今年2017年は植物由来の新素材セルロースナノファイバー(CNF)が本格的に実用化に入る年と言われている。
これまでも当ブログでポスト炭素繊維と言われているCNFに関する記事(最後に記載)を書いてきたが、CNFは炭素繊維と違い原料が植物なので環境負荷が低く資源的な問題もない。CNFに取り組んでいる会社は製紙会社以外にもあるが、その状況について概略を紹介する。
<製紙会社>
1.日本製紙
石巻工場で国内最大のプラント(年産500トン)を生産する体制を整えた。
年内には静岡県で樹脂の強化剤、島根県でも食品・化粧品の添加剤として生産を始めた。
2.中越パルプ工業
鹿児島県川内工場で100トンプラントを立ち上げる。
4月に丸紅と用途開発と販売で提携した。
3.王子ホールディングス
透明度の高いシートを作り、立体的に整形する技術を開発。
ガラスや樹脂等の既存の素材の代替需要を狙い、医療用途の開発を進めている。
4.大王製紙
従来設備で製造するCNFは通常水を含んだゲル状のため、石油由来の樹脂とは混ざりにくかったため、今年中に粉末にする設備を愛媛県の三島工場に導入する。
年100トンの生産能力の内数十トンの粉末化に対応可能。
大王製紙は主に産業用途での実用化に主眼を置く。パルプ繊維とCNFと混ぜ合わせたシート素材で自動車部品や建材用を狙う。
20年には三島工場で大規模な量産プラントを新設する計画。
5.北越紀州製紙
特殊な薬品でスポンジ状にしたCNF発泡体を開発。断熱材の開発
6.特殊東海製紙
リチウムイオン電池のセパレーターで実用化を狙う。
7.天間特殊製紙
家具等の表面に使う「化粧板原紙」や金属に傷が付くのを防ぐ保護紙を製造している。 紙力増強剤としてCNFを数%配合することにより紙の表面強度を20%程高く出来るガ同じ強度なら薄くでき製造コストを下げることに繋がる。
<化学メーカー>
1.第一工業製薬
化学処理で作るCNFの実証プラントを新潟県に持つ。
15年CNFをインクの増粘剤に使ったボールペンを三菱鉛筆と実用化した。
2.旭化成
CNFを使った不織布製品の研究を進めている。不織布はそのまま使用したり、樹脂を含浸させて強化樹脂とする。原料はパルプの他同社製品ベンベルグ原料である綿花由来の再生セルロース繊維もある。
3.三菱ケミカル
京都大と不織布製品の共同研究を進めている。この程両者が持つCNF関連の特許を外部へライセンス販売を始めた。
最大の課題はコストだ。現在1kg当たり数千円から1万円する製造コストを下げないとポスト炭素繊維としての普及はおぼつかない。
今後は製造技術開発と用途を増やして量産効果によるコスト低減を測る必要がある。
経産省は30年までに1kg当たり500円程度への削減を目指す。
(上記記事は日経産業新聞他を参照した)
世界の森林国はこぞってCNFを研究しており、国内及び外国の研究の進展、新用途開発、量産、低コスト化等に着目して行きたい。
<これまでのCNF関連ブログ>
・植物が原料の新素材セルロースナノファイバー(CNF)
・竹で新素材
日本製紙 石巻工場のCNFプラントが日産500トンとなっていますが、年間生産量の誤りではないでしょうか?
ご指摘ありがとうございます。年です。