エコプロ2018のセルロースナノファイバー(CNF)関連展示

環境に配慮した製品やサービスを集めた国内最大級の展示会「エコプロ」。
今年も「エコプロ2018」と題して東京ビックサイトで12月6から8日まで開催されました。

この展示会は環境問題を取り上げているので小学生の課外授業となっているようで、小学生が沢山来ていました。この会場に平日参加できる小学生は恵まれていますね。

私は毎年参加していますが、今年は昨年より面白いところが少なかったような気がしました。
ガイド本の内容も例年にあった新リサイクル技術関連の記事がなく個人的には残念でした。

その中で、今年も展示会の目玉の一つであるCNF(セルロースナノファイバー)の展示について簡単に写真でご紹介します。(CNFに関した詳細は最後の参考サイトをご参照ください)(ご参考:昨年のエコプロ2017のCNF関連

CNFは資源小国の日本で資源が豊富にある貴重な新素材のためか、文科省、経済産業省、環境省の3つの省が取り組んでおり、経産省の元でNEDOが中心となり京都大学を始めとした大学等や企業が進めており、新素材としての期待の大きさが伺えました。

昨年同様、化粧品や文具などへの応用はそのまま進展しているようですが、今年は更にCNFをミッドソールに用いたランニングシューズが目に付きました。

しかしなんと行っても最大のテーマはCNV(セルロースナノビイークル)つまりCNFを自動車部品の一部として採用し、車の軽量化を図ることでしょう。

会場にはその様子がよくわかるように実物大の車の骨格模型が展示され、どの部品がCNFで作られ使われているかがわかる様になっていました。

その横では京都大学の矢野教授らによりスライドを使ったわかりやすい説明がなされていました。

以下スマホで撮った写真を列挙します。(ピントが合ってないところはご容赦(汗))

<参考サイト>
各省や大学、企業の関連サイトを以下リストします。

◯経産省
部素材産業-CNF(セルロースナノファイバー)実用化への取組み

セルロースナノファイバー(CNF)等の次世代素材活用推進事業

◯環境省
世界初!NCVプロジェクトが始動 ~ナノ・セルロース・ビークル・プロジェクト~
 環境省における バイオ関連の取組について

◯文部科学省
ナノテクノロジープラットフォーム事業
酵素処理を用い,食用にもなる素材を杉や竹の生育地で製造可能~

◯王子製紙
世界初!三形態のCNF

◯スギノマシン
ウォータージェット法で作製したバイオマスナノファイバー

 

世界初、CNF複合材料が最新ランニングシューズに採用
京都プロセスを使ったCNF応用製品が世界規模で発売開始

CNFに関しては、原料、製造方法、応用(民生用途、工業用途)など、今後共関連ニュースが継続的に出てくるのは必然ですので、特に注目される記事が出たときには
都度本ブログでご紹介すル予定です。

 

 

エコプロ2017、ナノセルロース(CNF)展

先日(12/7,8,9)東京ビッグサイトで開催された「環境とエネルギーの未来展エコプロ2017」に行ってきた。
本イベントは環境に配慮した製品やサービスを展示し、「持続可能な社会の実現に向けて」をテーマに600以上の会社・団体が出展。
国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標Sustainable Development Goals)に対応し、リサイクル技術クリーンエネルギー関連の展示がされた。詳細は主催のHP参照
この中で特にCNF(セルロースファイバー)について各社資料を参考に其の一部をご紹介.

(ナノセルロースサイト写真から)
各社カタログを入手したが、偏り無く伝えていたのは産総研の資料だったので主にこれを元に説明します。

セルロースナノファイバー(CNF)とは、一言で言えば植物繊維をナノメートル単位にまで微細化した物です。

<製造プロセス>
植物(木、竹、草等)→チップ→脱リグニン→パルプ→下記A、B処理

A:パルプを化学薬品で前処理し物理的に解繊する。
TEMPO触媒酸化(下記注1~3)リン酸エステル化が使われ、
完全ナノ分散した約3ナノメートルの透明なCNFとなり工業用として幅広く活用される。
カルボキシメチル化(CMCしたものは数ナノから数百ナノとなり、食品・化粧品の増粘、分散安定剤として使われる。

B:パルプを前処理せず
①濃硫酸で分解する
セルロースの短繊維(ミクロフィブリル)が非結晶領域で分解され紡錘状の結晶が得られる。これはセルロースナノクリスタルと呼ばれている。(現在メーカーはカナダの2社のみ)
②機械処理だけでセルロースをほぐす
次の3工程で細かくする。
(1)剪断・・・約2500気圧に高めたパルプ分散液を極細のノズルを通して細く裂く
(2)衝突・・・2つのノズルから相対速度マッハ4の高速で溶液同士をぶつけて砕く。
(3)キャビテーション・・・ノズルから噴射する時に急激に圧力が下がり気泡が生じ、この気泡が破裂する時の衝撃で更に細かくなる。
これで約20nmの大きさになる。生産性は高く、低コストで製造出来る。

C:チップをそのまま解繊(解きほぐす)
セルロースの表面にリグニンが付着しており、分散もしていない。外観もリグニン由来の茶色となる。リグノセルロースとよばれる。

特殊セルロース:微生物を使って生合成する
糖質、グリセリンを原料として酢酸菌という微生物にセルロースを合成させる。
このセルロースは「バクテリアセルロース」と呼ばれ、食用、工業用に用いられる。

<特性と想定される用途>
1.軽量・高強度を利用

①プラスチックに添加・・・強化プラスチック(ヘルメット等)、発泡材料、
3Dプリンター用樹脂、防弾チョッキ、住宅建材
②ゴムに添加・・・・・タイヤ(カーボンブラック代替)、スポーツシューズ(靴底)、
③紙に添加
スピーカー振動板他、製紙用各種用途添加剤
2.透明性
透明保護フィルム
3.石英並の低熱膨張
電子基板、電子部品
4.ガス遮蔽性
食品包装用フィルム、電池部品
5.細孔の制御が可能
濾過材料、担持材料(細胞培養基材)、ドラッグデリバリー(DDS)システム
6.増粘性の制御が可能
増粘剤、塗料・インキ・顔料、化粧品、ガス・オイル掘削用
7.表面積が大きい
消臭機能のあるオムツ

注1)
化学処理のTEMPO酸化は、東京大学の磯貝明教授らのグループが開発し、高効率でCNFを調整する技術で、アメリカ化学会のAnselme Payen賞を受賞しました。

注2)
“森のノーベル賞”に日本人のセルロースナノファイバー研究が授賞

注3)
TEMPO酸化、少し詳しくはここから

<会場の写真及び展示パネル>
企業や大学・団体等の研究・開発状況を紹介する展示パネルを撮影したので幾つか貼付します。(尚スマホで撮影したので細かい字は見えず概要のみでご了承下さい)

 

最後に、環境省が主催するCNVプロジェクトをご紹介。

VはEVやFCVと同じVehicleつまり車であり、自動車の各種部品・部材をCNFで作成し、材料評価から実機搭載までを一気通貫で実施、早期社会実装に向けて貢献するというもの
京都大学が代表技業者となり大学、研究機関、企業等計21の機関で構成されている。

今後共製造技術進化と応用の高度化及び製品の多様化に注目して行きたい。

 

 

 

 

 

 

ナノチューブを使う4倍容量の蓄電器の開発

ナノカーボンの定義は学術的には『ナノメータのレベルで精緻に微視的構造や組織・形態が制御,設計され,それによって従来には ない高度な性能が付与され,あるいは革新的な機能を発現 する炭素体』と難しいが、要は炭素原子だけの結合でナノレベルの物質である。

炭素原子60個の球形の「フラーレン」、蜂の巣形状のシート「グラフェン」、グラフェンが筒状になったとも言える「カーボンナノチューブ(CNT)」がよく一般に知られている。
発見の歴史はフラーレンカーボンナノチューブ(CNT)、グラフェンの順なのだが、フラーレン(1996年)とグラフェン(2010年)はノーベル賞を既に受賞しているのに、日本人の発見になるCNTは何故かまだ受賞していない。

したがって日本人として、CNT関連ニュースは非常に気になるところであり、今後CNTを主体にナノカーボンについて紹介してゆきたい。

今回は先日(2/9)の日経産業新聞(今後NSと略記)に蓄電器(キャバシシタ)への応用記事をご紹介。

キャパシタとは「正極と負極で挟む電解質の中をイオンが往来し両極の表面で生徒ふの電気が引き合った電気2重層で電気を貯める蓄電池の一種」。
電極の表面積が広い程容量が増える。今回は表面積を広くするためにCNTを用いたということだ。しかしその製造方法が私にはなかなか興味深かった。

ナノチューブは固まりやすい欠点があるので、これをほぐすのに、これまで紹介してきた新素材セルロースナノファイバー(CNF)を使うことを考えたそうだ。有機溶媒のなかでCNTとCNFを混ぜると、CNFがCNTに巻き付くことがわかったそうだ。

具体的な数値と巻付きのイメージは、直径10nm(ナノメートル)長さ10μm(マイクロメートル)(すなわち直径対長さ比L/D1000倍)、(イメージ的には太さ1mm、長さ1mの糸)のCNTに、直径3nm、長さ5μmのCNF(イメージ的には太さ0.3mm、長さ50cmの紐)が巻き付くイメージ。

有機溶剤の詳細は不明だが、この溶剤にポリアクリロニトリル(PAN)を加えるとCNFの水酸基(-OH)と、PANがもつ水素が引き有いナノチューブが均質に分散する。これを窒素を含む高温ガス中で熱処理すると多孔質の炭素構造体の中にCNTが分散した状態の電極材が出来た。電気2重層が安定するには窒素を9%残すことが必要だそうだ。

表面積が広い炭素材としては活性炭が有り、中でもヤシガラ活性炭は最もグラム当たりの表面積が広いことが知られているが今回開発した電極剤は同体積でその4倍だったという。

従来キャパシタは充放電時間は通常の蓄電池に比べ圧倒的に速いものの、蓄電能力は劣るので用途により使い分けられてきた。しかし今回開発品は容量もリチウムイオン電池の10数%まで近づいてきており、5年以内に50%超に引き上げる計画だそうだ。

リチウムイオン電池と併用することで、キャパシターで急速充電し、その電気で稼働しながら「自動車なら走り出してから)電池を充電するという使い方が出来る。

尚本研究は、京都大学坂田教授、ナノチューブの製造販売を手がけるナノサミット、米MIT、らによるもの。

ナノカーボン

活性炭

*)キャパシタ キャパシタとは、
1879年にドイツの学者ヘルムホルツ(Helmholtz)によって発見された「電気二重層」現象の原理が応用された蓄電池のことである。 電気を電気のまま(エネルギーの化学反応なしに)充放電することが可能で、原理的には半永久的に使用することができる、理想的な蓄電装置と言われている。