エコプロ2017、ナノセルロース(CNF)展

先日(12/7,8,9)東京ビッグサイトで開催された「環境とエネルギーの未来展エコプロ2017」に行ってきた。
本イベントは環境に配慮した製品やサービスを展示し、「持続可能な社会の実現に向けて」をテーマに600以上の会社・団体が出展。
国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標Sustainable Development Goals)に対応し、リサイクル技術クリーンエネルギー関連の展示がされた。詳細は主催のHP参照
この中で特にCNF(セルロースファイバー)について各社資料を参考に其の一部をご紹介.

(ナノセルロースサイト写真から)
各社カタログを入手したが、偏り無く伝えていたのは産総研の資料だったので主にこれを元に説明します。

セルロースナノファイバー(CNF)とは、一言で言えば植物繊維をナノメートル単位にまで微細化した物です。

<製造プロセス>
植物(木、竹、草等)→チップ→脱リグニン→パルプ→下記A、B処理

A:パルプを化学薬品で前処理し物理的に解繊する。
TEMPO触媒酸化(下記注1~3)リン酸エステル化が使われ、
完全ナノ分散した約3ナノメートルの透明なCNFとなり工業用として幅広く活用される。
カルボキシメチル化(CMCしたものは数ナノから数百ナノとなり、食品・化粧品の増粘、分散安定剤として使われる。

B:パルプを前処理せず
①濃硫酸で分解する
セルロースの短繊維(ミクロフィブリル)が非結晶領域で分解され紡錘状の結晶が得られる。これはセルロースナノクリスタルと呼ばれている。(現在メーカーはカナダの2社のみ)
②機械処理だけでセルロースをほぐす
次の3工程で細かくする。
(1)剪断・・・約2500気圧に高めたパルプ分散液を極細のノズルを通して細く裂く
(2)衝突・・・2つのノズルから相対速度マッハ4の高速で溶液同士をぶつけて砕く。
(3)キャビテーション・・・ノズルから噴射する時に急激に圧力が下がり気泡が生じ、この気泡が破裂する時の衝撃で更に細かくなる。
これで約20nmの大きさになる。生産性は高く、低コストで製造出来る。

C:チップをそのまま解繊(解きほぐす)
セルロースの表面にリグニンが付着しており、分散もしていない。外観もリグニン由来の茶色となる。リグノセルロースとよばれる。

特殊セルロース:微生物を使って生合成する
糖質、グリセリンを原料として酢酸菌という微生物にセルロースを合成させる。
このセルロースは「バクテリアセルロース」と呼ばれ、食用、工業用に用いられる。

<特性と想定される用途>
1.軽量・高強度を利用

①プラスチックに添加・・・強化プラスチック(ヘルメット等)、発泡材料、
3Dプリンター用樹脂、防弾チョッキ、住宅建材
②ゴムに添加・・・・・タイヤ(カーボンブラック代替)、スポーツシューズ(靴底)、
③紙に添加
スピーカー振動板他、製紙用各種用途添加剤
2.透明性
透明保護フィルム
3.石英並の低熱膨張
電子基板、電子部品
4.ガス遮蔽性
食品包装用フィルム、電池部品
5.細孔の制御が可能
濾過材料、担持材料(細胞培養基材)、ドラッグデリバリー(DDS)システム
6.増粘性の制御が可能
増粘剤、塗料・インキ・顔料、化粧品、ガス・オイル掘削用
7.表面積が大きい
消臭機能のあるオムツ

注1)
化学処理のTEMPO酸化は、東京大学の磯貝明教授らのグループが開発し、高効率でCNFを調整する技術で、アメリカ化学会のAnselme Payen賞を受賞しました。

注2)
“森のノーベル賞”に日本人のセルロースナノファイバー研究が授賞

注3)
TEMPO酸化、少し詳しくはここから

<会場の写真及び展示パネル>
企業や大学・団体等の研究・開発状況を紹介する展示パネルを撮影したので幾つか貼付します。(尚スマホで撮影したので細かい字は見えず概要のみでご了承下さい)

 

最後に、環境省が主催するCNVプロジェクトをご紹介。

VはEVやFCVと同じVehicleつまり車であり、自動車の各種部品・部材をCNFで作成し、材料評価から実機搭載までを一気通貫で実施、早期社会実装に向けて貢献するというもの
京都大学が代表技業者となり大学、研究機関、企業等計21の機関で構成されている。

今後共製造技術進化と応用の高度化及び製品の多様化に注目して行きたい。