ブリジストンは天然ゴムの性能を上回る合成ゴムの開発に成功

ブリジストンはバイオマス素材からポリイソプレンゴムを作ることに成功した。

自動車用タイヤは半分がゴムでその他にスチールコードやカーボンブラック等様々な物で構成されている。そのゴムにはパラゴムノキから抽出する天然ゴムと石油由来の合成ゴムの2つがある。

天然ゴムは強度や耐久性に優れ、乗用車ではゴム全体の半分以上、建設機械用では全て天然ゴムが使われている程だ。

その天然ゴムには悲しい歴史がある。天然ゴムの生産地は旧来南米地域だったが1900年代に「南米葉枯病」という病気が流行し産地として消滅してしまった。

現在は東南アジアが主流だが、この先同じことが起こらないとは言えない。

ブリジストンはこの原料リスクを避けるための対策として、病害診断の確立や「グアユール」と呼ぶ代替植物を米国で栽培する等手を打ってきた。

またサトウキビやトウモロコシ等様々な植物を発酵させ、これから抽出して作るイソプレンを重合し、天然ゴムを超える耐久性を持つポリイソプレンゴム(IR)」も開発してきた。

ただこれまで反応の触媒として用いられた触媒では分子構造が天然ゴムと異なるという欠点があった。というのはIRには「シス」、「トランス」、「ビニル」と言う3つの分子構造が含まれており、この内ゴムの性能を左右する要素として大きいのはシス構造の比率だ。

天然ゴムではほぼ100%がシス構造となっているがこれまでのIRでは94から98%強までしか比率を高められず天然ゴムに比べ耐久性が劣っていた。

そこでブリジストンは今回新たに触媒の構造を変えた「ガドリニウム触媒」を開発しシス比率を最大99.9%まで高めることが出来るようになった。またタイヤに用いた時の低燃費性に係わる分子の長さのばらつきを小さくすることにも成功し、天然ゴムを超える耐久性と低燃費性を確保出来たという。

残る課題はコストで、現時点では天然ゴムは供給に不安はなく、価格も安いので、IRの量産化技術を編み出し、コストを下げる必要がある。

 

 

 

 

マグネシウム電池はリチウムイオン電池の後継になるか

現在再充電で繰り返し使える2次電池は各種あるが、現在最も普及しているのがリチウムイオン電池であり、今後もまだまだ主役として市場の拡大は続くと見られている。

しかしリチウムやコバルトの希少資源(レアメタル)を多用するので原材料の安定的な確保や使用後のリサイクルに課題がある。

リチウム電池の次の候補の一つに、資源が豊富なマグネシウムを利用するマグネシウム電池が考えられているが、電力密度が低いことや反応で電極表面に絶縁物が生じる等技術課題があった。

東工大の矢部教授らは、薄膜状のマグネシウム電極を使うことでこれらの課題の克服に目途をつけ、ベンチャー企業を興し、マグネシウム電極を薄膜にすることで、電池の小型化、持続時間の増大、電池の大容量化にも道をつけた。

非常用電源としては既に企業と組み2014年、少容量タイプが発売されている。
また長期間劣化しにくいことや取扱性の良さなどから防災用に期待されている。(水と塩で発電するLEDランタン

2次電池としてはホンダや埼玉県が実用化の目途を付けたとされ関連銘柄の株価も一次急騰した。
しかし技術の詳細が明らかにされていない。

リチウムイオン電池並の性能や価格を実現するにはまだ年月が掛かりそうで、これからも当分はリチウムイオン電池の拡大が続きそうだ。

通常のガソリン自動車用バッテリー鉛電池が普通だが軽量化の為、リチウムイオン電池が一部採用され始めてはいる。しかし安定性、取扱性、値段の安さ等でまだすぐには取って代わられるものではなさそうだ。

従って、リチウムイオン電池の性能を大幅に上回る2次電池が期待されており、
当面その最も近い物が硫黄電池のようだが、しかし当面の本命はやはりマグネシウム二次電池かと思わせられる。

産総研から2016年3月に発表された資料(ロードマップ)は、ビジュアル化を徹底させたプレゼン資料で、マグネシウム電池の開発状況がよく分かる。(内容は難しいが)
ポストリチウム二次電池の開発~マグネシウム二次電池の創製に向けて~)

 

最後のページ(22ページ)にも注目。
一見元素周期表みたい、いや全然違う。
よく見ると元素記号だけで作った英文メッセージだ。
ユーモアもあり、字(アルファベット)余りも無い。
良く考えられた(組み合わせた)ものと感心した。
Motivation Research Synthesis.I am Lunatic.
(Thank you for your) Cooperation.
かな?

 

 

 

 

次世代航空機エンジンに日本の新素材

ボーイングの次世代大型ジェット機には初めてエンジンに日本の新素材が使われる予定だ。

航空機の燃費をよくするために各種の軽量化が図られている。

これまで最大の軽量化は胴体や翼の部分を従来のアルミ合金から炭素繊維に切り替えることで行われてきた。その炭素繊維の供給会社は主に東レだった。

炭素繊維(PAN系)の生産は日本企業3社(東レ、三菱ケミカル(合併前は三菱レイヨン)、東邦テナックス)で世界のほぼ6割から5割を占めている。(昔は7割以上だったが次第に減減少している)

今後も燃費向上のため機体全体への炭素繊維の使用は増えて行くものと見られている。

しかしながら更に燃費を良くするために現在注目されているのがエンジンだ。

米国ジェネラル・エレクトリック(GE)は次期大型機(777X)のジェットエンジンのタービンブレード等を従来のニッケル合金から新素材の炭化ケイ素(SiÇ)繊維素材に切り替える。

この繊維はCMCと呼ばれるセラミックスとの複合材に加工されたうえでエンジン部品に形成される。

この炭化ケイ素(SiC)繊維はニッケル合金に比べ重さが3分の1、耐熱温度が摂氏1800~2000度あるため、現在行っているエンジンの冷却をする必要がなくなりエンジン重量の軽減と高温燃焼による推力が向上し燃費が改善する。

炭化ケイ素(SiC)繊維を生産出来るのは現在世界で2社しか無い。

それが宇部興産日本カーボンで、両社が素材をGEに供給しGEが複合材に加工する。

宇部興産は25年までに宇部工場内に工場を新設し年間200トン体制を目指す。

GEも19年に米国内で100トン以上の能力の工場を立ち上げ日本カーボンと共同で増産する予定だ。

ボーイングの次期大型機777Xの後部胴体、中央翼、中部と前部胴体の製造は

夫々三菱重工、富士重工、川崎重工が東レから炭素繊維の供給を受け、製造する。(更に後方の飛行制御装置はナブテスコ)

米国は勿論世界で生産される航空機への日本企業の役割はこれからますます大きくなりそうだ。

 

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竹で新素材

新素材セルロースナノファイバー(CNF)は植物中の繊維(セルロース)をナノレベルにほぐして作る。これまでは製紙会社が得意の木材パルプを原料にしていた。

しかし日本には竹という植物もたくさんあり、特に最近放置竹林による被害が深刻化しており、対策に悩む自治体が新たな活用方として期待を集めている。

竹から作るCNFは他の樹木から作るCNFと比べてプラスチックなどの樹脂との馴染み易い。

中越パルプ工業は竹からCNFを作る技術を九大と確立した。今年6月から鹿児島県で商業生産を始める。木材パルプと合わせ年間100トンの予定。

鹿児島県は竹林面積が日本で一番。林野庁によると全国の竹林面積は16万1千ヘクタールで81年より約12%増加しているそうだ。

放置竹林の被害は京都で杉やヒノキが枯れる被害が、香川では台風時に土砂災害が起きている。

竹はこれまでは竹炭や紙、道路の舗装材などに加工されてはいるが需要は減っている。

同社は今春以降宮城県石巻市で年間500トン以上のCNFを生産出来るよう規模を拡大する予定だ。

最大の課題は1kg数千円とされるコストだ。原料となるパルプは1kg50円程度だが繊維をほぐす加工に手間がかかるためだ。

これまでに木材パルプからのCNFを使った商品としては、かすれにくく乾きやすいボールペン(三菱鉛筆)、消臭効果を高めた大人用おむつ(肌に触れない部分にCNFシート使用)(日本製紙)などがある。

更に最新技術製品への応用としては、透明ナノペーパーとして薄い太陽電池などへの応用開発がなされている。

 

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地球温暖化対策に期待される人工光合成

昨年(16年)11月地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」が発効した。

温暖化の代表的な原因とされる二酸化炭素だが、これを有効活用しながら減らす技術として注目されているのが植物の光合成を模倣してエネルギーや物質を生み出す「人工光合成」だ。

 

人工光合成は

①太陽光を使うこと②水を原料にすること③光エネルギーを化学エネルギーに変えて炭水化物のみならず水素やアンモニアなど生成するという3要素を同時に備えることが条件とされている。

 

現在世界中で研究開発がなされており、日本でも幾つかのグループで開発が進められている。

その代表的なものをご紹介。

1.NEDO(産業技術総合開発聞機構)が開発を委託する「人工合成化学プロセス技術研究組合」

・光触媒と太陽光で水を分解し水素と酸素を発生させ、この水素と炭酸ガスを原料にしてプラスチックや各種プラスチックの原料となるオレフィンを合成する。

この光触媒の原点は1972年に「ホンダ・フジシマ効果」として発表されたもので、二酸化チタンに紫外線が当たると水が酸素と水素に分解された現象。

その後、2000年代に入り可視光吸収型光触媒が発見され、多くの研究開発が進むようになった。

昨年時点でのエネルギー効率は3%に達した。因みに植物の光合成の効率は1%。

2.豊田中央研究所

・半導体を使った人工光合成。半導体基板の片面に貴金属のイリジウムを使った触媒を、他方も片面にルテニウムの触媒を貼り付けた素子を使用。

これを水に入れて炭酸ガスを吹き込みながら太陽光を当てると高効率で化学原料のギ酸(HCOOH)が出来る。

エネルギー変換効率は11年の1.04%から15年には4.6%まで高まった。

・半導体を使う方法はパナソニックや東芝も人工合成の開発に取り組んでいる。

3.大阪市立大学・マツダ

・酢酸に酵素を加え太陽光を当てるとエタノールが生成する人工光合成に成功。

エタノールは燃焼時炭酸ガスの発生の少ない燃料となる。

変換効率は0.1%とまだ低く、エタノールの分離の課題もある。

 

パリ協定は気温上昇を産業革命前から2度未満に抑えるという方針を掲げ各国に大幅な排出削減を求めている。

日本政府も昨年4月には二酸化炭素の抜本的な削減に向けた「エネルギー・環境イノベーション戦略」でこの人工光合成を有望な対策技術に位置付けた。

 

<付記>

 

 

参考サイト

 

 

 

 

 

常温核融合は本物か?

太陽の中で起こっている核融合反応を地上で再現できれば人類は永久にエネルギーに困らない。しかしこのためには一億度以上のプラズマ状態の反応の場が必要とされフランスや日本などはITER(国際熱核融合実験炉)の建設をフランスで進めている。

一方常温で核融合を起こそうという研究も進められている。これは1989年に米ユタ大学で二人の研究者がその兆候を見つけて発表したものだが、各国での追試が結局再現出来ず中止された。しかし一部の研究者たちが研究を続け徐々にこの現象の再現性が高まってきた。2010年頃から米国やイタリア、イスラエルなどにエネルギー利用を目的としたベンチャーが生まれている。

常温核融合を目指して日本でも研究は続けられ、現在では日本は凝縮系核反応、米国では低エネルギー核反応と呼ばれている。

この反応は常温から数百度で元素が融合し、各種が変換する。この反応の応用には発生した熱をエネルギー源にする方向と核変換によって放射性元素の無害化や希少金属の生成を目指す方向がある。

日本での取り組みは東北大の岩村教授グループと神戸大の荒田名誉教授グループが夫々ベンチャー企業など共同で実験を進めている。

89年のユタ大学での実験はパラジウムの電極を重水素の溶液中で電解するものだったが、現在はいずれのグループもパラジウムを主体とした金属に重水素ガスを圧入する方式で、熱の発生と、ヘリウムの生成の再現性が高まっている。

一方依然としてこの凝縮系核反応を偽物とみる研究者がいる。それは核融合を引き起こす為の陽子(+)間に働く反発力(クーロン斥力)を低温度状態でいかに乗り越えているのか、粒子や放射線を出さない核反応が可能なのかという疑問に応えられる理論構築が出来ていないからだ。

この疑問に対しては、金属内では電子や陽子が密集しており、ここに高圧の重水素が接触して浸透し、複数の元素が同時に反応することにより何らかの原理によりクーロン斥力が軽減され反応が進むのではと推定されている。

 

 

宇宙エレベーターへの第一歩スタート

現在人間が宇宙に行くにはロケットに乗って行くしかないが、膨大なエネルギーが必要で、且つ多大なコストが掛かる。この問題を解消し、多くの人が宇宙に簡単に行ける様にしようというのが「宇宙エレベーター」である。

宇宙エレベーターの構想自体は1960年に出されているがその後はあまり進展しなかった。しかし1991年日本人が発見した新素材カーボンナノチューブ(CNF)が宇宙エレベーターに必要な超高性能ケーブルを実現出来る可能性が出、急速に検討が進み始めた。

大手ゼネコン大林組は大学などと共同研究をすすめており2050年の完成を目指している。

その基礎実験がいよいよ来年早々にも日本で始まる。

その準備段階として、今月9日に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた日本の無人補給船「こうのとり」6号機に今回の実験用の超小型衛星が積まれており、13日国際宇宙ステーション(ISS)に到着した。

超小型衛星は静岡大山極芳樹教授らのグループが作製。宇宙でのケーブルの挙動や摩擦など、基礎データを取得する。

衛星の大きさは10cmの箱形を2基合体させた形で片方に0.4mmの釣り糸を巻いたリールが入っている。ISSから放出した後、宇宙空間で二つに分離し糸を最大100m伸ばすのが今回の実験の主な目的。先ずは小さな実験からのスタートだ。

最終的な宇宙ケーブルの実現に向けての課題は、超高性能(軽く高強度)なケーブル素材の開発や宇宙で数万キロメートルに及ぶケーブルを地球から真っ直ぐに伸ばす技術の開発である。

今後の進展を注目して行きたい。

 

 

動き始めたCNF製車体研究

炭素繊維の次の新素材としてセルロースナノファイバー(CNF)の研究が盛んになってきた。CNFは鋼鉄の5分の1の重さで5倍の強度を持つため、強度が必要で重量を減らしたい自動車用途が本命と見られている。

この度京都大学とデンソー、環境省らはCNFを使い自動車の重量を1割軽くする研究を始めた。燃費が改善し走行時の二酸化炭素発生量を減らす。自動車の重量を1割軽くすると燃費が5%向上し、車1台が10万キロ走る時の二酸化炭素排出量を約0.5トン削減出来るそうだ。

環境省は17年度からの3年間で総額120億円規模を支援し、家電や住宅、産業機械にも用途を広げる方針。

共同研究には京大を中心に約20近くの企業や大学が加わる予定。その分担項目はパルプを薬品で効率よくほぐす量産技術を開発するグループ、空調やドアの部品などをシアsクスルクループ、試作車を作るグループに別れる。

実用化の最大の課題は一般の車体に使う鋼材に比べて高い価格の引き下げだ。

政府は地球温暖化対策を目指す「パリ協定」を受け、30年に温暖化ガスの排出を13年比で26%削減する目標を掲げる。削減の為の革新的技術は100件ほど考えられているがCNFは大いに期待されている。

なおCNFの液体としての利用・製品応用については、過去の記事で記述しているのでご参照願いたい。

また今後共CNFを始めとした新素材については新しい情報が入り次第記事を書く予定。乞うご期待。

 

 

水を使わず古紙再生

紙の原料はパルプで日本は大部分を輸入に頼っている。

一度使用された紙は回収されて再生されてまた紙に生まれ変わる。

再生工程では古紙を解きほぐしたり、再生させるためには大量の水を使うというのが普通のやり方だった。

しかしセイコーエプソンは、オフィスで使った用紙等からいろいろな用途の紙を作る装置を開発した。その最大の特徴はなんと水を使わないのだ。

開発した装置では、溶解ではなく機械的な衝撃によって古紙を綿状の紙繊維に戻し印字を消す。

紙繊維を結合する際も粉体の結合素材を使う。

再生して作る紙は密度や厚みを制御でき、用途にあわせて色や難燃性を付与出来るそうだ。

コスト的にまだ新しい紙に及ばないが、顧客情報などの気密性の高い文書などの処理に使われていくと思われる。

しかしなんと言ってもオフィス内に設置した装置で処理が出来るということだ。

現在1分間に十数枚の再生が可能という。

セイコーエプソンは開発した装置を年内に「ペーパーラボ」のブランドで商品化する予定。