再生エネを空気に貯める、空圧電池の実証実験

電力を貯蔵することについては、
少量では昔からアルカリ乾電池など各種乾電池や、最近ではリチウムイオン電池、
新しいところではナトリウム硫黄電池などがあり、
中容量電池として鉛蓄電池や、リチウムイオン電池、酸化還元反応を活用するレドックスフロー電池も開発されつつある。

一方大量の電気を化学物質等を使わず安全に貯める方法としては、これまで揚水発電が用いられてきたが、最近これまでの方法とは全く異なる方式が注目され実証実験が行われている。

それは「空圧電池」とよばれ、圧縮空気を利用し大量の電気を貯める方法で、原理としては極めて簡単ではある。
すなわち余剰電気として送られてきた電気で圧縮機を動かし大きなタンクに空気を押し込み溜めておく。電気が必要な時はこの圧縮空気を放銃し発電機を回し電力を得る。

今回実証実験を行ったのは、エネルギー工学研究所NEDO早稲田大学らが
神戸製鋼所の装置を使って静岡県伊豆の河津町で実施した。

空気は10気圧でタンクに押し込まれた。装置の貯蔵能力は1千キロワット。圧縮機を動かす電力は近隣の風力発電所から送った。
2018年度末迄実験を続けて性能を評価する。


空圧電池実証実験装置(下記参照サイトより)

尚空気を圧縮し貯蔵する時は空気の温度が上がり、発電する時は膨張のため温度が下がるので、温熱や冷気として回収出来る。
これは断熱圧縮断熱膨張という原理で、色々な機器に応用されている。
(断熱圧縮は、自転車の空気を入れた時空気ポンプの下が熱くなっていることで実感出来ますね)
この技術の特徴は、媒体として空気しか使わないので、安全性が高く、寿命も長い。

空気を使う電力貯蔵技術を他の方式と比較した概要を下表に示す。

<電気を貯蔵する技術の主な性能比較>
圧縮空気
エネルギー
貯蔵
リチウム
イオン
電池
鉛蓄
電池
NAS
電池
レドックス
フロー
電池
充放電
効率
55~
70%
85~
95%
75~
85%
75% 70%
コスト
耐用年数 20年以上 6~10年 15年 15年 15年
安全性
設置面積
(日経新聞(2017.7.2)より転記)

再生エネルギーの普及につながるこれら電力貯蔵技術は今後とも開発競争が激化しながら技術向上が図られ、適材適所で使われる様になってゆくと考えられる。

安全性、原理の単純性、耐用年数などからこの「空圧電池」の今後の発展が期待される。

<参考サイト>
圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)システムの実証試験を開始

 

 

 

 

最近のアンモニア研究について

アンモニア(NH3)が注目されている。
アンモニアは生活環境の中では嫌われ者だが、人間が生活して行く上では無くてはならないものなのだ。
日常生活中ではアンモニアの重要性は分かりにくいが窒素供与物質として、これまで大量の肥料として世界中の農業で食料の増産を助け、人類を食糧危機から救ってきた。
また様々な食品、医薬品や化成品の原料として利用される等極めて重要な物質なのだ。
しかし近年は別の新しい応用が注目されている

1.火力発電所の燃料として
化石燃料を燃やして発電する火力発電では、大量の温暖化ガスである二酸化炭素CO2を排出する。
この化石燃料の変わりにアンモニアを使えば炭酸ガスは出さない。だが窒素酸化物(NOx)がでる。
さらに発電所では排出濃度5PPM以下の規制があるのでこれをクリアすることが課題となっている。
2.燃料電池の燃料として
燃料電池と言えばその燃料は水素(気体)だが、その製造方は現在いろいろな方法がある。
また水素は取扱い(運搬や貯蔵)が難しい(高額の設備が必要)といった問題がある。
そこで燃料としてプロパンと同様の貯蔵・運搬等の取扱いが容易なアンモニアから水素を取り出して燃料電池とする方法が注目されている。

3.新規触媒の開発によるアンモニア新合成法

アンモニアの新しい製法が現在非常に注目されている。
それは、アンモニアは以前のブログにも書いたが100年前に開発されたハーバー・ボッシュ法(後記参照)が現在なお使われているのだ。これまでにも各種の方法が開発されてきたが、採用された方法はない。
しかしながら、ハーバー・ボッシュ法は、鉄系触媒の下、高温、高圧(約400℃、200気圧)という非常にエネルギーを使う方法なので大型のプラントが必要だった。(其のために貯蔵、運搬等の設備も必要となる。)
従ってより小スケールでも生産できる省エネルギー合成法が求められていた。

ところが2015年東工大の細野教授らが開発した新触媒が、求められている新規の合成法となることが分かったのだ。
この触媒を使用すればハーバー・ボッシュ法より大幅な省エネルギー(350℃、常圧(1気圧))での合成が可能なのである

細野教授の今回の触媒発見までの詳細な経緯及び触媒組成、メカニズム等は後記文献に譲るが、
概略を記すと次のようである。

・名古屋工業大学の助手の時学生たちが作っているセメントが白い原料にも拘らず着色していることを不思議に思ったこと。
・その後そのセメント物質C12A7(12CaO・7Al2O3)が面白い性質を持つため徹底的に研究した。
・其の物質がカゴ構造であることを解明し、更に中に酸素イオンがトラップされていることを発見した。
・その酸素イオンをチタン金属と反応させ、TiO2となった後にカゴ内に電子がある、いわゆる電子化物(エレクトライド)(C12A7/e)に変えた。
・これがかつて有名になったセメント材料が超電導体になった話だ。
・細野教授はもともとアンモニア合成に興味をもっていたのでアンモニア合成に使えないかと考え、ルテニウム金属の微粒子をそのエレクトライドのカゴの上に載せた(分子的に)物が、これまでのアンモニア合成触媒の10倍位上の性能を持っていることを確認した。(ルテニウムRuは既に触媒として実績がある金属、周期律表で鉄の下)

(東工大資料より)

・触媒のメカニズムとしては、まずルテニウム微粒子が表面に窒素分子と水素分子を吸着し、水素分子を切断して水素原子を内部のカゴに取り込む。次に窒素分子の三重結合を切断し、カゴから出てきた水素原子イオン(マイナス)と反応しアンモニアとなり、カゴには電子が残りエレクトライドとなる。つまり触媒に戻る。
・エレクライドのカゴが水素を可逆的に出し入れすることで、触媒の寿命を縮めるルテニウムの水素被毒を防いでいる。

新触媒による新規アンモニア合成法は、省エネで少量生産に適しているので、必要とする場所で、必要な量だけを生産するオンサイト生産に適している。
今後アンモニアを原料とする各種工場内で、この方法での生産設備が稼働する様になると考えられる。

<ハーバー・ボッシュ法>
 鉄鉱石などを触媒に大気から窒素を取り出 し、水素と反応させてアンモニアを合成する 方法は、発明したフリッツ・ハーバー(1868- 1934)とカール・ボッシュ(1874-1940)の 2人のドイツ人科学者の名をとって「ハー バー・ボッシュ法」と呼ばれる。
20世紀初頭 に生まれたこの合成法は高温・高圧下でメ タンから単離した水素大気中の窒素から、 鉄を主体とした触媒を用いて合成し、液体 のアンモニアを得ることができる。現在でも 工業的なアンモニア合成法の主流である。

上記の参考としたサイトを紹介します。
・細野教授出演NHK「サイエンスZERO」、
動画

<更に詳しく知りたい人への推奨サイト>
・推奨サイト1.(今回の技術を非常に分かり易く説明した動画.)
アンモニア合成 一世紀ぶりの新発明

推奨サイト2
「100年不変のアンモニア合成法を 大きく変えるか? 新触媒の開発」

・尚ウィキペディアはハーバー・ボッシュ法での鉄系触媒の内容が興味深い。

 

 

尚、次のアンモニア関連記事の予定
アンモニア新製法の実用化他

 

 

藻類を原料とするバイオジェット燃料の開発競争

ジェット機の燃料は現在ケロシン(灯油とほぼ同じもの)を主体とする石油製品であり、毎日空気中で大量に消費され其の結果として世界中で排出される炭酸ガスの約2%を排出し、地球温暖化の一因ともなっている。

この現状の改良策として、石油系燃料を使わない方法として食物となる植物等生物資源から作る動きも過去あったが、食料となるものを原料とすることのリスクがあり、藻類から抽出する研究が進んできた。
藻類は植物からより単位面積当たりの生産量が高くまた炭酸ガスを固定する能力も高いとされている。

藻類など生物資源から取った油は空気中の炭酸ガスから作ったものだから燃やしても大気中の炭酸ガスの総量は増えないとされる。

当面の目標として東京五輪が開かれる2020年に藻から生産した油でジェット機を飛ばす計画が進んでいる。
その為もあり藻類研究の進化と大量培養に向けてのモデルプラント建設が各社で進展している。

これまでかなりよく知られているのはユーグレナ(ミドリムシ)だが、その他の藻類についても技術開発が進んでおり今回はこの概況をご紹介する。

事業者 原料(藻類) 取り組み状況 関連サイト
ユーグレナ ミドリムシ 2020年東京五輪までにミドリムシから作るバイオジェット燃料を航空機向けに実用化することを目指しているユーグレナは、三重県多気町でバイオジェット燃料向けの大量培養プールを、横浜市で精製工場をそれぞれ建設。実証実験に乗り出す。 エネルギー・環境事業国産バイオ燃料計画
IHI ポツリオコッカス 含まれる油の割合が高い藻類を選定。神戸大などと共同で、品種改良で培養測度を上げる。バイオジェット燃料を製造する技術を神戸大学などと共同で開発中。20年を目途に実用化を目指す。 藻類バイオ燃料の取組み
デンソー シュードコリシスチス 酸性の環境に強い藻類を選定。愛知県西尾市の工場で培養中。16年4月から熊本県天草市内の2万平方メートル敷地で実施設備稼働。18年までに年2万リットルの産出技術確立を目指す。 バイオ(微細藻類)

日刊工業新聞

Jパワー ルナリスソラリス 2種類の海洋珪藻を使用。春から秋は水温15℃から45℃に住むソラリス株、冬は水温4℃から25℃で低温に強いルナリス株を使い分ける。北九州市で年間1000Lの油を生産し培養から抽出まで一貫生産出来る体制を整備。 解説
NEDO
(新エネルギー・産業技術総合開発機構)
ポツリオコッカス他 国の研究機関として自身及び大学・民間企業に委託・補助の共同でバイオ燃料事業を引っ張る。
鹿児島市七ツ島に1500㎡の屋外 微細藻大規模培養施設を建設しコスト低減に向けたバイオ燃料開発を推進。
NEDOにおけるバイオ燃料製造技術開発の取組み

ユーグレナは2020年東京オリンピックでバイオジェット燃料を搭載した航空機を飛ばす予定。6月1日より工場建設着手する工場はミドリムシから搾っった油でジェット燃料を精製する日本初の設備となる。
ただ生産量は年産125キロリットルとまだ少なくあくまで実験工場としての位置づけだ。本格的な立ち上がりまではまだ時間を要するが、それまでは現在好調な機能性食品や化粧品のほか、農業用飼料で凌ぐ。

IHIはボツリオコッカスという藻類を使用する。この藻類は乾燥重量に対する油の含有量が50%以上という。
今年3月鹿児島市に1500平方メートルの培養地を建設した。20年には海外で数百ヘクタール規模の施設で生産する計画。

デンソーはシュードコリシスチスという藻類の屋外大量培養に着手した。18年に年2万リットルのバイオジェット燃料生産を目指す。

欧米の航空会社には既にバイオジェット燃料を使用しているところもあるが、その殆どが廃食油なので、供給が不安定であり、本命である藻類からの実用化が世界的に注目され期待されている。

普及に向けての最大の課題は製造コストであり、生産規模の拡大や品種改良その他のあらゆる手段により現在の価格(約100円/L)程度に下げられるかどうかに掛っている。

今後の各社の動向に要注目だ。(5月18日経産業新聞他各社サイトより)

5月19日リリーズの最新情報によると
ユーグレナは5社と資本提携しバイオ燃料の開発を急ぐ。
詳細は以下ご参照。
“藻類を原料とするバイオジェット燃料の開発競争” の続きを読む

水素貯蔵物質、最新の技術

石油や石炭天然ガスに変わるエネルギーとしてクリーンで枯渇しないエネルギーの「水素」がいま注目されていますね。

水素の利用の仕方は1つは燃焼ガスとして、2つは燃料電池としての2つに大別されます。
そしてその製造方法や輸送、貯蔵・保管方法がいま世界中で研究開発されています。

水素の製造方法についてはいろいろありますが、以前そのうちの1つに少し触れたので、今回は貯蔵媒体(貯蔵物質)について。

水素の貯蔵方法(運搬媒体)には、
1.超高圧ガスタンクを使う。
2.水素を吸収(吸蔵)する物質を使う
3.水素と化合する有機物を使う
の大きく分けて3つあります。

それぞれの特徴は

1.高圧ガスタンクを使う
 燃料電池車、水素ステーション、水素運搬車などがある。
  充填密度を高めるために70MPa(700気圧)位の超高圧で充填される為
 タンクの耐久性や対圧性が重要であり、また危険で取り扱いにくいという 欠点がある。
2.水素を吸収する物質を使う
 2-1.古くから水素吸蔵合金が研究・開発されてきた。
 2-2.昨年水素貯蔵ポリマーが開発された。
 2-3.3月新規な水素結合物質合成の発表。
3.水素と化合する物質を使う
 有機ハイドライド法と呼ばれ、ベンゼンやトルエン、ナフタリン等の分子中のC=Cの不飽和結合部分に水素を結合させることで分子内に水素を貯蔵する。
但し水素の取り出しには特殊な設備が必要で燃料電池車向けには出来ない。しかし産出場所からや施設間の大量運搬には最適な方法。
尚今回は上記1,2,3の内特に2.について紹介します。
(1は省略、3は下記)

2-1.水素吸蔵合金

水素吸蔵(貯蔵)合金とは、大量の水素を可逆的に吸収および放出できる独特の性質を持った金属材料をいう。

特にマグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、バナジウム(Mg)、ランタン(La)等の元素は、水素と化合して水素化物となる。これらの金属と他の例えばニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)等とある配合比(組成)で混ぜて合金にすると、圧力や温度を利用して比較的簡単に水素を吸蔵し、また可逆的に水素を放出することができるものが出来る。

水素吸蔵合金は1960年代にマグネシウム-ニッケル系合金が発見されてから各種の合金で特性の向上が図られて来た。

現在まで研究されてきた各種の水素吸蔵合金は、金属元素組成と結晶構造で5種類に分類されている。(詳しくはここから)
この中では水素吸蔵能力の高さと運用条件の面で、ABおよびAB型合金の2つのグループが最も優れている。

吸蔵合金の一般的な利点と欠点は以下の通り。
<利点>
・水素を取り出し易い。
・貯蔵容量が大きい
・吸蔵物の運搬や運用も容易
<欠点>
・水素による脆化が大きく合金の耐久性が低い。
・製造コストが高い

吸蔵合金方式は水素による脆化の問題が解決されれば飛躍的な発展が期待される。

2-2.水素貯蔵プラスチック

昨年9月、早稲田大学の西出教授、小柳津教授らは「水素運搬プラスチック」を開発したと発表した。ケトンポリマーを常温で水に浸しマイナス1.5ボルトの電圧を掛けると水から水素イオンが取り込まれ水素が固定されたアルコールポリマーが生成されることを発見した。こうして水素がケトンポリマーに固定される。
更にこのアルコールポリマーは80度に加温すると、固定した水素ガスを放出することも分かった。さらに水素の固定と放出のサイクルは温和な条件下で簡易に行え、その繰り返しも可能であることを確認された。

軽量かつ加工も容易で、水素をためた状態でも手で触れられる特徴があり
身近な場所(家庭内)での水素貯蔵を可能にする新材料として期待出来る。

詳しくはこちらをご参照。

2-3.新規水素結合物質の誕生

東北大学の高木准教授と折茂教授らの研究グループは、「1 つの金属原子に 9 つもの水素が結合した 新たな物質群」の合成に成功した。

金属の中には2-1で例示したように水素と容易に結合出来る金属がある一方、単独では水素と結合しにくい元素群(=ハイドライド・ギャップ)が存在する。しかしこれらの元素も錯体水素化物とすることで多くの水素と結合することができる。
ただし、クロム(Cr)とその仲間であるモリブデン(Mo)、タングステン(W)、及びニオブ(Nb)、タンタル(Ta)は水素との結合はできなかったが昨年クロムと水素(7個)との結合に成功した。

更に今年これら4種の金属を9個の水素と結合させることに成功した。
この成果で、ほとんどの金属原子と水素とを結合させる技術が確立した。
水素を高密度に含む物質群は、水素貯蔵材料の外、高速イオン伝導材料、超伝導材料としての応用が 期待され、今回の成果で、基礎・応用の両方について今後の進展が大いに注目される。
詳しくはここからどうぞ。(プレス発表)

 

 

 

尚、上記1.と3.については既に言及しているので今回は省略しますが、
詳しくは次のサイトをご参照。
1.水素貯蔵タンクに関して

3..水素を分子内に貯蔵する方法

参照ブログ:水素の常温、大量輸送方法

水素の貯蔵に関しての一般的な解説はここからどうぞ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次世代電池としてのカリウムイオン電池

現在2次電池としてリチウムイオン電池が全盛ではあるが、課題もいろいろあり、
リチウムイオン電池を超える電池が要望されている。
その一つにナトリウムイオン電池があり、次世代の電池として期待され研究開発がなされている。
更に同じアルカリ金属のカリウムイオン電池もあるが、これまで正極に適した材料(化合物)が少なく開発は進んでいなかった。

今度、東京理科大学の駒場慎一教授はプルシアンブルーを使った正極を開発し、
既に開発していた黒鉛の負極やカリウムイオンを溶解する純度の高い電解液を組み合わせてカリウムイオン電池を実現した。

今回開発されたカリウムイオン電池の性能
●負極の素材は黒鉛、正極の素材:鉄系のプルシアンブルー
●正極の容量:1g当たり141mAh,負極は250mAh
●電圧:4ボルト
●電池のエネルギー密度;1kg当たり200wh
●充放電回数:400回迄負極の性能低下なし。
等リチウムイオン電池に比べて性能的には見劣りしない。

<カリウムイオン電池のメリット>
◯カリウムはリチウムに比べて入手し易い。(金属としてだけの比較)
◯リチウムイオン電池に比べより安全性が高い。
カリウムイオンはリチウムイオン電池に比べ発火しにくく安全性が高い。
(リチウムイオン電池は一定の電圧以下になると金属が樹状に結晶化してショートし
発火する危険性がある。カリウムは電位的に2倍の余裕があり
また融解温度がリチウムより低いこともそれだけ発火のリスクが低い。)
◯リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池に比べ負極の電位を下げれるため
電圧をより高く出来る。
◯カリウムイオンはリチウムイオンに比べ動き易いので電池にすると大電流を流しやすく、
充放電の速度はリチウムイオン電池の10倍以上になる。
◯電極材料のコストが低コスト
今回、青鉛筆の芯にも使われる安い材料であるルプルシアンブルーを使用する正極を
作成した。因みにリチウムイオン電池はコバルトなど高価な材料が使われており、
電池の製造コストに占める割合は4割もあるとされる。

カリウムイオン電池のデメリット>
●イオンが大きいのでリチウムイオン電池の様に小型軽量化は難しい。
このため風力発電用など据え置き型の蓄電池用が期待される。
●リチウム電池と比べ同じ容量ではより重くなる

<今後の予定>
リチウムイオン電池で実績のある昭和電工と協力して長期間の使用が求められる据え置き型電池を目指すそうだ。

今回の東京理科大の開発で、これまで殆ど手が付けられていなかったカリウムイオン電池の開発に乗り出す研究者や企業も増えそうだ。

<これまでのカリウムイオン電池の開発>
米国(2012年)
同教授(2015.11)

上記内容は日経産業新聞2017.2.9他を参照し記述した。

<所感>
リチウムイオン電池が既に広く普及しているだけに、カリウムイオン電池が受け入れられるためには、先ずはリチウムイオン電池の欠点を補う部分での使用に特化した棲み分けが出来る製品を開発し普及させていく戦略が有効と考えられる。

<関連サイト>
マグネシウムイオン電池
3倍
パワーリチウムイオン電池

 

 

 

 

 

 

 

 

ナノチューブを使う4倍容量の蓄電器の開発

ナノカーボンの定義は学術的には『ナノメータのレベルで精緻に微視的構造や組織・形態が制御,設計され,それによって従来には ない高度な性能が付与され,あるいは革新的な機能を発現 する炭素体』と難しいが、要は炭素原子だけの結合でナノレベルの物質である。

炭素原子60個の球形の「フラーレン」、蜂の巣形状のシート「グラフェン」、グラフェンが筒状になったとも言える「カーボンナノチューブ(CNT)」がよく一般に知られている。
発見の歴史はフラーレンカーボンナノチューブ(CNT)、グラフェンの順なのだが、フラーレン(1996年)とグラフェン(2010年)はノーベル賞を既に受賞しているのに、日本人の発見になるCNTは何故かまだ受賞していない。

したがって日本人として、CNT関連ニュースは非常に気になるところであり、今後CNTを主体にナノカーボンについて紹介してゆきたい。

今回は先日(2/9)の日軽産業新聞(今後NSと略記)に蓄電器(キャバシシタ)への応用記事をご紹介。

キャパシタとは「正極と負極で挟む電解質の中をイオンが往来し両極の表面で生徒ふの電気が引き合った電気2重層で電気を貯める蓄電池の一種」。
電極の表面積が広い程容量が増える。今回は表面積を広くするためにCNTを用いたということだ。しかしその製造方法が私にはなかなか興味深かった。

ナノチューブは固まりやすい欠点があるので、これをほぐすのに、これまで紹介してきた新素材セルロースナノファイバー(CNF)を使うことを考えたそうだ。有機溶媒のなかでCNTとCNFを混ぜると、CNFがCNTに巻き付くことがわかったそうだ。

具体的な数値と巻付きのイメージは、直径10nm(ナノメートル)長さ10μm(マイクロメートル)(すなわち直径対長さ比L/D1000倍)、(イメージ的には太さ1mm、長さ1mの糸)のCNTに、直径3nm、長さ5μmのCNF(イメージ的には太さ0.3mm、長さ50cmの紐)が巻き付くイメージ。

有機溶剤の詳細は不明だが、この溶剤にポリアクリとニトリル(PAN)を加えるとCNFの水酸基(-OH)と、PANがもつ水素が引き有いナノチューブが均質に分散する。これを窒素を含む高温ガス中で熱処理すると多孔質の炭素構造体の中にCNTが分散した状態の電極材が出来た。電気2重層が安定するには窒素を9%残すことが必要だそうだ。

表面積が広い炭素材としては活性炭が有り、中でもヤシガラ活性炭は最もグラム当たりの表面積が広いことが知られているが今回開発した電極剤は同体積でその4倍だったという。

従来キャパシタは充放電時間は通常の蓄電池に比べ圧倒的に速いものの、蓄電能力は劣るので用途により使い分けられてきた。しかし今回開発品は容量もリチウムイオン電池の10数%まで近づいてきており、5年以内に50%超に引き上げる計画だそうだ。

リチウムイオン電池と併用することで、キャパシターで急速充電し、その電気で稼働しながら「自動車なら走り出してから)電池を充電するという使い方が出来る。

尚本研究は、京都大学坂田教授、ナノチューブの製造販売を手がけるナノサミット、米MIT、らによるもの。

ナノカーボン

活性炭

*)キャパシタ キャパシタとは、
1879年にドイツの学者ヘルムホルツ(Helmholtz)によって発見された「電気二重層」現象の原理が応用された蓄電池のことである。 電気を電気のまま(エネルギーの化学反応なしに)充放電することが可能で、原理的には半永久的に使用することができる、理想的な蓄電装置と言われている。

 

マグネシウム電池はリチウムイオン電池の後継になるか

現在再充電で繰り返し使える2次電池は各種あるが、現在最も普及しているのがリチウムイオン電池であり、今後もまだまだ主役として市場の拡大は続くと見られている。

しかしリチウムやコバルトの希少資源(レアメタル)を多用するので原材料の安定的な確保や使用後のリサイクルに課題がある。

リチウム電池の次の候補の一つに、資源が豊富なマグネシウムを利用するマグネシウム電池が考えられているが、電力密度が低いことや反応で電極表面に絶縁物が生じる等技術課題があった。

東工大の矢部教授らは、薄膜状のマグネシウム電極を使うことでこれらの課題の克服に目途をつけ、ベンチャー企業を興し、マグネシウム電極を薄膜にすることで、電池の小型化、持続時間の増大、電池の大容量化にも道をつけた。

非常用電源としては既に企業と組み2014年、少容量タイプが発売されている。
また長期間劣化しにくいことや取扱性の良さなどから防災用に期待されている。(水と塩で発電するLEDランタン

2次電池としてはホンダや埼玉県が実用化の目途を付けたとされ関連銘柄の株価も一次急騰した。
しかし技術の詳細が明らかにされていない。

リチウムイオン電池並の性能や価格を実現するにはまだ年月が掛かりそうで、これからも当分はリチウムイオン電池の拡大が続きそうだ。

通常のガソリン自動車用バッテリー鉛電池が普通だが軽量化の為、リチウムイオン電池が一部採用され始めてはいる。しかし安定性、取扱性、値段の安さ等でまだすぐには取って代わられるものではなさそうだ。

従って、リチウムイオン電池の性能を大幅に上回る2次電池が期待されており、
当面その最も近い物が硫黄電池のようだが、しかし当面の本命はやはりマグネシウム二次電池かと思わせられる。

産総研から2016年3月に発表された資料(ロードマップ)は、ビジュアル化を徹底させたプレゼン資料で、マグネシウム電池の開発状況がよく分かる。(内容は難しいが)
ポストリチウム二次電池の開発~マグネシウム二次電池の創製に向けて~)

 

最後のページ(22ページ)にも注目。
一見元素周期表みたい、いや全然違う。
よく見ると元素記号だけで作った英文メッセージだ。
ユーモアもあり、字(アルファベット)余りも無い。
良く考えられた(組み合わせた)ものと感心した。
Motivation Research Synthesis.I am Lunatic.
(Thank you for your) Cooperation.
かな?

 

 

 

 

水素の常温、大量輸送方法

これまでの石油から水素をエネルギー源とする水素社会が到来しようしている。

その水素の製造方法には、①天然ガス採取時に副生する水素を分離膜等で分離補集する。②天然ガスを分解して取り出す。③水を分解して取り出す。等いろいろあるが、①の方法が現在最も現実的な技術とし行われている。

その水素の貯蔵や輸送方法はこれまで水素吸蔵合金に吸収させたり、水素ガスを高圧に圧縮して耐圧性のタンクに入れる方法や水素を摂氏マイナス253度迄冷却して液体にする方法が使用されてきた。しかしこれらの方法で大量の水素を貯蔵したり運搬するには新規な大掛かりなインフラを整備する必要がある。

因みに少量の場合の例となる、トヨタの燃料電池車「ミライ」は70MPa(700kg/cm2)の高圧に圧縮された水素が炭素繊維製のタンクにいれて使われている。

これに対し、従来からも提唱されてきたにもかかわらずにあまり大きく取り上げられなかった方法がいま脚光を浴びている。

それは水素をトルエンに吸収(反応)させてメチルシクロヘキサン(MCH)と言う化合物にすると言うもの。こうすると水素の輸送や保存が常温・常圧で出来るのである。

トルエンはベンゼンにメチル基が1個ついただけの炭化水素分子で、不飽和結合(2重結合)を3個分子内に持つので水素を6個付加することが出来る。この反応で水素ガスの体積を500分の1の液体に変えることが出来る。MCHは修正ペンなど日曜品にも使われているもので日常条件で安全に取り扱える。

ただMCHから水素を取り出す技術がこれまで確立されていなかった。触媒を使う方法はあったが、耐久性が1,2日で工業用としては使えなかった。

千代田化工はプラチナを1ナノメートルよりも細かくすることで耐久性が1年ある触媒を開発し、水素を常温で貯蔵・輸送してから効率的(回収率95%以上)に取り出す手法「SPERA水素システム」を開発し日本経済新聞社の地球環境技術賞の最優秀を受賞した。

想定される水素サプライチェーンは以下の通り

まず資源国で天然ガスを産出する際に水素だけを分離する。→現地のプラントでトルエンと反応させてMCHとする。→タンカーで日本に運びプラントで水素を取り出す。→MCHは再びトルエンとなる→資源国に運ばれてMCHとするため再利用される。このサイクルと繰り返す。

 

 

未来の冷蔵庫は磁気で冷やす?

新しい冷却方式である磁気冷却についての新聞記事(日経8月25日)を紹介します。

現在の冷蔵庫などで使われているヒートポンプ(HP)はコンプレッサー(圧縮機)を使い配管に閉じ込め冷媒ガスを循環させて周囲と熱を受け渡しする。

冷媒を膨張させ液体から気体へ変える時に気化熱を奪い周囲を冷やす。逆に冷媒を圧縮して気体化から液体に戻す時には外部に凝縮熱を出す仕組みだ。

この方式の原理は、のデメリットはコンプレッサーの騒音や振動が発生することや、地球温暖化のガスを使っていることだ。

これに対し、磁気ヒートポンプは圧縮機も冷媒も使わなず、モーターで永久磁石を回転させ、周りに配置した磁性体に磁気を加えたり消したりして発熱と吸熱を繰り返す。

この原理は、「磁気熱量効果」と呼ばれる現象で、磁気が生じる源となる「スピン」と言う電子の性質に由来している。電子のスピンがバラバラの状態から一定の向きに揃う時に発熱し、スピンの向きがバラバラに戻るとき吸熱する。

スピンの向きがバラバラの状態は揃った状態よりエネルギーが低いので、その差を熱エネルギーとして出し(発熱)入れ(吸熱)している。

この吸熱、発熱を引き起こすため、中央に回る永久磁石と周囲に0.6ミリの細かい磁性体の粒を周りに詰めたパイプ(温水用と冷水用)を配置した構造の装置となっている。

磁性体には、この高い性質を持つレアアースのガドリニウム(Gd)が使われているが、近年は安価な鉄やマンガンをべーすとした合金での開発も進んでいる。

現在製品化されいるのは、白物家電で世界首位の中国ハイアールがドイツの化学会社や米国の航空宇宙関連会社と共同で2015年に施策したワインクーラーがある。ワインは振動に弱いので磁気HPが適しているため。従来より35%効率がいいそうだ。

日本では空調設備最大手のサンデンホールディングスが東工大とまた自動車部品大手のデンソーが研究を行っている。

現在の冷却方式で使用している冷媒ガスは低温下では液体から気体に戻しにくいが、磁気HPならこうした効率は悪くならない。

将来の有望な製品化品目としては、業務用冷凍機や電気自動車(EV)用のエアコンがある。エンジンがないEVは冬場の暖房用の熱源がないため電気で暖房用の熱を作ると走行距離に大きく響く。そこでこの磁石で熱を発生させるヒートポンプが期待されている。

 

 

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