始めている。

パネルの生産増大に関して、中国の上位メーカーは日本メーカー京セラの年間出荷量に当たる分程の生産能力増強を毎年実施しコスト競争力を高めている。

日本のメーカーはパネルを単体で売る事業モデルはもはや出来なくなった。

それでは日本のパネルメーカーの生き残り策は?

1.生活の質を向上させる高度な製品・システムとする
住宅用太陽光パネルで作った電気を、単体畜電池やEVの電池も組み合わせてAIで家庭用エネルギー管理システム(HEMS)を構築しネットゼロエネルギーハウス(ZEH)を目指す

 

高変換効率太陽電池の開発とこれを使う高効率パネルの製品化
生産量では外国勢に席巻されてしまった日本メーカーだが日本のパネル開発力はトップレベルを走り続けており、その技術には世界が一目置く。
其の1.今年のノーベル賞候補にもあげられた、桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が開発した薄くて軽い「ペロブスカイト型太陽電池」だ。
薄膜型で軽く圧倒的に低コストで作成出来る。性能もシリコン製に近づいている。
其の2.カネカも8月NEDOとエネルギー変換効率が結晶シリコン太陽電池では世界最高の変換効率26.63%の太陽光電池を開発した。
其の3.換効率60%以上が期待される量子ドット太陽電池の開発も進行中だ。
これらの新型高変換効率の太陽光電池の製品化を行うことができれば再び日本メーカーが躍進する日がくると期待できる。

ところで、外国製の安いパネルを使って日本が活躍する方法もある。
商社の丸紅は外国製の安いパネルで大規模な発電所の建設をアラブ首長国連邦ドバイで行っている。
丸紅関連サイト1日経
丸紅関連サイト2EE times japan

今後もどしどし世界各地に建設してもらいたい。
(個人的にはこれが原子力発電所の抑制・廃棄につながると思う)

<参考サイト>
2.高変換効率太陽電池の開発関連
宮坂力特任教授が開発した「ペロブスカイト型太陽電池
NEDOとカネカが開発の換効率が26.63%の太陽光電池
量子ドット太陽電池

1.高度な製品・システム関連(ZEH)
資源エネルギー庁
セキスイ

 

尚本稿は日経産業新聞10.25他を参照した。