新規仲間入りナノカーボン、カーボンナノベルト

これまでに発見され、現物の素材が入手できるナノカーボンの基本素材としては
1.炭素原子60個からなるサッカーボール状分子のフラーレン
2.炭素原子の六員環が筒状のシート構造のカーボンナノチューブ(CNT)
3.炭素原子の六員環が単層のシート構造のグラフェン
の3種がある。
今回これに新しく合成に成功に成功したナノカーボンであるカーボンナノベルト(CNBなのだろうがまだ正式には未使用のようだ)が仲間入りした。

このカーボンナノベルトは、約60年前に既に理論的に存在が予想されていたが、自然界になく、人工合成を世界中の化学者が挑んで来たが、炭素の六員環を歪ませて結合させるのが難しいことから誰も成功していなかった。

このような状況の中で、この度名古屋大学の伊丹健一郎教授らが始めて合成に成功した。

教授らは、安価なパラキシレンを原料とし、臭素化した幾つかのパーツを結合させ最終的に炭素の6員環が12個からなる環状ベルトの合成に世界で始めて成功した。

今回のカーボナノベルトの意義は、この分子自身性質が均一であり、これを鋳型として新たな炭素を順次結合させてゆけば欠点のない純粋で均一なCNTが作れることにある。


「CHUNICHIWeb」

というのもこれまでのカーボンナノチューブ(CNT)は直径や長さが短くバラバラな混合物しか作れず、純粋な研究や産業応用上のネックとなっていた。(私見だが、ノーベル賞の授与が後から発見されたグラフェンに先をこされたのもこの点だったのかもしれない。)

カーボンナノベルト自身でも赤色の蛍光を発する発光材料としてまた他のナノカーボンと同様半導体材料としても使える可能性もある。
伊丹教授によれば「CNTが抱える諸問題を解決する”鍵分子”になる。さらに未知の機能が見つかるかもしれない」そうであるから今後の研究成果が楽しみだ。

今後このカーボンナノベルトを使って直径や長さの違った純粋、単層のカーボンナノチューブ(CNT)が作れれば、基礎研究、応用研究が急激に進み、CNTと合わせたノーベル賞となることが期待される。

参考サイト1.newsitch
参考サイト2.ITmedia News
参考サイト3.CHUNICHIWeb

線虫を使う画期的早期がん診断方法

我が国ではがんは1981年から死因第1位で、2人に1人ががんを経験し、3人に1人が
がんにより死亡すると言われている。

事実私の知人、友人にもガンでなくなった人はたくさんいる。
とりわけ悲しかったのは、親友が膵臓がんでなくなった時だ。
3ヶ月前までは全く気づかなかったのに。
膵臓がんは初期発見が困難ながんだそうで、発見した時はもはや手遅れと言われている最も恐ろしい病だ。

一般的にがんによる死亡を防ぐ最も有効な手段は、早期発見・早期治療だが、我が国のがん検診受診率は約30%だそうだ。
この受診率は他の先進国と比較しても低く、我が国でがん死亡率が高い大きな要因となっている。低受診率の理由としては「面倒である(医療機関に行く必要がある)」「費用が高い」「痛みを伴う」「診断まで時間がかかる」「がん種ごとに異なる検査を受ける必要がある」などが挙げられている。

現在これらの問題を全てクリアするガン検査方法の開発が進められている。

以前NHKのEテレ「サイエンスZERO」で紹介されていたのを見たが、その時は簡便な方法だと言うことは分かったが定性的過ぎて十分その凄さを理解していなかったようだ。
しかし先日のテレビで最近の状況が詳しく解説されていてこれは凄い方法だと理解した。
なぜなら簡便なこの方法はまさに上に上げた検診を妨げる要素を全てクリアする画期的な方法だったからだ。

このがん検診方法は、九州大学大学院生物科学部門の廣津崇亮助教らが線虫という生物を用いて開発した。

この方法の原理は、線虫の嗅覚を用いるもので、がん患者の尿には近寄っていき、正常な人の尿からは遠ざかるという性質を利用するシンプルな方法だ。

線虫という生物は地球上の1億種位いるそうだが、がん検診に使うのはc-エレガンスという種類で、尿は10倍稀釈で上記性質を示すそうだ。線虫を利用したこの画期的ながん診断テストは(n-nose)と呼ばれている。

この方法のメリットは
1.患者の苦痛がない:検体が尿。
2,簡便:尿を取って検査機関に送るだけ。
3.診断結果がすぐに分かる:1時間半
4.費用が安い:線虫が安く培養出来、高価な機器も使わない。
5.早期発見が出来る。
6.信頼度が高い:242検体による発見精度は95%。
などであり、
この方法の早期実用化の為、廣津助教はバイオベンチャーを起こすとともに、装置の開発を日立と進めている。
この方法(n-nose)により、ガン受診率の飛躍的増加とそれに伴う早期がんの発見率の上昇、そしてがん患者の死亡数の減少、ひいては国の医療費の大幅削減につながることが期待されている。
まさに世界が待望む技術だ。
廣津助教によれば、実用化は2019年だそうだ。

そして将来は遺伝子組み換えにより特定のガンに反応する線虫を作ることにより
がんの種類の特定も出来る様になるとのこと。
そうなればガンは“治る病気”であると認識されるようになり、世界人類全体の福音となると期待される。

本記事は下記サイトを参考にした。
参考サイト1
参考サイト2
参考サイト3

 

 

カーボンナノチューブ(CNT)の新技術への応用

ナノカーボンといわれる炭素の基本素材は3種で、
発見の歴史順に
1.フラーレン(C60):炭素原子60個から構成されるサッカーボール状の分子
2.カーボンナノチューブ(CNT):炭素原子から構成される六員環がネットワークを作り、
それが単層あるいは多層のチューブ状につながった物質
3.グラフェン:単層CNTを切り開いた状態の一枚のシート(黒鉛の単層一枚)(参考サイト2
がある。
1のグラフェン発見者らは1996年に既にノーベル賞を受賞している。
日本人(遠藤守信氏信州大学の特別特任教授 、飯島澄男名城大学終身教授)の発見・研究になるCNTは毎年候補に上がっていた。
ところが3のグラフェンの方が2010年に先に受賞してしまった。
このような状況の中で更に、受賞するにはCNT研究の深化とその応用技術・製品としての更に大きな成果を世界に発信し、世界の推薦者及びノーベル委員会を納得させる必要があると考えるのだが。

CNTを使った技術開発(最近のニュース2件)

1.現行リチウムイオン電池の15倍の容量をもつ次世代電池の開発
物質・材料研究機構の久保佳実チームリーダーらはリチウム-空気電池の正極材料にCNTを採用し、従来のリチウムイオン電池の15倍の電池を蓄えることに成功した。
リチウムイオン電池の蓄電容量は負極のリチウムが溶け出し、正極で酸素を反応して析出する過酸化リチウムの量で決まる。
研究チームはCNTの不織布状のシートを正極に採用したところ、シートを押し広げるようにして過酸化リチウムが大量に析出しており、従来のリチウムイオンの15倍にあたる1平方センチメートル当たり30mA時の蓄電容量を確認した。
CNTの大きな表面積や柔軟な構造が大きな容量に繋がったとみている。
今後はセルを積層したスタックを作り実用化に近い形の開発を行う。
詳しくはここから

2.燃料電池の触媒として白金の代わりになる可能性ある技術
燃料電池は水素と酸素の反応から電気を取り出せ、排出するのは水だけの為、
クリーンなエネルギーとしての燃料電池への期待は大きい。
しかしその反応を起こすためには高価な白金が必要で高コストの原因となり普及の妨げになっている。
九大の中嶋直敏特任教授らは白金を使わない燃料電池用触媒を開発した。
開発した触媒は高純度のCNTを高分子で覆った表面にニッケルやコバルトからなる金属酸化物の微粒子を均一に付た構造だ。
基本性能実験では電気を生み出す能力は白金触媒よりまだ低かったが、白金触媒より耐久性は高かった。今後触媒性能の改善を行い5年後の実用化を目指す。
詳しくはここから

 

世界を一変させたネオジム磁石の開発

世紀の大発明と言われるネオジム磁石は1982年に発明されてから30年以上に亘って、最強の磁石として、電気自動車(EV)や風力発電、ロボットなどの普及に貢献している。
これを発明したのは、サラリーマン研究者だった佐川真人氏(73)。
毎年ノーベル賞にもノミネートされている。

日経産業新聞の仕事人秘録のコラムに同氏の幼いときから開発までの足跡が「ネオジム磁石執念一路」として連載(2016年12月7日から22日迄の全11回)されていたので、その概要をご紹介する。
<子供時代>
科学者を意識し始めたのは、小学1から2年生の時父親からノーベル賞の湯川博士の記事を読み聞かせてもらったのがきっかけ。その時「僕は科学者になってノーベル賞をとる」と両親に宣言したそうだ。(小学1,2年で、凄い!!)
小学6年の時父親の事業の失敗で貧乏になり兵庫県に引っ越した。
市立尼崎高校に進学。
<大学時代>
神戸大工学部電気工学科に入学。しかし電気工学には身が入らず、数学、物理、化学をよく勉強。
基礎研究がしたく、大学院に進学。永田教授の応用物理研究室で材料科学を学ぶ。
更に「ノーベル賞」を貰えるような研究をしたい」と磁石業界に人材を輩出した東北大学の博士課程に入学し、金属材料研究所では、自分でサビ防止のテーマを選び博士号を取得する。
<富士通時代>
大学の教員になることが出来ず、富士通に入社する。
配属された研究所ではこれまでの知見が全くないリレーやスイッチに使う磁性材料の開発を命じられた。
入社4,5年後、フライングスイッチに使う磁石の開発を命じられる。要は壊れにくい磁石の開発だ。
当時(1976,7年)はサマリウム・コバルト磁石が最強磁力とされており、この磁石の物理強度を高める研究を始める。

サマリウム・コバルト磁石の発明者は松下電器産業を経て信越化学工業の磁性材料研究所長を務めた俵好夫氏(この人はなんと歌人俵万智さんの父上だそうです。)

しかし研究をすすめるにつれ「なぜコバルトなのか」という疑問を抱く。
元素の中で磁性の強い元素は鉄、コバルト、ニッケルの3つだけだが、磁石の主成分は昔から鉄だった。だから本来なら鉄を主成分とする方が強い磁石になるはず。

コバルト主成分の考えは、1916年本田光太郎が鉄に多量のコバルトを合金化すると鉄だけの磁石の3倍も強い磁石になることを見つけKS鋼と名付け、そのKS鋼が世に出てから主流となった。
その結果それ以後アルニコ磁石(アルミニウム・ニッケル・コバルト)、サマリウム・コバルト磁石が開発される。

磁石は17元素からなる希土類(レアアース)を使うと強くなることがわかっている。
(希土類とは、スカンジウム、イットリウムとランタニド(15元素)のこと)
そこでどうせレアアースを使うのなら、コバルトより鉄の方が良いと素直に考えた。

当時世界中の研究者は「コバルトが必要」という固定概念のため、コバルトの一部を鉄に置き換える実験ばかりしていた。
しかし鉄の割合が2割を超えると磁気特性ががくんと落ちるため皆そこで諦めてしまった。

そこで100%鉄に置き換える(サマリウムを全く使わない)という発想で、なぜ鉄に置き換えても磁石にならないのかの理由を思索した。しかしアイデアは全く出なかった。

発明につながる着想は、1978年の金属材料研究所で開催された「希土類磁石基礎から応用まで」という会合で、東北大の浜野教授の短い説明から得た。
その説明とは「磁石になるには鉄と鉄の原子間距離が近すぎる」ということだった。

そこでレアーアースと鉄化合物の間に炭素やホウ素といった原子半径の小さな原子をにいれれば、鉄の原子間距離が広がるのではないかという仮説を立て動き始めた。

サマリウム+コバルトの代わりに、サマリウム+鉄と炭素やボロンを次々と試した結果
「サマリウム+鉄+ボロン」が有望という結果を得た。
レアアースと鉄だけの組み合わせの化合物ではキュリー温度(磁石が磁気を失う温度)が低すぎて実用磁石にならなかった。

ボロンがいいと分かり、サマリウムを除く16種のレアアース(つまり残り全ての)を混ぜてみた。すると「ネオジム+鉄+ボロン」がキュリー温度と磁気異方性(磁気モーメントの方向を固定する性質)が高いことを発見した。
しかし組成の他に、内部の磁化の乱れが全体に及ぶのを防ぐ為のセル状組織を磁石の中に作り込む必要があった。しかしこれが全然できなかった。

 

最強磁石を追い求めている内に、本来のテーマであるフライングスイッチに使う壊れないサマリウム・コバルト磁石が完成してしまった。

そこで今研究している「ネオジム+鉄+ボロン」の最強磁石の研究をしたいと会社(富士通)に申請したが却下された。

富士通研究所からは「磁石は材料メーカーがやること。半導体薄膜などの最先端の研究」を命じられたが、会社の方針に沿ったテーマ(磁気バブルメモリー等)を提案した。

昼は会社から認められた研究を、夜や土日は「ネオジム+鉄+ボロン」合金の研究を続けた。

 

30代後半になり管理職試験を受け合格し、特許の仕事に移り研究の第一線から退く。

磁石の実験がやりにくくなり、会社を去る決意を徐々に固めたいたためか上司との折り合いが悪くなり、強い叱責を受けた日、辞めますと啖呵を切りついに1982年1月38歳の時辞表を出した。

奥さんの承諾もあっさり貰えたが、辞表提出前から磁石研究を続けられる転職先として考えていた富士電気化学(現FDK)への転職は叶わなかった。

会社の規定で、辞表提出後3ケ月は在籍する義務があり、その間話しかけられることなく同僚は遠ざかって行った。しかしじっと座っているのは嫌で、大学の先輩でもある上司に空いている実験室を使うことを願い出ると、許可をもらうことが出来、溜まっていたアイデアを3ヶ月間で試すことが出来た。

この間で念願のセル状組織作りに成功し、成功した瞬間天井に手が届かんばかりに跳ね上がって一人で大喜びした。

転職先は関西の磁石メーカーに決めていたので、大阪に本社があった住友特殊金属の社長宛に

「コバルトを使わない最強磁石のアイデアがあると」手紙を書いた。

数週間返事が来ないので直接電話すると幸い岡田社長と直接会話することができ、面接後即採用となった。

<住友特殊金属時代>
住友特殊金属には1982年5月に入社。
まず「ネオジム+鉄+ボロン」の比率と添加元素の組成の検討に着手。
練っていた組成50通りのリストと製造条件を部下に渡し次々に試した。

正解はそのリストの中にあった。当時世界最強のサマリウム・コバルト磁石の記録もらくらく超えた。その時の比率はネオジム15、鉄77、ボロン8で今ネオジム磁石と呼ばれているもの。
しかし50℃以上になると磁力が急激に低下する欠点があった。

ネオジムの一部を希土類のレアーアースのジスプロシウムに置き換えると温度特性が格段に良くなった。摂氏200℃でも磁力は落ちなかった。
(ジスプロシウムは2010年に尖閣諸島の帰属問題で中国が輸出を停止)

82年8月から権利侵害されないように特許出願をどんどん進めた。
アメリカの研究チームも違う製法で出願していたが2週間早かった。

開発はとんとん拍子で進み発明してからわずか3年後の85年に量産を開始した。
ネオジム磁石の生産量は85年に年間200トン、86年400トン、87年800トンと倍倍ゲームで増えた。

主な用途は特に、HDDの磁気ヘッドを動かす駆動装置。サマリウム・コバルト磁石の2倍の磁力があるのでHDDの大容量化、エアコンの小型・省電力化はネオジム磁石が支えたと言われる。

ネオジム磁石の論文発表や特許出願でのトップネームを巡る社内関係のしこりで、在籍5年半の住友特殊金属を去る。住友特殊金属は2004年日立金属子会社化され現在完全に吸収合併されている。

<ベンチャー時代>
1998年2月住友特殊金属を辞めインターメタリックス(IM,京都市)というベンチャー企業を設立し世界を飛び回るも思うような成果は得られず。

2000年優れた事業を支援する「京都市ベンチャー企業目利き委員会」に選ばれる。
テーマはジスプロシウムが無くても耐熱性が高いネオジム磁石の開発。

2002年中小企業基板整備機構が運営する京大桂ベンチャープラザ(京都市)に入居し研究に専念。
そこで「プレスレスプロセス(PLP法)」という磁石の製法からプレス工程を省く新製法を工業化。
PLP法のメリットは、切り分け作業が無いので切り屑が出ない、酸素などの不従物の混入が無い、どんなに微細な粉末でも成形して磁石を作れること等。

磁石の粒径は小さいほど保持力と耐熱性が上がりジスプロシウムの使用量が減る。
この考え方は昔からあったがPLP法で工業化の道が開けた。

2010年秋に発生した尖閣諸島問題を端緒に中国がジスプロシウムの輸出を停止したことで脱ジスプロシウムの磁石開発が加速する。

三菱商事、大同特殊鋼、米モリコープの3社が出資し、磁石製造会社のインターメタリックス・ジャパン(IMJ)を設立。
13年からPLP法によるネオジム磁石の量産を始めた。
IMとIMJはともに大同特殊鋼の全額出資になり今年(2016年10月)顧問に迎えられるも自身は京大桂ベンチャープラザ内で、組成にちなんで付けたNDGEBというベンチャーで研究を続ける。
ネオジム磁石の生産は年10万トンを超え年10%のペースで増えている。

<終章>
そもそも鉄を主成分とする最強磁石開発の元になった考えは「磁石になるには鉄と鉄の原子間距離が近すぎる」という理論だった。
そこで原子半径の小さな原子をレアーアースと鉄の間に入れれば鉄との原子間距離が広がるだろうという仮設を立てて、「ネオジム+鉄+ボロン」という組成を発見。

しかし後の解明の結果、原子間距離は広がってはいなかったことが判明。
ボロンと鉄の電子が化学反応を起こしボロン付きの鉄がコバルトとほぼ同じ状態に変わっていた。(鉄のコバルト化という現象)

2012年、社会と学術に貢献した科学者を表彰する日本国際賞を受賞。
(日本国際賞は、日本版ノーベル賞と言われる)

好きな言葉に米アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏の「Stay hungry, Stay foolish」(貪欲であれ、愚かであれ)がある。

立てた仮設は間違っていたが、信念(磁性の強い鉄が一番いいはず)を元にコツコツとやり続けた。
開発の原動力は悔しさだった。

若い研究者には、会社が認めた公式テーマと自分が情熱を持てる非公式テーマの研究を同時に進行させることをすすめる。テーマは社会の潜在ニーズに基づいて選ぶ。

次の「ニュークリエーション」(従来の常識から離れた場所で研究が始まること)を生み出して欲しい。

<編集後記>
はじめにも書きましたが上記文は日経産業の2016年12月7日から22日までの11連載を要約したものです。
当初簡潔に要約するつもりが、省き難い部分がかなりあり省けず、結局かなりの量の文になってしまいました。
尚原文で詳細に知りたい方で、新聞で読みたい人は図書館に行けば見れると思います。(要確認)
ですが、サイトでもそのまま出ていますのでこちらの方が手軽に見れますね。

最初の頁のみ下記に示しますので頁をめくって見て下さい。
ネオジム磁石執念一路(1)~(5)
ネオジム磁石執念一路(6)

 

ネオジムを超える磁石の開発

現在最強の永久磁石はネオジム磁石だ。

(ネオジム磁石は現在大同特殊鋼顧問の佐川真人氏が日立金属時代に開発した世界最強の永久磁石だ。同氏はノーベル賞候補と言われている))

しかし電気自動車(EV)の性能向上、燃費向上のためにネオジム磁石を超える高性能な永久磁石が求められている。
そこで産官学でこの目的を達成するために鋭意研究がなされている。

自動車用駆動モーターとして使う場合、使用温度が150~180℃と高いので磁石の特性が低下する。
この対策としてこれまではディスプロシウム等の重希土類元素を添加して高温特性を維持していた。
しかし主に中国からの資源入手問題問題が発生しこれを避けるため重希土類元素を一切使わない次世代磁石の技術開発が進められている。

Ⅰ。ネオジム磁石の改良  

1.国内3社(日立金属、信越化学工業、TDK)の焼結法の改良によるアプローチ。
磁石合金を粉末にした後に結晶の向きをそろえて高温で焼固める方法。
磁石を構成する材料の結晶を細かくするほど保持力は上がり耐熱性が上がる。
現在は直径3~5ミクロンまで微細化されているが、更に細かくすると磁石が酸化しやすいという問題がある。 ネオジム磁石の高性能化HAL工法

2.ダイドー電子の「熱間加工法」(米GMのライセンス)に依る方法。
合金を粉末にせず溶かした磁性材料を急冷して微細な結晶をもつ磁石材料の塊を作る。
次にこの塊を高温で加圧して扁平にすると微細な結晶が自然に磁石に適した向きにそろう。
結晶の大きさは0.2ミクロンと焼結法の10分の1迄小さくすることができ耐熱性が高まった。

本磁石はホンダの新型車フリードに採用された。

 

Ⅱ。次世代磁石の開発状況

2012年国内9企業、2団体が集まり「高効率モーター用磁性材料技術研究組合(MagHEM)」が設立され開発が進んでいる。

その進捗状況
1.静岡大小林教授らの重希土類不使用の新磁石の開発。
サマリウム、鉄、チタン、コバルトを主成分とし安定剤としてジルコニウムを加えた。
200℃の高温域でもネオジム磁石の2から3割増しの磁力の強さが期待される、

2.産総研のサマリウム、鉄、窒素を含む新磁石の開発を進めている。

3.TDKはナノレベルで材料をコントロールする「ナノコンポジット磁石」の開発に取り組む。 レアアース代替技術に望むTDK
  

4.日立金属は17年4月に新設の研究所で新磁石の研究を進める

<備考>

欧米には大手の磁石メーカーは無い。しかし中国は国を上げてEVの普及を目指しており、既に欧州の自動車メーカーが駆動用モーターに採用したとの情報もある。
重希土類を使わない(使えない)日本は上回る技術力で対抗するしかない。

今後共ネオジム磁石を超える次世代磁石開発のニュースは要ウオッチだ。

 

次の機会で、昨年12月日軽産業新聞に連載された現大同特殊鋼顧問の佐川真人氏のネオジム磁石開発の秘話「ネオジム磁石 執念一路」をご紹介します。乞うご期待。