新しい冷却方式である磁気冷却についての新聞記事(日経 2016年8月25日)を紹介します。
現在の冷蔵庫などで使われているヒートポンプ(HP)は
コンプレッサー(圧縮機)を使い配管に閉じ込め冷媒ガスを循環させて周囲と熱を受け渡しする方式。
冷媒ガスを膨張させ液体から気体へ変える時に気化熱を奪い周囲を冷やし
逆に冷媒を圧縮して気体化から液体に戻す時には外部に凝縮熱を出す仕組みだ。
この方式のデメリットはコンプレッサーの騒音や振動が発生することや、地球温暖化のガスを使っていることだ。
これに対し、磁気ヒートポンプは
圧縮機も冷媒も使わず、モーターで永久磁石を回転させ、周りに配置した磁性体に磁気を加えたり消したりして発熱と吸熱を繰り返す。
この原理は、
「磁気熱量効果」と呼ばれる現象で、磁気が生じる源となる「スピン」と言う電子の性質に由来している。
電子のスピンがバラバラの状態から一定の向きに揃う時に発熱し、
スピンの向きがそろっている状態からバラバラに戻るとき吸熱する。
スピンの向きがバラバラの状態は揃った状態よりエネルギーが低いので、
その差を熱エネルギーとして出し(発熱)入れ(吸熱)している。
この吸熱、発熱を引き起こすため、中央に回る永久磁石と周囲に0.6ミリの細かい磁性体の粒を周りに詰めたパイプ(温水用と冷水用)を配置した構造の装置となっている。
磁性体には、この高い性質を持つレアアースのガドリニウム(Gd)が使われているが、近年は安価な鉄やマンガンをベースとした合金での開発も進んでいる。
現在製品化されいるのは、白物家電で世界首位の中国ハイアールがドイツの化学会社や米国の航空宇宙関連会社と共同で2015年に施策したワインクーラーがある。
ワインは振動に弱いので磁気HPが適している。また従来より35%効率がいいそうだ。
日本では空調設備最大手のサンデンホールディングスが東工大とまた自動車部品大手のデンソーが研究を行っている。
現在の冷却方式で使用している冷媒ガスは低温下では液体から気体に戻しにくいが、磁気HPならこうした効率は悪くならない。
将来の有望な製品化品目としては、業務用冷凍機や電気自動車(EV)用のエアコンがある。
エンジンがないEVは冬場の暖房用の熱源がないため電気で暖房用の熱を作ると走行距離に大きく響く。そこでこの磁石で熱を発生させるヒートポンプが期待されている。
参考情報を入れ替えました。(’23.2.26)
上記記事を書いた時点で参照していたサイトが見れなくなっているがわかりましたので、代りに最近のサイト、資料等を以下補足添付しますのでご参考ください。
1.NIMS(動画)
2. 産総研(動画)
3. TDK
4.東芝
5.NIMS,JIST論文