将来は再生エネ水素によるアンモニア発電が主流になるか?

アンモニア(NH3)が非常に注目されています。

アンモニアは現在ハーバーボッシュ法によって大量に生産されその大部分は肥料として利用されていますが、その他食品、医薬品などの原料として重要な位置づけにあります。

しかし今アンモニアの次の特長が大いに注目されています。
1.水素のキャリヤー(運搬体)として優れている
2.燃やすことができ、燃やしても炭酸ガスを出さない
3.火力発電に使用できる

1の水素のキャリヤーとして注目されているのは、
①アンモニア(NH3)がその分子の中に窒素の3倍の水素原子を持つ
②アンモニアが液化しやすく、取り扱いやすい
③アンモニアが肥料製造用等の通常のインフラでの取扱(サプライチェーン)が確立されている等のためです。

純粋な水素のままだと、高圧ガスとして丈夫なガスタンクに収納するか、液化の為多大なエネルギーをかけて零下153度にしなくてはならずその運搬にも特別な容器が必要。

アンモニア以外のキャリアーを使う有望な方法については、
現在千代田加工建設が主体となって行っている、スペラ水素(トルエンに水素を付加しヘメチルシクロヘキサンMCHとする)があるがこれについては以前のブログご参照。

アンモニアの原料となる水素の製造方法はいろいろあるが、化石燃料からだと炭酸ガスが発生する

炭酸ガスを出さない製造方法としては水の電気分解があり、その電気として、太陽光、風力などの再生可能エネルギーや余剰エネルギーが期待されている。

アンモニア発電の現状を概括
非常にわかり易く書かれた添付サイトの記事を読めば一目瞭然ではあるが敢えてまとめると、
1.日揮産総研は昨年10月、再生可能エネルギーによる水素を用いたアンモニア合成とそのアンモニアによる発電世界で初めて成功したと発表した。

2.全体の流れは、
①再生可能エネルギー(太陽光)による電気で水を分解し水素を生成
②この水素と窒素を新開発の触媒を使って反応させアンモニアを合成
③そのアンモニアだけを燃料としてガスタービンで発電

3.検証結果
①開発した新触媒が従来よりも低温・低圧下(50~80気圧)でもアンモニアを製造できること。
②再生可能エネルギーの出力(水素供給量)の変動に対しても機能が劣化せず、アンモニア製造量の変動に対応できることが検証できたこと。
(当初の実証試験では、高圧水素ボンベの水素を使用、その後敷地内の太陽光発電による水素使用)
新触媒はルテニウム酸化物で、従来の炭素系担体を用いたルテニウム触媒に比べて安定性に優れている
太陽光で作った水素と新触媒で合成したアンモニアを燃料としたガスタービンで47kwを発電した。

今後
日揮は2020年代半ばを目処にアンモニア発電技術の実用化を目指す。

最後に
地球温暖化の最大の原因とされる二酸化炭素の削減が叫ばれているが、その対策として
1.全く発生しない新規なプロセスを開発する
(上述のアンモニア火力発電、アンモニア燃料電池、電解水素による各種物品製造等)
2.発生量を減らすプロセスに改善・変更する
3.発生した炭酸ガスを原料とする工業の創生
4.発生した炭酸ガスの地中封入CSS
私は3が最も効果があると思っている。これについては後日現状を紹介したい。

<参照サイト>
アンモニア合成試験装置完成(日揮)

低温・低圧でアンモニアを合成する触媒の開発(産総研)

再生エネルギー由来の水素を用いたアンモニア合成と発電に世界で初めて成功(日揮)

 

 

 

 

2018年ノーベル賞まとめ

2018年のノーベル賞まとめ
NHKノーベル賞の解説サイト「まるわかりノーベル賞2018」を出しています。
まずはここを覗いてみてください。(低学年用、文系用?)
医学・生理学賞
物理学賞
化学賞

このサイトで不十分な人は以下へどうぞ。

 .医学生理学賞
◯本庶佑・京都大特別教授(76)
本庶博士は免疫細胞の働きを抑えるブレーキとなるPD-1を発見。
このブレーキを取り除くことでがん細胞を攻撃する新しいタイプの「がん免疫療法」を実現し、がん治療薬「オプジーボの開発」に道を開いた。

◯ジェームズ・アリソン(James P. Allison)博士(70)
テキサス大学MDアンダーソンがんセンター(米国)
同じころ、免疫のブレーキにかかわる別の分子「CTLA―4」の研究を進め、
この作用を利用したがん治療薬「ヤーボイ」の開発に道を開いた。

これまでのがん治療法には①手術による切除、②放射線照射、③抗がん剤による化学療法の3つの方法があったが、これまでとは全くアプローチの異なる④免疫療法という、第4の方法が加わった。
これが両氏の発見によるもので、これにより、がん治療の選択肢が広がり、既存の治療法で効果がなかった患者を救う道も開けた。
参照サイト:朝日新聞

2.物理学賞
物理学賞は、光を使って物体を操作する技術を開発し、ウイルスのような小さな物をつまむ「光ピンセット」やレーザーによる視力開発手術につながった米国、フランス、カナダの3氏に。

授賞理由は「レーザー物理学」の分野で、これまでになかった手法を1980年代に切り開き、産業や医学分野への応用を広げたことが評価された。

アーサー・アシュキン博士(96歳)(米国)(史上最高齢の受賞者)
アシュキン氏はレーザーを微小な物に当てると、物を捕らえる力が発生することに気付き、

1987年この仕組みを利用して「光ピンセット」を開発し、生きた細菌を傷つけることなくつかむことに成功した。「光ピンセット」は、いまでは生命科学の研究に広く使われている。

ジェラール・ムル博士(74)(フランス)、ドナ・ストリックランド博士(59)(カナダ)
両氏は1980年代、パルスの幅をいったん広げるなどしてから強度を高める「チャープ・パルス増幅法(CPA)」と呼ばれる独創的な増幅法を開発。それまでできなかった超高強度の超短パルスレーザーをつくることに成功した。この成果によってレーザーを使った目の近視矯正手術(レーシック手術)などが可能になった。


ストリックランド氏は、物理学賞では1903年のマリー・キュリー(放射線の研究)、63年のマリア・ゲッパートメイヤー(原子核の殻構造の発見)以来、55年ぶり3人目の女性の受賞者
参照サイト:朝日新聞 

3.化学賞

化学賞は、生物の進化の仕組みをまねてタンパク質を作るなどして医薬品やバイオ燃料の製造技術を開発した米英の3氏に。
◯フランシス・アーノルド(62)氏、(米国)
自然界で起きている進化を、加速度的に再現する手法を開発。たんぱく質の一種である酵素の機能を、目的に応じて高めることに成功した。作られた酵素は、バイオ燃料や医薬品などの生産に活用されている。
◯ジョージ・スミス(77)氏(米国)
大腸菌などに感染するウイルスの仲間「ファージ」に遺伝子を組み込んで、それぞれ異なるたんぱく質を作る「ファージディスプレー」という手法を開発。自然淘汰(とうた)のように、その中から狙った特徴を持つたんぱく質だけを絞り込めるようにした
◯グレゴリー・ウィンター(67)氏(英国)
生物の進化をまねて、役に立つ酵素や抗体といったたんぱく質を効率よく作る道を開いた。
同氏はこの手法で治療用の抗体を作り、リウマチなど自己免疫によって生じる病気や、がんの画期的な薬につなげた。
参照サイト:朝日新聞

今年の注目は、今回受賞した技術がどこまで応用され、また発展するか、
そして2019年、どんな科学的な新発見と新技術の開発が行われるか期待したい。

今回の事前予想では医学・生理学賞が当たりましたが、またこの中から2019年のノーベル賞受賞者が出るかもしれません。いや是非出てほしいものです。