伝統工芸の技でつくるユニークなIoT機器

 

あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の普及を見すえ、ユニークな機器の開発が進んでいる。

 

昨年、大ヒットした映画『君の名は』で主人公が身につけていたことで一躍注目されている日本の伝統工芸「組紐」が、脈拍や咳などを識別できる生体センサーとして、実用化されることになった。

 

 組紐は、細い絹糸や綿糸を編んで織り上げて作り、和装の帯締めや武具や刀剣の飾りに使われている工芸品。

その組紐を特別の機能を持つハイテク繊維で作れば応用の一つとしてセンサーが出来る。

 

関西大学システム理工学部の田實佳郎教授と帝人は、ポリ乳酸繊維を使用した圧電体に日本の伝統工芸である「組紐」の技術を用いたウェアラブルセンサー「圧電組紐」を開発した。

 

圧電体は、圧力を加えると電気エネルギーを発生し、逆に電気エネルギーを加えると伸縮する特性を有する物質の総称。

 

その特性を利用し、スイッチなどのセンサーやスピーカーなどのアクチュエーター(駆動体)として使用されている。

 

単に圧電繊維だけではどんな動きでも電気信号が発生し、何の信号かわからない。

研究チームは、紐の編み方や結び方を変えると、捉えたい動きを表す電気信号が強まるのに気づきいた。そしてコンピューターによるシミュレーションで電気信号の変化を繰り返し計算し不要な信号を相殺する組紐の条件を突き止めた。

チョーカーと呼ぶ組紐に加工すると首に掛けるだけで、食べ物を飲み込む動きを咳払いまで捉えた。更にスポーツウエアに組紐を縫い付けると全身の動きが分かる。

将来的には検出した信号をスマホで病院に送れば医者が見て遠隔診断も出来る。

今後の進歩が注目される。

 

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次世代電池としてのカリウムイオン電池

現在2次電池としてリチウムイオン電池が全盛ではあるが、課題もいろいろあり、
リチウムイオン電池を超える電池が要望されている。
その一つにナトリウムイオン電池があり、次世代の電池として期待され研究開発がなされている。
更に同じアルカリ金属のカリウムイオン電池もあるが、これまで正極に適した材料(化合物)が少なく開発は進んでいなかった。

今度、東京理科大学の駒場慎一教授はプルシアンブルーを使った正極を開発し、
既に開発していた黒鉛の負極やカリウムイオンを溶解する純度の高い電解液を組み合わせてカリウムイオン電池を実現した。

今回開発されたカリウムイオン電池の性能
●負極の素材は黒鉛、正極の素材:鉄系のプルシアンブルー
●正極の容量:1g当たり141mAh,負極は250mAh
●電圧:4ボルト
●電池のエネルギー密度;1kg当たり200wh
●充放電回数:400回迄負極の性能低下なし。
等リチウムイオン電池に比べて性能的には見劣りしない。

<カリウムイオン電池のメリット>
◯カリウムはリチウムに比べて入手し易い。(金属としてだけの比較)
◯リチウムイオン電池に比べより安全性が高い。
カリウムイオンはリチウムイオン電池に比べ発火しにくく安全性が高い。
(リチウムイオン電池は一定の電圧以下になると金属が樹状に結晶化してショートし
発火する危険性がある。カリウムは電位的に2倍の余裕があり
また融解温度がリチウムより低いこともそれだけ発火のリスクが低い。)
◯リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池に比べ負極の電位を下げれるため
電圧をより高く出来る。
◯カリウムイオンはリチウムイオンに比べ動き易いので電池にすると大電流を流しやすく、
充放電の速度はリチウムイオン電池の10倍以上になる。
◯電極材料のコストが低コスト
今回、青鉛筆の芯にも使われる安い材料であるルプルシアンブルーを使用する正極を
作成した。因みにリチウムイオン電池はコバルトなど高価な材料が使われており、
電池の製造コストに占める割合は4割もあるとされる。

カリウムイオン電池のデメリット>
●イオンが大きいのでリチウムイオン電池の様に小型軽量化は難しい。
このため風力発電用など据え置き型の蓄電池用が期待される。
●リチウム電池と比べ同じ容量ではより重くなる

<今後の予定>
リチウムイオン電池で実績のある昭和電工と協力して長期間の使用が求められる据え置き型電池を目指すそうだ。

今回の東京理科大の開発で、これまで殆ど手が付けられていなかったカリウムイオン電池の開発に乗り出す研究者や企業も増えそうだ。

<これまでのカリウムイオン電池の開発>
米国(2012年)
同教授(2015.11)

上記内容は日経産業新聞2017.2.9他を参照し記述した。

<所感>
リチウムイオン電池が既に広く普及しているだけに、カリウムイオン電池が受け入れられるためには、先ずはリチウムイオン電池の欠点を補う部分での使用に特化した棲み分けが出来る製品を開発し普及させていく戦略が有効と考えられる。

<関連サイト>
マグネシウムイオン電池
3倍
パワーリチウムイオン電池

 

 

 

 

 

 

 

 

ナノチューブを使う4倍容量の蓄電器の開発

ナノカーボンの定義は学術的には『ナノメータのレベルで精緻に微視的構造や組織・形態が制御,設計され,それによって従来には ない高度な性能が付与され,あるいは革新的な機能を発現 する炭素体』と難しいが、要は炭素原子だけの結合でナノレベルの物質である。

炭素原子60個の球形の「フラーレン」、蜂の巣形状のシート「グラフェン」、グラフェンが筒状になったとも言える「カーボンナノチューブ(CNT)」がよく一般に知られている。
発見の歴史はフラーレンカーボンナノチューブ(CNT)、グラフェンの順なのだが、フラーレン(1996年)とグラフェン(2010年)はノーベル賞を既に受賞しているのに、日本人の発見になるCNTは何故かまだ受賞していない。

したがって日本人として、CNT関連ニュースは非常に気になるところであり、今後CNTを主体にナノカーボンについて紹介してゆきたい。

今回は先日(2/9)の日経産業新聞(今後NSと略記)に蓄電器(キャバシシタ)への応用記事をご紹介。

キャパシタとは「正極と負極で挟む電解質の中をイオンが往来し両極の表面で生徒ふの電気が引き合った電気2重層で電気を貯める蓄電池の一種」。
電極の表面積が広い程容量が増える。今回は表面積を広くするためにCNTを用いたということだ。しかしその製造方法が私にはなかなか興味深かった。

ナノチューブは固まりやすい欠点があるので、これをほぐすのに、これまで紹介してきた新素材セルロースナノファイバー(CNF)を使うことを考えたそうだ。有機溶媒のなかでCNTとCNFを混ぜると、CNFがCNTに巻き付くことがわかったそうだ。

具体的な数値と巻付きのイメージは、直径10nm(ナノメートル)長さ10μm(マイクロメートル)(すなわち直径対長さ比L/D1000倍)、(イメージ的には太さ1mm、長さ1mの糸)のCNTに、直径3nm、長さ5μmのCNF(イメージ的には太さ0.3mm、長さ50cmの紐)が巻き付くイメージ。

有機溶剤の詳細は不明だが、この溶剤にポリアクリロニトリル(PAN)を加えるとCNFの水酸基(-OH)と、PANがもつ水素が引き有いナノチューブが均質に分散する。これを窒素を含む高温ガス中で熱処理すると多孔質の炭素構造体の中にCNTが分散した状態の電極材が出来た。電気2重層が安定するには窒素を9%残すことが必要だそうだ。

表面積が広い炭素材としては活性炭が有り、中でもヤシガラ活性炭は最もグラム当たりの表面積が広いことが知られているが今回開発した電極剤は同体積でその4倍だったという。

従来キャパシタは充放電時間は通常の蓄電池に比べ圧倒的に速いものの、蓄電能力は劣るので用途により使い分けられてきた。しかし今回開発品は容量もリチウムイオン電池の10数%まで近づいてきており、5年以内に50%超に引き上げる計画だそうだ。

リチウムイオン電池と併用することで、キャパシターで急速充電し、その電気で稼働しながら「自動車なら走り出してから)電池を充電するという使い方が出来る。

尚本研究は、京都大学坂田教授、ナノチューブの製造販売を手がけるナノサミット、米MIT、らによるもの。

ナノカーボン

活性炭

*)キャパシタ キャパシタとは、
1879年にドイツの学者ヘルムホルツ(Helmholtz)によって発見された「電気二重層」現象の原理が応用された蓄電池のことである。 電気を電気のまま(エネルギーの化学反応なしに)充放電することが可能で、原理的には半永久的に使用することができる、理想的な蓄電装置と言われている。

 

活性酸素の発生量が2倍になる酸化チタン製造法

酸化チタンが光触媒の機能を有することが一般に知られているようになりその応用製品がいろいろなところで使われている。

その光触媒作用とは、光によって酸化チタンの表面に発生する活性酸素が有機物を分解する反応を起こし有害物質や汚れなどの除去に利用できることを言う。

酸化チタンの結晶の構造や大きさによって活性酸素の発生量は異なるがその量が多ければ反応速度が上がり優れた浄化機能位を発揮する可能性があると言われている。

酸化チタン(TiO2)は粉末として試薬で入手出来る。しかし光触媒としての酸化チタンは一般にチタンのイオンをアルコールに溶かした市販の「チタンアルコキシド」(液体)を原料にして作る。この液体を更にアルコールで薄め水を加えると酸化チタンが析出する。

この酸化チタンを分離、乾燥、焼成、粉砕のこうていを経て光触媒にする。

酸化チタン光を当てた時に表面に発生する活性酸素濃度は電子スピン共鳴装置(ESR)で調べる。

山形大は酸化チタン作成工程で水を加える前にアルカリ金属のイオンを添加することで従来の2倍の活性酸素が発生する酸化チタンを作ることを発見した。粉末の他薄膜も作れるという。

酸化チタンによる光分解性の試験は色素の一種であるチレンブルーを使って調べ、新手法で作った酸化チタンの分解性が優れていることが確認された。

今後は活性酸素の発生の仕組みを解明し、耐久性(効果の持続性)を検証する。

また実用化に向け複数の企業と協議を進めている。

 

 

 

ブリジストンは天然ゴムの性能を上回る合成ゴムの開発に成功

ブリジストンはバイオマス素材からポリイソプレンゴムを作ることに成功した。

自動車用タイヤは半分がゴムでその他にスチールコードやカーボンブラック等様々な物で構成されている。そのゴムにはパラゴムノキから抽出する天然ゴムと石油由来の合成ゴムの2つがある。

天然ゴムは強度や耐久性に優れ、乗用車ではゴム全体の半分以上、建設機械用では全て天然ゴムが使われている程だ。

その天然ゴムには悲しい歴史がある。天然ゴムの生産地は旧来南米地域だったが1900年代に「南米葉枯病」という病気が流行し産地として消滅してしまった。

現在は東南アジアが主流だが、この先同じことが起こらないとは言えない。

ブリジストンはこの原料リスクを避けるための対策として、病害診断の確立や「グアユール」と呼ぶ代替植物を米国で栽培する等手を打ってきた。

またサトウキビやトウモロコシ等様々な植物を発酵させ、これから抽出して作るイソプレンを重合し、天然ゴムを超える耐久性を持つポリイソプレンゴム(IR)」も開発してきた。

ただこれまで反応の触媒として用いられた触媒では分子構造が天然ゴムと異なるという欠点があった。というのはIRには「シス」、「トランス」、「ビニル」と言う3つの分子構造が含まれており、この内ゴムの性能を左右する要素として大きいのはシス構造の比率だ。

天然ゴムではほぼ100%がシス構造となっているがこれまでのIRでは94から98%強までしか比率を高められず天然ゴムに比べ耐久性が劣っていた。

そこでブリジストンは今回新たに触媒の構造を変えた「ガドリニウム触媒」を開発しシス比率を最大99.9%まで高めることが出来るようになった。またタイヤに用いた時の低燃費性に係わる分子の長さのばらつきを小さくすることにも成功し、天然ゴムを超える耐久性と低燃費性を確保出来たという。

残る課題はコストで、現時点では天然ゴムは供給に不安はなく、価格も安いので、IRの量産化技術を編み出し、コストを下げる必要がある。